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33話:激論の果て(後編)

 いつもの朝を迎え、山本は前宮を迎えに行く。


 駅では車椅子で来る姿を見るのも少しずつではあるが慣れてきたようだ。


「涼太君ってさ、事故で病院へ入院して死にかけた時ってどんな感覚だったの?ほら、心臓マッサージやらアドレナリンやらと撃たれてたみたいだからさ」


「意識が暗くなったというより、三途の川が見えてたよ。森田さんがそこにいたんだけどまゆっちの声や守山さんの声が聞こえた。戻ってこい!って」


 臨死体験を話しながら学校へ到着した。


 教室へ移動した後、山本はそのまま着替える。制服の下に練習着を着るという大胆な考えだ。


「この考え良いでしょ?男子がいても脱ぐだけで終わるから良いのよね。暑いけど…」


「前にまゆっちが胸の大きさ気にしてたみたいだけど普通に大きいと思うよ。セクハラ発言になるかもしれないけど、僕はまゆっちの全てが好きだよ」


「コンプレックスに対してプラスに考えさせる涼太君の考察を見習わないとね。放課後時間あれば少し話したい人がいるから同席してもらっても良い?」


 山本の予定に前宮は頷く。


 そのまま制服を持って元気よく走った山本は女子更衣室へ制服を置いた後、練習するグラウンドへ向かう。既に守山と高部が到着していた。


「涼太君から私のコンプレックスに対して大きいよって言ってもらえたよー!もう嬉しい」


「やっぱリア充って良いなぁ…。でも胸は成長するにつれて大きくなるし、気にしなくても良いとは思うけど涼太のやつええ奴やな」


 急な関西弁の守山に感動の山本、その場面にどうすれば良いか分からない高部という謎のフィールドが完成していた。


 言い変えれば良い意味のバミューダトライアングル。


 練習も完璧に近い状態まで仕上がっていたので、団長の守山も何も言うことがなかった。


 放課後話をするためにと前宮を呼び出して向かう。そこには栗原と下森、黒岩と何故か女子応援団副団長の嘉藤美保がいた。


「遅れてごめんね!涼太君の車椅子意外と押すのにコツがいるからさ…」


「問題ないですよ山本先輩。マスゲームに関わる方を連れてきたので話を始めましょう」


 ここにいる人らはマスゲームリーダーと副リーダーが集結していた。山本は徐ろに携帯を取り出して黒岩との会話を栗原と下森に聞かせる。


「栗原さんと下森さんがこんなこと思ってないよねって信じてたけどこんなふうに思ってたなんて…。涼太君は2人のためにやってくれたのに、なぜ私たちのことを潰そうって思うの?」


「まゆっちは好きなのかもしれないけど、あなたが付き合ってきた人たちは短い期間で別れてるよね?そうなる結末なら別れさせようと思っただけ。お人好しの前宮ならすぐ壊れてくれることを計算に入れてね」


「私も同じくだよ。お見舞いへ行ったのは2人の写真を撮ろうと盗撮を犯した。ここにある写真全てが嫌がらせ及び、この写真を使ってどう思わせるかを説明するくらい簡単だよ?」


 栗原と下森の企みが前宮を殺すためのものに対して山本は怒り狂った。


「殺すくらいなら私も殺してよ。1人残される身にもなってよ。あの事故は下村元校長がやった事でそれも計算に入れてたのなら繋がってるんだろうなって思うけど、そんなに嫌なら縁切ってよ。今までもこれからも友達でいたかったのに…」


 気づけば山本は栗原の胸ぐらを掴んで殴ろうとしていたが、泣いている。その拳を止めようと嘉藤と黒岩が止めていた。


「先輩。もうやめてください!怒りたいのは分かりますが、暴力はまた違いますよ」


「そうですよ!嘉藤の言う通りです。手を引いて下さい」


 山本が手を下げると、不意を突くかのように横から下森が山本の頬をビンタした。


「は?俺の真由に何してんの?不意を突こうだなんて百年早いんだよ!両足は動かせなくても君らの顔面殴るくらいどうって事もないぞ」


「やれるものならやってみろよ!守りも出来ない前宮が何ができる?」


「俺の真由って私物化してんじゃないよ変態が。失せろ!」


 下森と栗原に向かって殴りかかろうと体を起こして前のめりになった前宮は、利き手の拳に渾身の一撃を込めて仕掛けた。


 しかし、その拳は守山によって止められる。


「おい守山七海!何の真似だ?こいつらはまゆっちをビンタして傷ついてるんだぞ。男としてけじめをつけさせてくれよ」


「その心配は要らないよ。途中から話を廊下で聞いていたが、下森さんに栗原さん。私の仲間に手を出すなんて何がしたいの?特に栗原さんって元々1年目で辞めてるのにうちの山本を嵌めようとするなんてバッカじゃないの?」


 守山は前宮がしようとしたことを行った。下森の胸ぐらを掴んで一気に顔面へ殴った衝撃はブラウスが破れて露わになるほどのものだ。


 今度は栗原にしようとしたが、命乞いをするどころか不敵な笑みをこぼす。


「女子応援団団長がそんなことしていいの?また中止になったら誰がこの応援団復活させるの?また涼太がするのでしょ?応援団は彼がいないとできないなんて、雑魚すぎだよね!」


「確かに、誰が復活するのかってなると前宮になるよ。でもその背後には森田が付いている。死んでも尚、その魂はここに健在するよ。下森みたいにブラウス破けて良い覚悟出来てる?まゆっちに謝るなら今のうちだよ?」


 守山の殺意は栗原の着るブラウスのボタンがビリビリと解け破れる音が聞こえていた。


「前宮!まゆっちを保健室に運びな?大山が廊下で待ってるから。私が待っておくように言ったのさ!」

「流石団長だ。誠也!僕の膝元へ真由を。すぐに運ぼう」



 大山は山本の腕を借りて起き上がらせた後、お姫様抱っこをするようにして前宮の前腕を用いて運び、車椅子を大山が押した。


「これで仲間は大丈夫だが、栗原さんどうする?降伏か、骨折か」


「…やれるもんならやってみろ!守山七海!」


 守山はブラウスを握ったまま力の限り栗原をぶん殴った。下森以上に衝撃が強く、下着も破れる程だった。


「さて、これで良し!黒岩と嘉藤は帰宅の準備して校門へ行って良いよ。あとは私が片付けるから」


 黒岩と嘉藤は荷物を持って校門へ向かう。


 保健室へ向かった3人は山本をベットに寝かせて目を覚ますまで待った。


「前宮よ、すまない。この後男子応援団の方で食事会があるんだわ…。任せても良いか?」


「もちろん、目を覚ました時は連絡するから」


 大山は食事会へ向かい、前宮は山本の手を握りながら目を覚ますまで横に付き添った。

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