それも仕事。プロの流儀 ネタ
「自分を憐れむ男なんざいらねぇ」
「お前馬鹿か?あぁそうか。俺の予想以上に馬鹿だったんだな」
「お前の命に価値なんざねぇんだよ。死ぬのをこわがってる男が、切った張ったなんてできるわけねぇだろう?自分のタマぐらい駒のひとつにしてみろや」
「てめえの命で欲しいものくらい手に入れてみろ」
「それではじめて、お前の価値があるんじゃねぇか」
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「じゃああんたが自分でやればいいじゃん」
すねたように突き出した唇からこぼれたその言葉に、男は盛大なため息でこたえた。
「お前、ほんとうに馬鹿なんだな」
「な」
「お前にその能力がないと判断するのと、俺がそれをできるかできないか、するかしねぇかは別の問題だろう?」
「あぁ、わかんない様だから説明してやろう。いまの政治家……いや、ほとんどは政治屋だな。そいつらの中に、統治能力を含む『リーダーの資質』があるやつなんざいない。
もしくは持っていたかもしれないが、とうの昔に腐ってる。この島国では『求められていない』からな。そしてもちろん、いまのお前も持ってない」
「なぁ?月給130万近く払って、ボーナスも2000万近くやって。それ以外にも『文書費』だの『モチ代』だのわけわかんねぇ名目で小遣いやって。『質を保持するため』だの『裕福でない人でもなれるようにするため』なんてお題目唱えて、年間もろもろ合わせて衆院なら一人頭約4200万払って雇ってるくせになぁ?一回600億近くかけて選出する『自分たちの代表』様に、ほとんどの人間は興味なんざないわけだ」
「ただ、『選挙で選ばれたんだから』『当然』『できるだろう』『やるだろう』と思い込んじまってる。この30年ほどな。もっと前からかもな。江戸時代とか?」
「だからやれ『不祥事』だの『失言』だのが出れば、わぁわぁギャーギャー騒ぎ立てる。鬼の首とったみてぇに、『政治家としての資質』だの『任命責任』だの追及するわけだ。そいつを最初に選んだ、もしくは選ぶことすらしなかったのは、自分たちだってのによ」
「とまぁ、そんな我らが麗しき国、有権者の半分が選挙権をどぶに捨ててる国でそれでも椅子取りゲームに勝とうと思ったら。それを持っているように見せかける必要はあるし、できる」
「そしてそれを演出すんのが、俺の仕事なんだよ。わかったか、馬鹿ボウズ」
***
選挙仕掛け人のおじさまと、政治屋一家の3代目のおぼっちゃんが主人公で。
「普通の国」にしようと、ある日政府が18歳を「大人」とし、選挙権は16歳からとします。
ただしいつものごとく思いつきにしか見えない法案だったため、それにともなう法改正が追い付かず、自分の食いぶちを稼ぐことなく、税金を納めるという義務をはたすことなく、選挙権という権利だけもつ「大人」が大量派生することになります。
権利だけ与えられ、「さぁ自由にしていいよ」。
手放しでそう言われた彼ら「大人」。
有権者が一気に多くなったと喜ぶ選挙屋さん。
被選挙権の下限年齢も引き下げられ、受け狙いで立候補する若者、人気票を集められ、とりあえず頭数をふやそうと画策する政党領袖…………。
まぁそんなひとたちがうろうろします。
そんな物語を寝かしておいて幾星霜。成人18歳は、実現してしまいました。