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君のオレンジなんか救けなきゃ良かった  作者: 綾沢 深乃
「第4章 何気なくを人工的にやる人」

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12/55

「第4章 何気なくを人工的にやる人」(1)

(1)


 彩乃との未練作りの日々が始まった。主な流れは、月曜日の夜に澄人から彩乃にメールを送る。送る内容は土曜日に行う未練作りの内容。


 その内容を見て彩乃がやりたいと思えば、採用とだけ返信が来る。当初の説明では澄人が送った内容がつまらなければ不採用と返信が来る予定である。ちなみに今のところ、彩乃が今日まで不採用と返した事は一度もない。


 澄人はインターネットを使って人生でやりたい事リストを検索して多数のブログやサイトを見て、その中から良いのではと思ったものをピックアップして彩乃に提案していく。提案するだけではなく、かなり詳細に記載する。


 楽しい理由、やった方がいい理由、やらないと後悔する理由まで丁寧に書いていく。学校のノートよりも遥かに細かいそれは、携帯電話で書くと書き終えるまで一時間近くを必要としており、終わる頃にはグッタリと疲労が両肩に重くのしかかる。


 そしてベッドに崩れ落ちるようにして眠ろうとした時、携帯電話がメールを受信する。中を開くと彩乃からで、採用。っとだけ書かれている。


 たとえどれだけ眠くて体が思うように動かなくても必ず澄人は携帯電話に手を伸ばしてメールを確認する。


 人工的な白い液晶の明るさに目を細めながら、返信に満足して眠りに落ちるのだ。メールなので澄人がいつ確認しようと彩乃には分からない。だが、こちらのメールが遅くなっていたとしても彼女はその日に返信をくれる。だったらそれを見ない訳にはいかない。


 予算については彩乃に言われた通り、心配をしていない。けれど一応、現実的な予算でプランを立てている。いくら何でも外国に行くような事は出来ない。(本人は余裕で行けると豪語していたが、澄人が止めた)


 返事がその日中に来る事や毎週プランを考える事、そして採用・不採用の緊張感。それらが澄人の毎日に楽しさと張りを与えていた。


 様々な事をした。


 一生の思い出に残るような美しい景色を見に行った。


 何度でも思い出せる美味しいお寿司を食べた。


もうやらなくていいと言えるバンジージャンプをした。


 これ以上はないとハッキリ言えるオーダーメイドの布団セットを揃えた。


 美術館に行って人生観を揺さぶられるような絵画を見た。


 大人を体験したくて、こっそりシングルモルトウイスキーを飲んでみた。


 小さな事から大きな事まで、二人は様々な事を体験して行った。


 そして少しずつ、本当に少しずつだが、彩乃の頭に挟まっているオレンジ色の栞が薄くなっていった。


 オレンジの栞を薄くするなんて伯母は出来ないと言っていたが、現に彩乃の栞は薄くなった。もし彩乃のオレンジの栞を完全に白く出来たら、他の人でも試してみよう。これまで自分が諦めていた選択肢がぼんやりとだが見え始めて、澄人の世界は広がった気がした。


 それ程までに澄人にとって彩乃の未練作りを行う事が有意義だった。


 そして、彩乃の未練作りを初めて二ヶ月が経過しようとしていた。

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