表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/51

38話:応援魂

 悲劇は起きたものも、白石はその翌日退院した。


 体育祭まで残り2週間となる。狙撃された衝撃は忘れたかのように男女応援団は元気よく練習した。罵声もなく、全てが順調に進む。


「涼太君!待たせたね。一緒に帰ろう」


「全然大丈夫だよ!行こうか」


 前宮山本ペアは、完璧なバカップルと言ってもいいほどのラブラブでそれを見習うかのように鶴海と大山は付き合っていた。しかし、前宮のリハビリを見る機会が少なかったので山本は状況が分からずにいる。


「さっきから痛そうにして胸を押さえてるみたいだけど涼太君大丈夫?」


「気にしないで…。疲れてるだけだから」


 帰宅の途中に寄ったコンビニでアイスを買った時に山本は違和感に気づく。


 苦しそうな顔になっていたのは、病院の時以来だった。しかし手を挙げながら問題無いとアピールした。山本にとって心配の種になりつつ…。


「帰宅したのは良いけど、涼太君のあの顔見た後だからなぁ。倒れちゃったらどうしよう…って言ってもAEDがあるし、私も片山先生から教わったものもあるから対応できることをしよう。未来の妻になる為のね」


 体育祭の練習も一気に熱が入り、紅組白組と分かれるその団長の姿は最後というのもあってか熱が入りすぎてはしゃぎまくる。山本たちのクラスは白組で、鶴海と高部らは紅組だった。


 行進の練習やマスゲームの練習とあったものも、宣言通り山本は参加しなかった。


「こんなマスゲームのために練習してたんだって思うと時間無駄だったな…。栗原と下森めっちゃ動けてるし、あの2人が私の涼太君傷つけるなんて本当に許せない」


「そんな怒ることはないよ。受けてしまったことと起きてしまったことは仕方ないからさっ」


 前宮は冷えたスポーツドリンクを山本の首筋にピトッと付けた。ピクっと動いた山本は流石に笑いながら怒る。


「ちょっと涼太君!そんな事するなら私も仕返すよ?とても冷たかったけど、涼しい…」


「それ飲んだらゆっくりしてようぜ。この後はマスゲームしかやらないみたいだから、演舞の練習とかも出来そうにないからね」


 マスゲームは5箇所に分かれて練習をしていた。女子応援団団長の守山と高部たちは元気良く振り付けを確認しながら踊る。


「しかし良いのか?先生に怒られるってのもあるだろうし…。強制じゃないなら良いけれど」


「その辺は体育の先生に事情を話したから大丈夫。涼太君と付き合ってることも分かってるみたいだからここにいるのも問題ないよ」


 2人はスポーツドリンクを飲みながらグラウンドが空くのを待った。そうこうしているうちに、マスゲームの練習が終わりつつ演舞の練習のため、準備を進める。


 大きな太鼓を見た時、前宮はなぜか見惚れていた。


「懐かしいなぁ。小学校の頃も太鼓部ってあったんだけどこの太鼓、僕がいた小学校が使ってるあの太鼓と同じだよ」


「この作りが一緒なんて、偶然だね。練習する事だし、カメラ持ってもらっても良い?」


 山本は前宮にカメラを託して女子と男子の応援演舞の様子を捉えた。時に持つのが辛くなったのか、カメラ台に乗せてその映像を確認する。


 山本たちの応援演舞と大山たちの応援演舞は対照的なものだったが、勢いもありミスもないように見えた。


「こう考えるといろんなことあったけど、完璧に近いな」


「そんなではないかな…ん?ここの屋上なんか光ってる…」


 前宮を押しのけて屋上を見ると銀鈍色に光るものが写っていた。


「これって…」


「まさかな…」


 振り向くとあのスナイパーが狙っていた。何も知らなかったかのようにして両応援団は移動を始める。


「ここまで移動すれば問題なかろう。家に帰ってから画像解析するよ」


「頼んだ団長」


 大山がそのカメラ画像をスクリーンショットをした後、軽く演舞の練習を行った。


 副団長の三國も大山に似てきたのか、漢気のある団長の器に相応しい姿へと変貌する。女子も守山七海は、威厳のある男子顔負けの演舞を披露していた。副団長の嘉藤もあの時の問題を払拭するかのようにして最後の追い込みを行う。何の関係もない前宮は、ただその姿を見て紹介文を考えては読み返した。その日は隠れながら練習をした後それぞれの家に帰宅する。翌日画像解析と紹介文が完成した。


「ここまで伸ばしたけども、こいつ一嶋じゃね?黒マスクだから判断できないけど…」


「多分一嶋だな。ここの応援団のこと知ってるし、学園では唯一の左利き、そう考えるとあいつしか思い浮かばないな」


 大山と三國は、犯人の特定まで終わらせた。


 紹介文は本番に見せるということに。教室内はガヤガヤとしている中、1人のOBが正門に現れた。


「やっと着いた。誠也は団長として上手くやってんのかな?」


 その男は大山を探すために廊下を歩いた。三國はその姿を見て叫ぶ。


「あー!!大山先輩を団長に選んだ、トモさんじゃないですか!」


「おー!幸治郎じゃん!誠也どこいるか知らないかな?」


 大山のいる場所へ案内すると遅めの朝食をとっていた。熱い視線を感じたのかすぐに気づく。


「え!平井知先輩じゃないですか!お久しぶりですって言っても身長俺の方が大きいや」


「そういうとこ直せよな!放課後見てやるからそのつもりでな」


 彼の名前は平井知。前男子応援団団長で大山を団長に指名した張本人。筋トレ重視の脳筋野郎でもある。


「本番近いからですね!分かりました!」


「お腹出てるなぁ。少しくらい減らす努力はしろよな」


 大山のお腹を触りながら平井は自身の正論をぶちかました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ブクマ・ポイント評価お願いしまします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