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君のオレンジなんか救けなきゃ良かった  作者: 綾沢 深乃
「第5章 未練作りの一環として」

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30/55

「第5章 未練作りの一環として」(5-1)

(5-1)


 あの後、より作戦を詰める為の土曜日を用意した。電話では通話料に限界があるので、直にグリーンドアで会って行う事にした。一応、出掛けた事にもなる。


「……何だかグリーンドアを便利に使い過ぎてる気がする」と開始早々、彩乃から言われたが、ココ以上の場所がないのでしょうがないと返しておいた。


 レポート用紙に必要な物を列挙してから具体的な作戦内容を書いていく。途中、コーヒーのお代わりを持ってきた香夏子に「何の勉強?」と言われたが、答えなかった。(彩乃は普通に答えようとしたが、慌てて静止した)


 本当に午前中から夜までずっとグリーンドアにいた。散歩と称して店の前にある広場を歩いた以外は、お店から出ていない。昼食も夕食もグリーンドアで済ませた。調べ物用に彩乃が持ってきたノートパソコンも途中から香夏子に頼んでコンセントを使わせてもらった。


 居心地は本当に良く、時間が経過するにつれてアイデアがどんどん出てくる。出たアイデアから過激なものを排除していき、整えて流れを決めていく。


 ようやく作戦が形になった頃には夕食を食べ終えて、更に食後のアイスクリームも食べ終えていた。


「出来たぁ。あー、疲れた」


「本当に」


 お互いにソファに背中を預けて両手を上げる。今日一日で全てを完成させる必要はないのかも知れないかと話し合い中、澄人は思ったが、彩乃に頭を動かし続けた。そのおかげで現在、オーバーヒート気味だ。


 アイスを注文して本当に良かったと心から思う。


 澄人は何度も書き直して汚くなったメモを元にボールペンで清書したルーズリーフを手に取る。色々な案は出たけど、現状ではこれが一番整っている。今後、多少の補足は出てくるかも知れないが、本筋は変える必要はない。

彼がそう考えていると彩乃は「よしっ」と言って体を起こした。


「明日は空いてる? 早速、必要な物を買いに行かない?」


「え?」


 今までも未練作りは絶対に土曜日に行っていた。そこに特別な理由があった訳ではないが、習慣から外れる事に何の抵抗がない彩乃に澄人は驚く。彼女は彼がすぐに同意すると思っていたようで、予想外の反応に戸惑った顔を見せた。


「あっ……。もしかして、予定とかあった?」


「いや、予定はないけど驚ちゃって」


「驚く? 何で?」


「だって日曜日も会うって今までした事なかったから」


 澄人の言葉を聞いて、彩乃が「ああ」と理解して声を漏らす。


「まあ、ね。普段なら今週はココまでって感じなんだけど、何ていうか、ついね。ごめん、嫌だったら来週にしよう?」


「大丈夫。別に嫌な訳じゃないから」


 そう、嫌な訳ではない。ただほんの少し、本当に少しだけ恐怖があった。その事は彩乃には告げず逃げるように冷たいアイスを舌の上に乗せた。


 翌日、日曜日。


 澄人と彩乃は作戦に必要な物を調達する為、東急ハンズを訪れた。


 ボストンバックにおもちゃの偽札。昨日まで机上の話だったのが、具体的な品物を買う事によって現実味を増していく。それが自然と二人を高揚させていった。


 長い買い物を終えて二人は、東急ハンズの紙袋を持って外に出る。季節は冬なのに昨日より寒さを感じない。これはきっと気のせいだ。澄人は自分にそう言い聞かせる。隣で彩乃が首を傾げた。


「今日ってあまり寒くないよね?」


「そうかな?」


 その理由を知っている澄人は返事を濁す。


「うん。寒くない」


「さっきまで暖房が効いたお店にいたからだよ。歩いてたらすぐに体が冷えるって」


 吹く風が頬を冷やすのを想像して澄人は彩乃に説明した。彼女はその説明に納得したようだった。


「じゃあ歩いてたらすぐに寒くなるか」


「そうそう。それで? あと必要な物はバケツとライター?」


「バケツは私が家から持ってくるよ。ライターはどうしよう? コンビニで売ってくれるかな」


「やっぱり昨日話した通り、線香と一緒に買っておこう」


 ライターをそのまま買うと怪しまれるが、目的がハッキリしていれば怪しまれないのではないか。未成年という括りに邪魔されて買えないのではなく、どうすれば買えるかを考えた作戦だった。


 ちなみにどうしても線香を買うお金は無駄になってしまうと説明したところ、彩乃はその程度、全く無駄にならない。ライターが買えるのなら安いものだと快く承諾した。

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