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16話:決意

 翌日の早朝、守山が先に起きた。


 寝ている山本の寝顔を見て気持ち的に何故か可愛いと個人的に守山は思った。写真撮りたいなと思う部分があったが、真っ先に向かったのは前宮の病室だ。


 ちゃんと前宮は目が覚めているのかどうかを見るべく確認に行く。


「前宮君起きてるかな…?ちゃんと熟睡したかな。でも、肺に水溜まってたとか、血を吐いてしまうほど酷いのなら担当医の片山さんが難しいって言うのも分かるかもしれない」


 083号室へ守山は入ると前宮はスヤスヤと眠っていた。


 守山はそんな前宮を見て涙を我慢しながら耳元で囁く。


「前宮君。まゆっちこと山本さんが君の帰りを待ってるよ。復活してくれないとまゆっちを悲しませたという罪で怒るからね」


 そう囁いて出ようとした時、前宮の手が動いて目を開けた。医師も驚く奇跡が起きた。


 守山はそれを見てすぐに山本を起こしに仮眠室へ走り戻る。


「まゆっち!前宮君目を覚ましたよ。今すぐ083号室へ向かうよ!」


「え、本当?分かったすぐに行く」


 奇跡の生還でもあった。山本は前宮の病室へ入ると前宮は2人の姿を見て涙を流す。


 振り絞る感じで前宮は山本たちに声をかけた。


「お前ら…山本さん…と、守山さん…か。まだ…朝7時回ってない時間なのに、よく来たね。2人とも泣いてしまってるけど…何があったんだい?また…クッキー…作ってやるから…今は…泣かないでほしい…」


 山本は一瞬の事で涙が止まらなくなった。前宮の傷ついた右手を握ってどうしてここに来たのかを全て説明する。


「前宮君!君が吐血して病院へ入院したと片山先生から聞いて来たの。昨夜からずっと仮眠室借りて目が覚めるまで待ってた。生還してくれてありがとう。この傷自分で付けるなんてバカ!絆創膏なみも持ってるから今から私たちが前宮の傷ついた両腕に付けてあげるよ」


「…もうあの時の山本さんじゃ…ないな。とても気持ちが…明るい、良かった…」


 前宮は肺炎を起こしていて呼吸するのも一苦労なのに力を振り絞って声を出した。


 山本と守山は前宮の手で傷つけた両腕に絆創膏を貼った。そして、山本は話す。


「この絆創膏は、恩師である森田遼先生に会って帰る時に付けてくれたあの時の絆創膏のお返しだよ!生きててくれてありがとう。私は前宮のこと好きだよ。ちゃんと退院したら私で良いなら一緒に付き合おう!」


 突然の告白に守山は驚く。


「なーんだ、まゆっち前宮君の事好きだったのかー。良かったじゃん!前宮君。さて、まゆっちがこう言ったから君の答えも聞こうか。前宮君は山本真由さんの事を守り、かつ浮気もせずにちゃんと幸せにするまで人生のパートナーとして付き合いますか?」


「いや人生のパートナーって早すぎるけど私にとっては前宮がパートナーだから良いよ!前宮君の答え聞きたい」


 前宮は驚いた顔をしていたが酸素マスクをしてる為、息をするのに大変だったが笑顔で頷く。


 今ここで新たなカップルが誕生した。


「良かったねまゆっち!さ、学校始まるから行こっか!前宮君のお見舞いは私たちが毎日来るから心配しないでね」


 まだ驚きを隠しきれていない前宮だったが嬉し涙を流していた。前宮の様子を見ながら2人は演舞の練習と授業を受けるべく、学校へ登校する。


 授業は前宮がいなくなった為、そのテスト範囲分をまとめるべく全てメモして見れるようにした。放課後練習をする為に山本は、いつもの場所へ向かう。


 そこには高部と鶴海がいた。


「まゆっちじゃん!前宮大丈夫だった?てか、これ昨日の制服のままじゃん…早朝家に帰らず前宮の入院している病院で寝てたのね」


 山本はふふっと笑いながらも練習に参加する。そして、練習が終わった後高部と鶴海に前宮と付き合う事を話した。


 その報告に高部と鶴海は、声を出して喜んだ。


「えー!?!?本当に!おめでとうじゃん!まゆっちのこと守ってくれるなら本当に良い人じゃん!守られすぎずちゃんと前宮君のこと守るんだよ」


「実を言うと中学の時、塾一緒だったよ!印象はとても暗かったけどまゆっちなら明るくするだろうし、前宮も心を閉じていた時あったから開けてくれると思う」


 鶴海と高部はニヤっと笑った。練習後、山本は制服に着替えて入院している病院へ行った。前宮は、起きていて朝より元気そうに見える。

 でも袋を見ると吐血の痕があった事から山本たちが学校にいる間体調が不安定で気持ち悪く血の混じったものを吐いてたのだろうと見た。


「前宮君大丈夫かい?ご飯食べるか分からなかったからお菓子買って来た。よかったら一緒に食べよう」


「ありがとう。ご飯はまだ食べれないのよ…。まだ吐き気もそうだし、ずっと吐いてたから胃がすっからかんさ(笑)でも食べると吐きそうだから気持ちだけ受け取るよ」


 2人はラブラブな関係だった。疲れてる様子の山本に前宮は優しく声をかける。


「担当医の片山さんから話を聞いた。朝はちょっとキツくてぼやけてたけどやっと分かった。改めてだけど僕が目を覚ますまでいてくれてありがとう。そして、ちゃんと真由さんの事守るからこれも改めてよろしくお願いします」


 声質も元に戻り、回復している姿を見て山本は前宮の胸に飛びついてわんわんと泣いた。


「私、怖かった…。前宮君が死んじゃうんじゃないかって…いなくなったら演舞の恩返せないし、私のこと愛してくれてるから尚更私にとって前宮は大切な人だもの。もう、自殺なんかしないでね」


「分かった。山本さんに心配かけてしまって申し訳ない。そして、守山さんや高部さん、そして鶴海さんにもそう伝えて欲しい。退院したら2人っきりでデートでもしようか」


 デートの一言に山本は泣きながら笑って喜んだ。


 喜怒哀楽の4分の3を出してる山本に前宮は初めて笑う。

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