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27話:恋と青春

 大山と2人で前宮の入院する病院へ向かったが、術後の姿に山本は涙した。


 大山は団長という立場もあってか、何も言わず部屋を出て帰宅。山本はただひたすら泣いた。


「何でいつもこんな時に大切な人が傷つくのさ!傷つくのなら私だけでいいよ!守って下さい…神様…。はっ!?もしかして、涼太君が私に託した御神体…!?」


 山本は凄まじい速度で家に帰って飾っていたネックレスを探し、病院へ戻る。偶然にも前宮は同じようにネックレスを付けていたが血塗れで外されていた。山本はそっと手に取って綺麗にしようと布巾などで擦った。


「2つ並ぶってことは無いよね…。でも御神体を宿らせたのはきっとこのネックレス…だとしたらここに持ってきたからきっと目を開けてくれるはず」


 そんな中電話がかかった。


 電話の相手は守山。すぐに応答したが、声は姉の紗耶香だった。


「山本?今病院にいると思うが前宮君の容態大丈夫かな…?七海から携帯借りて電話してます」


「お疲れ様です先輩。前宮君は…手術後大山と居ましたが、その途中心肺停止になって大変でした。今は容態は良くなっていますが何故前宮君のことを知ってるのですか?」


 山本は違和感を質問する。なぜ守山紗耶香が顔をも知らない前宮の事を知ってるのだろうかというものだった。


「ニュースになってたの。教育委員会相手に1人残さず殴り飛ばしたって…。ちょうどその日って女子だけしか練習してなかったと思うけど覚えてるかな…」


 すぐに思い出した。森田遼の元へ急ぎ、そこで反対派の先生を殴り飛ばした後学校へと戻り、守山七海のブラウスをボタン一つ一つ切り取って胸を露わにしようとした六田や下村を再起不能にまで殴ったあの出来事を。


「はい…覚えています。あの時の前宮君は本当に鬼でした。先輩が事故に遭わないようにと犠牲になった事に今も驚いています。でも、前宮君は私の彼氏です。なのでとても心配で仕方ないです…」


「君が心配してどうするんだ?今心配しないといけないのは応援演舞の練習こと女援の本番までの練習でしょ、前宮君との話は七海からよく聞いている。元気届けるのならその為に頑張ろうよ!私も高部、鶴海にも協力してもらったから前宮のお見舞いを当番ごとに行こう」


 山本は電話を切った後、その横で眠る。微睡の中で前宮と手を繋いで走っている夢を見た。


 心には見たことのない龍のお守りが前宮を守っていた。これが、彼の御神体なのだろうと。


「これが…前宮君の御神体!でも弱ってるのはなぜ?あ、そういうことか。私に託したからだ。今ここに戻そう。前宮涼太君の体を守って欲しい…。私の願い、届いて!」


 夢の中でその龍は、前宮を包み込むかのように纏わりついた。


 体も薄くなっていた青色が徐々に元の色へと戻る。すると今度は山本の体から炎のように赤いものが出てきた。それは前宮の龍のようなものだった。


「これって…前宮君の御神体が残してくれた私への御神体?赤い龍。私の女援は赤の鉢巻結ぶから…しかも龍はなぜ…?辰年だからかな。私、巳年だけども彼の御神体が残してくれたものならもう諦めない!」


 覚悟を決めた山本の体に赤い龍は巻き付き、全ての力を注ぎ込んだ。光り輝く場所へ導かれ、朝を迎える。


「あの龍が前宮君の御神体…!そして私に残してくれた赤い龍。もう、諦めない。体に傷つけないように涼太君のために頑張る。まだ目は覚してないから今から学校行ってくるね!」


 山本は元気ハツラツとした動きで学校へ向かう。練習着に着替えて女援の練習をした時、動きやすいことに気づいた。守山はその様子に気づく。


「昨日話は聞いてたけどその割に動きめちゃめちゃ良いよ!今日は私とお姉ちゃんで前宮くんのとこ行くから心配しないで」


「あ、やっぱ気づくもんだね…。実はね前宮の寝てる横で昨日寝たけれども御神体が真由の体に宿ったの。前宮君の御神体を彼自身の意志で私に宿らせたけれども返したら私の御神体が出来たの。いわゆる守護霊みたいなものかな」


 守山は理解できなかったが、彼の趣味を考えるとあり得そうだと思った。


 女援の練習を終えた守山は姉の紗耶香と共に前宮が入院する病院へと向かう。


「七海はどんな事がきっかけで前宮君のこと知り合ったの?」


「まゆっちが病んでた時に前宮がクッキーを作ってくれてそれが回復する要因になったみたいなの。私が知り合ったのがそこからかな…」


 夜日高度医療センターへ到着して部屋へ向かう時、慌ただしく動く看護師を見かける。その看護師を追いかけると前宮の部屋へと向かっていた。


「え…これやばいやつだよね…?まゆっちに電話した方がいいのかな」


「まずは状況を理解することから始めよう。部屋を覗いてみよう」


 守山姉妹はそぉっと部屋を覗くと前宮の上裸が見えて、心臓マッサージを受けていた。


「嘘…でしょ…?前宮!」


 七海は飛び出して部屋へ入ったが担当医の片山に止められた。姉の紗耶香も入室して口を隠す。


「今は心肺蘇生をしてるところです!近づいたら危険です」


 電気ショックを何度も受ける前宮の姿を見て七海は大泣きした。思わず大きな声で叫ぶ。


「前宮今すぐに戻って来い、山本真由を残して死ぬなんて団長の私が許さない!生き返れ、前宮涼太!」


 泣き叫んだ声は病院中に響く。


 電気ショックは既に6回行われており、心電図はゼロのままだった。数秒後、心電図は脈拍を捉えた。


「脈拍、確認しました。血圧も安定です」


 看護師の一言に安堵の表情と共に、ずっと泣いている。


 彼の口元には管のようなものを付けられており、気道確保の為に行われた機械がずっと稼働していた。


「遅くなってごめんね…。少し騒がしかったよね。でも、本当に死んだら怒るよ。まゆっちは…いや、真由は涼太が戻って来ることを祈ってるよ。体育祭見てやってくれよ。私たちの演舞最後まで…」


「君が前宮君だね。助けてもらった守山七海の姉、紗耶香です。私の可愛い妹のことで世話になっています。そして、私のために命懸けで守ってくれて本当にありがとうございます。今は生死の狭間にいる状態だと思いますが七海と同級生の山本真由さんの為に復活して欲しいです。もし、私の願いが叶うのなら目を開けて下さい」


 2人は前宮の両手を握って祈った。


 それからどれくらい経ったのか、外は真っ暗の中弱々しくも目を開いた前宮の姿があった。

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