煙突と姫君
放課後の煙突掃除が、私の日課だ。
聳え立つ煙突を磨き、煤を掻き出して綺麗にする。
彼は満足し、わずかな金と白い煤を寄越す。ひどく苦い。
その後ようやく、彼は暖炉を掃除してくれる。
廃教室を汚した私の灰を、拭くのは結局、私だけれど。
煙突掃除をスマホで調べたことがある。
狭い煙突に入る為、クライミングボーイと呼ばれる子供たちが使われた。
彼らの大半は孤児で、裸で煙突に入ることもあった。
煙突から出られなくなる者、窒息や失明、焼死する者までいた。
生き延びた者も煤疣と呼ばれる癌で、多くが命を落とした。
なるほど、なるほど。
では、生き残った一握りの子供はどうなったのだろう?
煙突掃除以外の仕事を、私は知らない。
卒業式の後。
私は宮殿のような建物に運ばれ、王族のような寝床で貪られ、小さな指輪を差し出された。
「俺は生徒に手を出す屑教師だが、一線は越えなかったつもりだ。
おまえの卒業を待っていた。結婚しよう」
王子様のような綺麗事を言う──。そう思った。
とまれ、私は失業せずに済んだ。
次の仕事は、灰かぶり姫だ。