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22話:スランプ

 応援演舞の練習も遂に佳境となり、ラストフェーズへと移りつつだ。


 女子応援団は守山たち含む4人との合同練習を行われたが、開始早々違和感を感じた。


「誰か一瞬倒れなかった?何というか、場所が変だよ…」


「気のせいだと思うよ。とりあえず続けよう」


 守山の違和感に対して高部は気のせいだろうと声をかけたものもその時、山本は体力的限界で気を失いかけていた。足はボロボロで錘をつけていたからか、走るのがキツそうに見える。


「バレてないね…。またバレたら怒られるから嫌だ…!もう足引っ張りたくない」


 そんな思いで行っている中、とある練習でそのことが明るみに出ることに。


 その練習は定期的に行っている男女それぞれの経過発表のことだった。大山率いる男子応援団の迫力は増すばかりで最後の花形と言って良いくらいの完成度となっていた。


「流石大山団長!勢いあって惚れちゃった」


「山本については前山と付き合ってるのにそりゃないだろ(笑)」


 談笑が終わるとすぐに女子の経過発表が行われ、カメラを大山が担当すると山本の足が異様に遅い事に気づく。


(山本のやつ、なんか変だぞ?いつもあんな遅かった?とりあえずカメラを回そう)


 大山は中央に来てはカメラで撮り始めた。


 太鼓の音が鳴り響くと共に団長の守山が中央へと歩き出した時、山本が膝から崩れて倒れた。


「山本!?お前どうした!」


「まゆっちどうしたの?おい、しっかりしろ!鶴海さんすぐに救急車を」


 大山の予感と共に守山の指示に鶴海は動く。運ばれる時、山本の足から大きな重りがズシンと音を立てて落ちた。


「あのバカ…1人で抱え込むなって言ったはずなのに…。これしかも鉛だ。5キロって…」


「足からいつも血が流れてたけどこれが原因なのかな…前宮君に連絡して来てもらおうよ」


 守山が怒る中、鶴海は前宮に電話して入院していた病院、夜日高度医療センターへと運ばれた事を伝えた後2人は急いで向かう。


 山本の容態は命に別状はなかったものも、長期間両足に錘をつけていたからかアザが足中に点々と残っていた。


 点滴と足の処置を終えた山本は疲れていたのか、スヤスヤと眠っていた。


「眠ってる…のか。ネックレスもつけてたから外されたんだね。高部来れないってさ。待つだけ待ってみよう」


 守山と鶴海は山本の目が覚めるまで待った。


 その30分後、前宮が到着する。


「2人とも来てたか。容態は?」


「命に別状はないみたいだよ。でも、足の傷が酷い。鉛を5キロ両足に計10キロ抱えて練習してたらしくて処置に時間がかかったみたい」


 前宮は山本の足を見る。包帯でぐるぐる巻きにされていたのでその姿に泣いていた。


「バカ…何でキツいって言わずに我慢してたんだよ!市役所行った時も足痛めて歩けなかった時にさ、僕は気づけなかったんだろ…。今日一晩ここに残る。2人はどうする?」


「私も鶴海も練習があるから…」


「練習よりも仲間が大事だろ!目が覚めるまで待つのが本当のチームメイトなのに、見捨てるなよ!」


 前宮が怒り、2人は非情にも帰ってしまった。山本と前宮しかいない部屋で前宮は1人山本の右手を握って目が覚めるのを待った。夜中2時に握り返しを感じて前宮は起きた。すると、目を開けている山本がそこにいた。


「真由さん!お前…足に負荷かけすぎだ!自分を責めるなって俺にも自殺するなって言っておきながら…もう…」


「私、練習の時がとても辛いの。理由はできる演舞項目が出来なくなって、分からなくなったの。間違えたら足に負荷をかけて追い込もうとしたけど無理しすぎたみたい。心配かけてごめんね涼太君…」


 点滴の液が切れた時、2人は涙を流して無事を確認する。ナースコールを押していたので前宮を担当した片山が山本の部屋へ入る。


「おやまぁ今日は随分と静かだと思ったけどお2人ですか。そして、ネックレス見る限りだと付き合ってるのですね。山本さんは過度の練習と足への負荷、更に傷口の炎症が酷かったので抗生物質の投与をしました。気分はいかが?」


「はい、大丈夫です。私はどれくらいで退院できますでしょうか?」


 山本の顔を見て片山は答えた。


「1週間入院してもらいます。膿も確認したので…。しばらく辛いと思いますが体を休めて下さい。前宮君もたまに顔を出してあげると良いでしょう」


 片山はそう言い残し部屋を後にした。


 練習の怖さと緊張をモロに受けていた山本だったのでずっと涙を流す。


「前宮君は私の演舞見たことあるよね?かっこいいって思ったりした?」


「そうだね、君の演舞がかっこいいと思ったから男子応援団入りたいって思ったけど僕は前にも言った通りあまり良くないからさ…。でも君が無理して何になるん?もう傷つけるのはやめてくれ…」


 前宮の涙に山本は点滴を受けた腕とは反対の腕でその涙を拭う。


 その山本の目には、悔しさの涙が流れて病院の枕に非情にも染み込んでいった。

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