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ネクスト・ステージ~チートなニートが迷宮探索。スキル【ドロップ★5】は、武器防具が装備不可!?  作者: 武蔵野純平
第三章 嵐の冒険者

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第32話 鉱山ダンジョンの五階層

 今日は土曜日だが、俺たちは鉱山ダンジョンに入場した。

 俺たちのパーティーは、土日祝日は休みにしている。


 だが、ダンジョン省からの要請で、俺たちはお休みしていたのだ。

 そこで、本来は休みの土曜日だが、一稼ぎすることになった。


 俺と沢本さんは、鉱山ダンジョン五階層を歩きながら言葉を交す。


「さてと! 冒険者稼業を再開だな!」


「これまで、ずっと休みだったからね……。勘が鈍ってないと良いけど……」


「まあ、優里亜と一緒にいられたから、良かったけどな」


「そうだね! 優里亜ちゃんは、嬉しそうにしていたね!」


 お休み中の沢本さんは、娘の優里亜ちゃんとあちこちお出かけして、家族サービスに精を出していた。

 普段は保育園に預けているので、沢本さんとしても娘さんと一緒にいられるのが嬉しかったらしい。


「でも、良いのかな? カケルのおばあちゃんに、優里亜の面倒をみてもらっても?」


「大丈夫だよ。ばあちゃんも、楽しそうだったから」


 今日は保育園が休園しているので、優里亜ちゃんの子守を祖母が買って出てくれた。

 おかげで俺たちは鉱山ダンジョンを探索できている。


 祖母は優里亜ちゃんとも仲が良いので大丈夫だと思うが、沢本さんは気にしている。


「後で、ばあちゃんに和菓子でも買ってあげなよ。最中が好きだよ」


「そうだな! 大通りに和菓子のお店があったから、ダンジョン探索が終ったら行ってくる!」


 俺たちの探索は、五階層で中断していた。

 俺たちが休んでいる間に、他の冒険者パーティーが五階層を探索していたので、冒険者専用アプリには五階層の地図が入っている。


 T字路の分岐点が見えた。

 俺は進む方向を指示する。


「えーと、最初の分岐を左だね」


「了解!」


 鉱山ダンジョンの坑道を進む。

 足が軽い。

 休養十分なことに加えて、トレーニングの効果も出ているのだろう。


 俺はお休み期間をトレーニングに費やし、基礎体力を向上させた。

 当然ながら『御手洗さんと二人で、みっちりと』だ!


 どんなトレーニングかというと、走ったり、筋トレをしたり、柔軟体操をしたり、開脚したり、開脚したりだ。


 股関節の柔軟性は、あらゆる運動のパフォーマンスに直結するから、開脚は超重要だぞ!

 ああ、汗を流している女性って素敵だね!


「お休みが長かったですよね」


 素敵な開脚を披露してくれた御手洗さんが、ちょっと愚痴る。

 ダンジョン省からの要請は、『外国の冒険者パーティーがいなくなるまで、探索は待って欲しい』だった。

 俺のスキル【ドロップ★5】を、外国に知られたくないからだ。


 俺はダンジョン省の片山さんから事情を聞いたので納得しているが、俺のスキルを知らない沢本さんや御手洗さんは、今ひとつスッキリしない思いだろう。


 ダンジョン省は彼女たちに、『鉱山ダンジョンが混み合っているので、まだ入っていない冒険者を優先させて欲しい』と無理矢理こじつけた理由を説明したからだ。


 一応、お休みの間は、ダンジョン省から日当が出た。

 御手洗さんのレンタル装備品代もダンジョン省が支払っていた。


 俺などニート生活をしていたから、『働かないでお金もらえてサイコー!』なんてお気楽に考えていたが、ちゃんとした会社でちゃんとした仕事をしていた御手洗さんとしては落ち着かなかったそうだ。


 ああ、真面目な女性って素敵だね!


