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37話:元団長の信念

 大山の傷は縫っていたので回復を見計らい、抜糸を行った。


 五日間の入院で終わり、リハビリながらも本番同様の動きに守山たちは驚く。


「大山君、無理しないでよね!最後だからって調子乗ったら失敗するんだから」


「大丈夫!それに痩せたからさ団服着れるよ」


 守山も驚くほどの減量で大山のかっこよさがみなぎっていた。もちろん、鶴海も大山のかっこよさに凄さと心配をしていた。そんな練習の最中、思わぬ来客が出てくる。


「みんな久しぶり!あのあと時間取れなくてね…。いい顔ぶれじゃん!」


 あの時、食事をした白石蘭が女子男子応援団の練習に現れた。


 守山は事故のことから全て話をした。鶴海の狙撃未遂など全て公開する。


「なるほどね。それにしては元気だね!何かあったのかな…?特に山本とか元気すぎてむしろ暑苦しいな」


 白石節炸裂。山本は前宮のことを話す。すぐにあの事件を題材に、思い出してくれた。


「あの子か。教育委員会をぶっ飛ばしたヤバい男の子って!絵に描けるかっこいい漫画の主人公って感じ。で、付き合って結婚の約束までしたと…。青春してるなぁ」


 山本はもらったネックレスを見せて機嫌良きな表情をみんなに見せていた。


 次の瞬間、どこからともなく大きな銃声と共に窓ガラスがぶち破れる音が響く。


「狙撃?またあの時の…」


「なるほど、鶴海ちゃん狙ってる人の事ね。とりあえず、脱出して逃げましょうか。裏門なら狙えないはず」


 守山と白石は荷物を持って隠れながら裏門へと向かって鍵を開ける。他の団員もそれぞれの荷物を持って裏門へ逃げた。


 この日前宮はリハビリでいなかったのが唯一の幸いだった。


「でっかい音だわ。相当腕慣れしてるスナイパーだね。ここまで来れば問題ないはずだけど、逃げるにしても誰かが囮になるしかないね…」


 裏門から逃げた白石と守山たちは白石の代で使っていた隠れ家に隠れていた。恐怖のあまり、泣いてしまった女子団員も続出する。


「泣くにしても今は脱出する方法を考えないと…。でも何故鶴海さんを狙う必要があるの?彼女は何もしていないと思うし…」


 高部の言う通りで鶴海は問題行動を起こさないかつ、頭脳明晰で男子の憧れる理想の彼女としても知られておりそれ以外全く思い当たる節がない。


 山本は恐怖のあまり前宮へ電話をかけた。


「ん?どうした。練習終わってアイス食いたくなったか」


「違うの…今私たち狙撃されてる。狙いは鶴海さんみたいだけど逃げれない。怖くて…もう泣きたい…」


 山本の心は疲弊して崩壊寸前。


 白石はどんよりと悲しみに暮れた応援団を見てそのままにしたくない思いなのかとんでもない考えを口にした。


「私が囮になる。みんなはその間逃げて!この命は私だけでなく、この応援団に捧げるつもりでやってきたからさ」


「白石先輩それはダメです!あなたがいないといけないですし、死んだら元も子もないですよ。まだいい方法があるはず」


 守山は泣きながらも自身の主張を訴える。


 しかし、白石の覚悟は固かった。


「私は何かに対して命をかけて守りたいの。前宮って男も七海の姉、紗耶香を救ったじゃない?それなら私も元団長としての立場がある。だから、ここは私に任せてくれないかな。元団長として最後の命令になるけど、生きて脱出しろ!私からは以上」


 団員は荷物を持ち直して、白石の指示を待つ。この会話も電話越しで前宮は聞こえていたので、すぐに電話を切った。


「みんな、後は任せたよ!」


「分かりました。みんな!逃げるよ」


 白石を先頭に両応援団は脇道を使って女子応援団が過去に怒られた練習場所へ向けて逃げる。


 山本は逃げ切ったのを確認して、白石に声を荒げた。


「私たちの団員逃げ終わりました!先輩も急いで…」


 大声に反応しようと、白石が山本の顔へ向けると同時に銃声が聞こえた。その銃弾は白石の右肩へ命中する。


「先輩!今すぐに…」


 山本は白石を担ぎ上げて逃げた。幸運な事に、肩の出血は最小限で血管もやられず、だが白石は思わぬ返答をする。


「山本のバカ…。なんで私を見捨てないの?それだけの覚悟を持って囮になったのに…」


「私たちが1年目の時、こう言いませんでしたか?下手であろうとも見捨てたくないって。私は白石先輩の言ったことを守ったまだです。夜日高度医療センターへ向かいましょう!知り合いの先生がいますから」


 救急車を呼んでそのまま運ばれた。連絡を片山にしたことで、すぐに処置が行われる。


「前宮くんならさっきまでリハビリをしていたよ。そして白石さんだけど、とりあえずこれが取れた。何がどう起きたか分からないけど警察に言うべきだね」


 片山は1発の銃弾を渡す。調べてくれた報告書にはロシアで使われているアクロニウムというものだった。


「白石先輩!大丈夫ですか?」


「私は大丈夫だよ…応援団の足痛める時より灼熱で痛かった…」


 無事を確認する団員だったが、見せられた1発の銃弾にどよめきが収まらなかった。


「なみ、これからどうしようか…警察の人に連絡してしばらくの間体育館で練習しない?」


「そうだね…」


 考える間も無く、それを聞いた高部と鶴海は警察に電話した。すぐに警部官が訪れる。


「お待ちしていました。これがその銃弾です。撃たれた本人は摘出されたばかりなので麻酔で…」


「分かりました。こちらの方は鑑識に回すのでそのつもりで…」


 高部と鶴海、山本が対応する。冷たい銃弾を見ながら頭の中は雪のように真っ白になっていった。

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