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特別話:サプライズ

 この話は春休み中に演舞の練習で起きた、ちょっと嬉しい物語。


「今日はまた暑くなりそうだな…。もう、熱中症対策しないと本当にキツい。団員やられたら僕の責任だからね」


 朝早く来たのは男子応援団団長の大山だ。


 彼はいつもなら後に到着するのが普通なのだが、今日は暑くなるという予報から早めに来て個人練習をしていた。団長パートの練習をしていると、女子応援団団長の守山とその友人の山本、高部、鶴海が歩いて来てるのが見えた。山本は大山の姿を見て手を振る。


「おはよう!今日は珍しいね。こんな朝早く来るなんて…。流石男子応援団団長だよ」


「ハハハ…今日は暑くなるらしいから自分のパートをこの涼しい時間に確認しておきたいからさ。お前らも熱中症気をつけろよな。特に団員には気配りしておかないと連帯責任でこっちも影響するから」


 仲良く話す2人だったが、時間が経つ度に日差しは強くなる。


 男女共に応援演舞の練習を行ったが、暑いからかそれぞれ水を飲む頻度が高くなった。中には頭から水を被る団員まで続出した。


「こりゃまずいな。三國!日陰に移動するぞ。じゃないと団員全員が熱中症で倒れる、忘れ物が無いように日陰の駐輪場1階へ女子と合同練習だ!」


 三國とその仲間は荷物を整理して2階の屋上駐輪場から1階の駐輪場へ場所を変えた。女子は長袖長ズボン着用により、汗をかきすぎてフラフラしてる人もいた。特に山本はその状態で激しい演舞の練習をしてはフラフラになりかつ、足の傷が目立つ。


「おい山本!それはやばいからすぐに休め。じゃないと、冗談抜きで体を崩すぞ」


「私がやらなきゃ誰がやるの…あっ…」


 話の最中に山本は暑さで倒れた。服の上から冷たい水をかけたり、日陰で休ませる事に。


 練習は一旦休憩になった。次に山本が目を覚ましたのは、倒れて1時間後だった。


「あれ…私確かあのパートの演舞をしようとして大山と話をしながら…」


「山本さん、君はやり過ぎだ。オーバワークを起こしている。努力家でいつも練習をする君は凄いし尊敬してるけどこれは努力とかではなくて無理をしている。プレッシャーに弱いやつだな…。それに対して守山!お前何監視体制弱めてんの?団長ならしっかり団員の健康状態くらい把握しとけよ。何のために団長へ昇進したことやら…」


 熱中症を起こした山本には怒らず、監視体制が甘い守山に大山は怒る。女子応援団が設定する、鉄の掟をぶっ壊そうとした。


 しかし…


「私はちゃんと監視してるよ!女子応援団は男子応援団のように軽い気持ちでやってないよ。それだけ覚悟をもってしてるから口出ししないで!山本については悪かったけど、もっと自分を追い込まない限り意味無いって私は思う」


 大山は反論することをやめた。しかし、午後の練習開始からすぐに女子応援団の離脱者が続出する。1人、また1人と倒れて守山と高部、鶴海除く団員が倒れた。


 スパルタ的練習法が終わりを告げる瞬間だ。


「な?だから言っただろ。周りが見えていない中でそんなに練習したところで伸びるものも伸びなくなる。大山誠也の名の下に女子応援団に告ぐ。今日の練習はここまでだ。家に帰り、休め!」


 山本は立ち上がり、自分の足で帰った。


 その後団員も続々と帰り1日が終わる。山本は病院で点滴を受けた後、帰宅したので体が楽になった。お風呂に入ろうと服を脱ぎ始めた時に電話が鳴った。


「なみからだ。どうしたんだろ?お風呂入った後電話かけるからちょっと待ってて…」


 自身の体を洗って髪を乾かした後、守山へ電話した。内容は今日のことだ。


「私って今日の練習はスパルタ的な練習方法だったのかな…。あんなに熱中症で倒れるなんて思ってもなかったからさ」


「私たちも最初はそんな感じでヤバかったからね。それで覚えたから正しいと思ってしてるからスパルタ的練習方法が正解だけども、環境が環境だったということになるよね」


 守山と山本は演舞練習で起きたことを話し合った。


 話をした結果、熱中症を起こさないように休憩時間の徹底と水分補給を行うように呼びかけることに。山本は暑さで熱った体を冷やしながら夢の中へと誘われた。


 翌朝からの練習はそれが功を奏したのか、キビキビと進み春休み後半からは楽に体力を消耗せずに演舞ができた。とある日の練習後、守山と高部と鶴海は帰宅後通話を開始する。


「ねぇ、今月ってまゆっちの誕生日だからさ祝わない?あと、大山君も誕生日が受験になるから今のうちにサプライズ決行しない?」


「良いね!じゃ私、2人にプレゼント用意するよ。まゆっちは汗拭き用のタオルで大山君は私たちの想いが詰まった鉢巻にしよう!」


「面白そう!じゃ私は合図送るから誕生日の歌を歌おう!」


 高部はプレゼントの用意、鶴海はバースデーソングをと役割が決まった。山本のタオルは赤色の下地に3人の名前が入った刺繍のようなものを縫って完成した。


 大山の鉢巻は、山本含む女子応援団幹部らの名前をサインして最後に、守山が太い筆で"一舞入魂"と記入。


 決行の日を迎え、3人はいつものように練習内容の指示とそれぞれのパート練習を行った。終了する前には必ず集合して次の日の指示をした後に解散するのが流儀だ。


「それじゃそういうことで。今日の練習は終了!ありがとうございました」


「まゆっち!少し早いけどハッピーバースデー!!これは私たちからのプレゼントだよ。開けてごらん!」


 突然のことで男子応援団も見出した。


 守山と目があったのか、大山はすぐに向かう。山本はプレゼントを開けて新しい汗拭きタオルだったので大喜びだ。


「ありがとう!大事に使うね。最後まで頑張るからみんなもよろしくね!」


 女子応援団団員は拍手して祝う。大山が到着すると、鶴海はバースデーソングを歌った。


「ハッピーバースデーディア大山!ハッピーバースデー大山!めちゃめちゃ早いけど大山君おめでとう」


 なぜ祝われたのか分からない大山だったが、受験期より時間が取れないことからのお祝いだと気づき礼しまくった。


「ありがとう!みんな本当に祝ってくれてありがとう。こんな感じで祝われるの初だわ」


 女子団員はクスッと笑う。


 守山からプレゼントをもらった。大山が無造作に箱を開けるとそこには鉢巻が畳まれている。


「今年は最後だからこれ付けてね!大山君に教えてもらったものもあるからこれは私たち女子応援団から大山君への感謝と大トリだから最後はビシッと決めてくれ!ってことだよ」


 なるほどと言わんばかりに大山は笑う。


 早速付けて三国を呼びつけてはその姿を見せてやった。団長の姿を三国は羨ましそうに見る。


「大山先輩良かったじゃないですか!僕もこんな感じで付けたいなぁ…」


「大丈夫。私がその時は作ってあげるから待っててよね!まずは団長に昇進しないとね」


 嘉藤が三國の考えに水を差してきたが、涼しいものだった。山本と大山にとっては忘れられない1日となった。

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