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8話:死闘

生放送当日を迎えた両応援団。果たして結果はいかに…

 ついに本番の朝を迎えた。


 山本はいつものように朝早く起きて、列車に乗る。いつもとは違う朝を迎えたので1人緊張と戦っていた。


 外はあいにくの雨。その為、学校の大きな駐輪場で練習することに。準備をしていると守山たちが順次到着して後輩たちも時間に余裕を持って間に合った。1日のスケジュールを守山が話した。


「今日はまずこの時間は一通り通した後に生放送でする演舞を練習していくのでそのつもりで。みんな良い顔になってきたから大丈夫!張り切って頑張ろう!」


 守山の掛け声と共に練習が始まった。駐輪場は2階建てなので男子もその2階で練習を開始する。


 良い調子だと思って加速しようとしたら思いがけない刺客が現れた。


「朝からうるさいですね!校長から許可を得てるとはいえ、こんなにうるさくされるのであれば今すぐ解散して下さい。近所に住む方々からも苦情を頂いています。テレビのカメラが入るにしても、私の一言で中止できますよ。ここで解散をしてくれたらテレビ取材については許可しますよ」


 とても歳をとった女性職員の名は三浦朋子。高校英語を教えていて、生徒指導の先生でもある。カラオケやゲームセンターにいた生徒をどんな理由であっても関係なく退学に追いやった経歴を持つ。まさに女帝だ。


 そんな三浦の支離滅裂な意見に守山と山本が大抗議した。


「いやちょっと待って下さいよ!それは何が何でもおかしいです。まず、決定権は校長が保持していますしあなたが決めれる立場ではないはずです。そこまで私たちの青春を見るのが嫌なのですか?もうそんな子供みたいなことやめましょう?本当にみっともないです」


「守山の言う通りです。私たちの青春をそこまでして奪うつもりですか?私たちはただ勉強してればそれで良いというロボット兵にしたいのですか?そんなの私たちが許さない!あなたの考えに屈さない!私達はあなたたち相手に全力で抗議して戦います」


 猛抗議していると練習の半分以上が無駄になり、不安が残る最終確認となった。いつものように授業を受けた後、本来なら運動場で撮るはずが雨なので体育館へ移動する。


 男女各自の更衣室でそれぞれの服へと着替えたが、やはり違いは大きく分かれた。男子の特徴は特攻服に足で間違えて踏んだらすぐに解けてしまうようなほど長い鉢巻きをしている。流石に暑かったからか、大山は始まる前から汗だくだ。それに対し、女子は白の着物のようなものに黒袴という神社でよく見るような形のものに髪飾りとして赤リボンを結んでいた。男子は長袖で暑がっているのに女子は半袖と暑さに関しては団員へっちゃらのようだ。準備ができるとテレビ取材班が来るまで待機した。


 両応援団団員はこまめな水分補給をしていると、大きな車が数台入ってきてカメラを持った男の人が数人降りた。その数は別アングル含めて6台と多く、困惑した。そして中継を繋げるためのケーブルやイヤホンの接続確認、そして出演者の声が響くかの確認をした後、生放送の準備が刻々と進められた。


 緊張しすぎているのか山本はずっと胸を押さえていた。彼女自身は、今まで失敗しても次!と切り替えをしてきたが今回の失敗できないという重圧に押し潰されそうになっていた。山本は1人で心の中の自分に声掛けした。


(大丈夫…悔いが残らないように頑張れる…!私なら絶対大丈夫!怖くてもみんながいる!)


 生放送開始まで5分前になると両応援団団長がマイクを持って準備をした。そして、ディレクターの指示によりカウントが始まる。


「中継繋がりまーす。3.2.1…」


 中継がつながり、司会者が話を進めた。


 今回は学校特集で応援団演舞を披露するという回のようだ。司会者が2人の団長に話をした。


「今から演舞を披露していただきますが、自信はありますでしょうか?」


 2人は互いの顔を見て頷いた後、それぞれの団長が自分たちの団員を紹介した。


「はい、大丈夫です。その前に私たち応援団の紹介をさせてください。まずは私たち女子応援団から紹介します。私たち女子応援団は総勢24名と多く、練習は合わせるのに必死でした。今回披露するものは手と足のタイミングを時間差でかつ、高速で行う演舞となっています。最初は手の形やタイミングが合わずで苦難を強いられました。今回この本番までに成功はしていません!ですが、ここで頑張らないと後悔すると思うので披露したいと思います。女子応援団集合!絶対成功するぞー!」


 守山の一喝に山本たちは気合が入った。高難易度の演舞を披露する。


 太鼓の音は小刻みながらもその音と団員達は寸分違わぬ、速さと正確さに司会者はともかく出演者もどよめきが収まらなかった。山本たちも必死に食らいついて一つ一つを確実に行う。


