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25話:マスゲームの呪い

 新しい担任が来るという話で山本の頭の中はいっぱいだった。


 それは、また女子応援団と男子応援団を批判するようなことが起きるのではないかという心配と前宮に迷惑かけてしまうというものだ。


(大丈夫…。次の担任は信用できるはず!前宮や亡き恩師の森田先生がどうにかしてくれた事だから絶対大丈夫!だからこの動悸と不安な気持ちを抑えて真由!)


 山本は通学する途中、不安で胸を抑えながら学校へ登校する。偶然なのか前宮とも合流した。


「お、まゆっちじゃないか!おはよう」


「涼太君…おはよう…」


 顔色の悪い山本を見て前宮はすぐに手を繋ごうとした。山本はその行動に緊張が無くなった分、顔がぽっと赤くなる。


「涼太君やめて!恥ずかしいよぉ」


「お前な、そんな顔されたら僕も黙ってられないから。後で話聞くからさ」


 教室へ向かい、ホームルームを待った。新たな先生は女性の若い人だ。しかし初めての挨拶からとんでもなかった。


「どうも、応援団について解散しろとか言われていたようですがはっきり答えますが解散はありません。山本さんと大山君かな?同志がこのような無礼をしてすいませんでした。その代わりマスゲームを中止にします。理由は、ダンスする理由が無いですしマスゲームの意味を理解していないからと指摘を受けました」


 栗原と下森は、頭が真っ白になった。なぜマスゲームを無くさなければならないのかという疑問が一気に浮上する。


「あ、忘れてました。このクラスの担任そして校長を務めさせてもらいます鮭谷郷子です。臨時ですが、宜しくお願いします」


 担任が教室を後にする。教室内はざわめいた。


 特に山本は嬉しい反面どこか悲しいものがあった。


「ねぇ涼太君、マスゲームってさ今まであってもなくても良いやって思ったけど2人の背中見てると悲しく見えない?何か応援演舞は無いですと言われた後の私たちに見えるの…」


「なるほど…。確かにマスゲームって言えば集団行動やちょっとした女子ならではの競技、男子ならではの競技と言ったものになるな。でも、下森と栗原ってマスゲームリーダーだよな?流石に黙ってられないはずだよね」


 偶然席が隣同士の山本と前宮だったが、不穏な違和感を2人は感じた。また教育委員会に出なきゃいけないのだろうかというあの恐怖を背筋が凍る。しかし、その違和感は現実となった。


「前宮君ってさ、廃止寸前の応援演舞を救ったって聞いたけどもし可能ならマスゲーム復帰を目指して協力要請しても大丈夫?」


 栗原は前宮に話しかけたが、山本がその話に割り込んで前宮がどのようにして男女両応援団を救ったのかを涙ながらに説明した。


「涼太君はね、ODやリスカをしながらも体が壊れる寸前まで協力してくれたの!しかも恩師である森田遼さんにまで勧めてくれた。でも、森田さんは死んでしまった。そして涼太君は…肺炎になったり血が足りず貧血で下村と2人の男性教員を倒れながらも殴り飛ばしたの。でも問題がある度に、涼太君は自分の身を壊すまでしてくれるけどその分心配になる。だから、他の人に頼んで欲しい!もう涼太君の体に傷ひとつもつけたくな…涼太君!?手を離して!」


 話をしてくれた山本の手を前宮が止める。


 でもその手は力が無かった。


「まゆっち、大丈夫。心配してくれてるのは分かるけれども心配しすぎだ。僕は大丈夫。今も鉄剤を飲んで血を増やしたり免疫力を向上する為に栄養を摂るようにしている。完全じゃなくてもちゃんと守らなきゃいけないものがあるだろ?まゆっちが大切にしてる青春がその手に持ってるだろ!僕の事は問題無い。だから、行かせてくれないか?」


「涼太君…。分かったよ。でも、無理したり病院へ入院するような事はしないでよね!本当にそうしたらまた両足に錘を付けて演舞練習して壊れるまでするから」

「大丈夫、何度足が壊れようとも僕がまゆっちの足になる。それに錘をつける前にすぐ投げ捨てて怒ると思うけどな…」


 2人は何故か笑ったが、どうするべきか決まったようだ。全ての授業を終えた後、山本はいつものように練習着に着替えて演舞の練習をする。


 足の痛みはまだ残るものも、柔軟性が高くなりスムーズのようにも見える。


「いやまゆっち柔らかすぎでしょ!てかすげぇ開脚出来てる」


「バレリーナかってツッコみたくなるくらい柔らかすぎる…でも無理してない?」


 守山と高部が心配する。


 しかし、山本は黙々と練習をこなした。練習後、校門にいたのは前宮だった。付き合ってから下校時は2人っきりで帰ることが日課になっていた。


「ねぇ、本当に大丈夫なの?無理しすぎて体壊して最悪死なないでよね!」


「大丈夫だって!何でそんな心配するのさ」


「私の手を止めた時、涼太君の手の力が無かったから」


 山本はあの時の違和感を話した。前宮はただ笑う事しかしない。


「まだリハビリ途中だし握力も前よりダメになってるから仕方ない。お!ちょうどコンビニがあるからお茶でも買って飲もうか」


 2人はお茶を購入して飲みながらそれぞれ帰宅する。


 山本は帰宅後前宮の様子が心配で仕方なかった。付き合い始めてから心配するだけで、胸を押さえるようにして苦い顔になることが多くなった。


(大丈夫だよね…私守れるよね?涼太君は私の大切なパートナー!こんな事で心配してたらダメだよ…でも、彼が死んだらどうしたらいいのか分からない!キツいけど守れるなら守ろう)


 胸を押さえながらも自主練習して動きの確認をした後、何日ぶりか分からない涙を流しながら眠った。

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