「土曜日のダンジョンは、空いていますね」


「そうだね! 今日は沢山狩ろう!」


 鉱山ダンジョンは、人気のダンジョンになっている。

 稼ぎが良いので、レベルをある程度上げた中堅から上位ランカーに人気だ。


 経験値が少ないことから、初心者冒険者には敬遠されているが、上位ランカーがガンガン稼ぐので、ダンジョンオーナーの取り分もガンガン入っている。

 既に三桁万円を突破しているのだ。

 祖母が銀行に振り込まれる額を知ったら腰を抜かすだろう。


 だが、人気の鉱山ダンジョンでも、土日休みにする冒険者パーティーが多いので、今日の鉱山ダンジョン五階層は他の冒険者パーティーが見当たらない。


 競合する冒険者パーティーがいなければ、魔物の取り合いが発生しないので、稼ぎに期待が持てる。


「いた!」


「あいよ!」


 前方にスコップやツルハシを持ったコボルド五匹の集団が見えた。

 俺は沢本さんに声を掛けると同時に走り出す。

 沢本さんも走るが、俺の方がわずかに先行している。


 俺はそのままの勢いで、壁を走り、天井を走り抜ける。

 右手に握るナイフ★4『縦横無尽』の特効だ。


 俺は一匹のコボルドに狙いを定めた。


「シッ!」


 コボルドとすれ違いざまに、ナイフ★4『縦横無尽』を振るう。

 俺が振るったナイフ★4『縦横無尽』は、コボルドの首を深く切りつけた。


 クリティカルが決まった!

 コボルドは瞬時に光の粒子となって消えた。


 まず、一匹。

 五階層は、コボルド五匹が集団で出現するので、討伐するスピードが重要だ。

 もたもたして長期戦になれば、体力を消耗し、数の少ない俺たちのパーティーは不利になる。


(次!)


 俺は天井から左の壁を走り地面に降りた。

 二匹のコボルドが振り向き、俺のいた天井を見る。

 だが、コボルドが見ている天井に、俺はもういない。


 俺は振り向くと同時に地面を蹴り、体ごと一匹のコボルドに突っ込む。

 右手のナイフ★4『縦横無尽』は、しっかりと順手で握られている。

 上を見ているコボルドは絶好のカモだ。


 ツルハシ持ちのコボルドの腹にナイフ★4『縦横無尽』が、深々と突き刺さった。


「グッ……!」


 ツルハシ持ちのコボルドが痙攣し、光の粒子になって消えた。

 スコップ持ちのコボルドが、振り上げたスコップを俺の頭めがけて振り降ろしてくる。

 俺は滑るような足さばきでステップバックし、スコップをかわす。


 反対側では沢本さんが、一匹のコボルドを仕留め、もう一匹のコボルドを御手洗さんがさばいているのが見えた。


 御手洗さんは、右手に扇子、左手に木製のラウンドシールド★1を持ち、見とれるほどの美しさで、まるで日舞を舞っているようだ。


 コボルドが振り回すスコップを御手洗さんがいなしていると、手の空いた沢本さんが横からコボルドに突きを入れた。

 コボルドが光の粒子になって消える。


 残りは、一匹!


 俺はナイフ★4縦横無尽を、逆手に持ち替えた。


「ガウッ!」


 スコップ持ちのコボルドが、スコップを振り降ろす。

 俺はスコップの軌道を読み、逆手に持ったナイフでスコップを受け流した。

 コボルドの体勢が崩れ前のめりになる。


(隙あり!)


 逆手に持ったナイフを、コボルドの喉に突き入れると、クリティカルが発生し、コボルドは光の粒子になって消えた。


 コボルドの集団は全滅した。


「よしっ!」


 休み明けにしては、良い動きだった。


 だが、まだだ。

 ナイフ★4『縦横無尽』の特効を生かし切れていない。

 もっと立体機動的な動きをイメージしているのだが、俺の動きは立体機動まで達していない。


「ダンジョン金貨五枚は、美味しいな!」


 沢本さんが、ドロップ品のダンジョン金貨を拾い上げた。

 五階層も小金貨がドロップする。

 出現する魔物の数が多いので、ドロップ品も多い。

 俺のスキル【ドロップ★5】が、イイ仕事をしている。


「休んでいた分を取り返しましょう!」


 御手洗さんも燃えているな!

 目が¥マークになっている。


「よーし! 今日は夕方まで、ガッツリ稼ごう!」


「「おーう!」」



 *



『H市鉱山ダンジョン退場 17時05分』


 俺たちは地上に戻ってきた。

 ゲートにスマートフォンをかざすと、冒険者専用アプリが退場時間を記録してくれる。


「今日はかなり稼いだな!」


「ああ、早速ドロップ品を売りに――」


「キャア!」


 俺、沢本さん、御手洗さんの足が止まった。

 祖母の家は一階の窓ガラスが割れていて、通りにはパトカーが何台も止まっていた。


「これは……!?」


 俺はサッと血の気が引くのを感じた。

 一体何があったんだ!?

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