 彼女たちの演舞披露が終わると所定の場所に整列した。守山はマイクを持って最後にカメラへ向かって応援団をアピールした。


「私たち女子応援団24人は体育祭でこの演舞を披露する予定です。最後の最後までこだわり、自分たちの磨きに磨きをかけた技と努力をぶつけたいと思います。この演舞に対して学校から嫌われていますが演舞があるからこそ元気と希望を与えることができる、そんな機会にしてほしいと私は思います。女子応援団集合!気をつけ、礼!」


 守山のスピーチに男子はただ呆然とせざるを得なかった。


 大山誠也が守山からもらったマイクを握りしめて、男子応援団の特徴を話す。


「みなさんこんにちは男子応援団団長の大山誠也です。僕たち男子応援団は14人と女子応援団より少ないです。しかし、この生出演は守山さんからの誘いが無ければ出来ないことなので本当にありがたく思っています!僕たちの見所は男子応援団だからこそというポピュラーなものですがそれは一つ一つ意味のあるものとなっています。女子応援団のみんな!俺たちの勇姿見届けてくれよな!男子応援団絶対に成功するぞ。気合入れて行けよ」


 大山は急足で配置に着く。すぐに始まった太鼓の音に司会者へ感想を言う余地を与えなかった。


 これこそ男子応援団の真髄と言えよう。団長の声は静かな体育館の奥まで響く、そして団員たちの掛け声にこれぞ俺たちの花道だ、文句はあるか?と言わんばかりの堂々たる姿に女子応援団の団員は共鳴した。女性出演者も目がハートになるほどのイケメンたち。大山は最後の最後まで団員とコミュニケーションを取りながら披露した。


 守山と同様最後にマイクを握って男子応援団をアピールする。


「見ていただいた通り、これが僕たち男子応援団の生き様です。みんなへ元気を与えるほか、本当の青春や本当の花道を自分たちで努力したからこそ味わえる感動がここにあります。女子応援団も同様にこの演舞を反対する学校の職員がいます。体育祭では大トリとして出る予定ですがそこでは今見せたもの以上のクオリティにしたいし、感動を与えることができたらと思っています!女子のみんなに感謝とこの機会を作ってくれた番組の皆様に感謝を込めて。男子応援団気をつけ!礼!」


 大山の模範通りな感謝を述べて女子も私たちはそんな…と言わんばかりに謙遜したが最後は白手袋をした2つの団員の手でハイタッチしながら幕を閉じた。


 しかし、山本は納得がいかなかったのか守山たちを呼んで動きを確認しようとした。その心意気が伝わったのかカメラマンが帰った後も自己練習を最後まで研鑽に守山、高部、鶴海は付き合った。着ていた本番用の袴は汗だくになっていたが気にせず練習する。それ以外の大山と男女の団員はそれぞれの更衣室で着替えて帰宅した。山本たちは最後まで研鑽に研鑽を行った。時に痛みの酷さにたまらずに絶叫したりした。


 研鑽を終えたと思ったら時間は大幅に経っていて袴の所々に血の跡が残る。4人は着替えを行うと、すぐに洗濯して乾かすこととなった袴だが今日のテレビ取材はとても良かったのか誰も文句ひとつ言うことが無かった。


「まゆっち無理しすぎだよ?完全に怪我したところからまた血が出てるよ…。それにそこまでして演舞に力注がなくて大丈夫だよ!山本1人が問題を抱えてしまったら私たちがどうすれば良いのか分からなくなる。だからさ…ちょっとは自分に休みを与えるなり、自分にご褒美を与えるなりしないとまゆっちの体ぶっ壊れるよ?私たちも指導に回ってるから気づけないところ沢山出てくるけど私と鶴海、高部もいるからさ!」


 山本に向けて守山が優しく介抱するかのようにその傷口に絆創膏を貼りながら話す。その内容は山本は1人で抱えていた緊張と重圧が怖かったことを打ち明けた。


「ごめんね、なみ…鶴海さん、そして高部さん。とても怖かった。自分が失敗したらどうなるのかなって思うことが前より強くなって後輩たちに少しでも良い思い出を作ってあげたいと思って帰宅後も体痛くても疲れても無理してた…。心配してくれてありがとう。分かった!私も何かあったらなみにも鶴海さん、高部さんに話すから。隠しててごめんなさい」


 山本の言葉に3人は同じ気持ちではあるものも、その気持ちは緊張に押しつぶされたり職員からによる圧力を打ち勝つという課題があるからこそのことだから共に練習した仲同士理解し合えた。


 4人は一緒に下校してアイスクリームを食べた後、山本は列車に乗るべく、プラットホームへ向かう。守山たちは手を振ってまた明日!と笑顔で言ってくれた。山本はその言葉に笑顔で手を振る。


 誰もいないプラットホームで1人山本は悔し涙を流した。


 翌日、山本はいつもより遅めに起きて登校したが、学校の正門はテレビ取材者でごった返していた。差別的行為という言葉まで聞こえた。かの有名な瞬間文聞まで来ていた。

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