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5. 肉食系百合美少女で学ぶキャンプサイト

 女の子が女の子を好きになったら悪いですか?


 もちろん、私はそうは思いません。

 美少女と美少女は引かれあうものですからね。


 唐突ですが、私がなろう百合界の新星にしてガチ百合美少女、くもくもです。

 実のところ、百合という言葉に収まりきらないレベルの女好きでもあります。

 


 いくら私が美少女とはいえ、百合っ子のおかれた現実は非常に厳しいものです。

 好きな女の子ができても、なかなかアプローチは難しいですし。

 ボディタッチ多めな女の子についつい惹かれてしまっても、その子に彼氏がいるなんてザラですからね。


 とにかく出会いに飢えた毎日です。

 あ、男性は結構ですので、ご着席下さい。


 そんな厳しすぎる環境の中、1ヶ月前まではかわいいかわいい元ノンケの彼女がいたのですが、やはり同性同士では周囲の目に耐えきれないと、お別れのお話がありました。


 大好きなキャンプもかなり我慢して、あまり好きでもないウインドウショッピングやら、最大限相手側に合わせてお付き合いしていたつもりだったんですけどね。

 そういうこざかしいところが逆に悪かったのかもしれませんけど。



 悔しい。

 私にち○ち○さえあれば。


 すいません取り乱しました。

 やはり百合界にそのような汚ならしいものは不要です。


 私もかつて、男性とのお付き合いをしたことはあるのですよ。正直、全くうまくいきませんでしたけど。

 やはり、女の子の方が、柔らかくて、いい匂いがして、かわいいですからね。


 ち○ち○など不要です。

 無いからこそいいのですよ。



 そうは言ってもやはり、恋人に捨てられた事実は悲しく苦しいので、今日はソロキャンプに来てみました。

 失恋の痛みを忘れ、新たな出会いを探していくためのパワーをつけるために、屋外で豪勢に肉を焼いてかぶりつこうと考えたのです。


 このキャンプ場には、数種類のサイトがあります。あ、サイトとは、キャンプをするスペースのことですね。


 今回は迷うことなくフリーサイトを選択しました。最近は女性のキャンパーさんも増えてますからね。

 あわよくば出会いがあるかも、という意味で、フリーサイトを選んだのです。



 ふむ、何のことやら分からない、という方も多そうですので、仕方ありませんね。

 キャンプサイトの種類について少し説明しますから、一回で覚えて下さいよ。



① 区画サイト

 決まったエリアを貸し切りで使うキャンプスペースのこと。

 自分のエリアが決まっているので、その範囲内であれば気兼ねせず自由に自分の道具を配置したりできる。

 混雑しそうな週末でも、広々のんびりキャンプができる。

 ただし数が決まっているので、予約は取りづらい。そして貸し切りスペースであるがゆえに、料金も少し高めになる。

 区画のサイズによっては、極端に大きいテントなどは使用できない。

 周りの人の区画には立ち入らないのがマナー。挨拶くらいはするけど。


② フリーサイト

 広大なキャンプエリアの中で、自分で好きな場所を選んで過ごしていいスペースのこと。

 予約システムがないキャンプ場は基本的にこれ。お値段も安い。

 見晴らしのいい場所を好きに選んだり、どでかいテントを張ってみたり、マナーが良さそうな人達の近くを選んでテントを張るなど、とにかく自由で選択肢が多い。

 が、いい感じのスペースにテントを張っても、後からマナーの悪い大集団キャンパーが近くに来たり、空いているのになぜか自分に異様に近い場所にテントを張る不審なキャンパーが現れたり、運次第では悲しい思いをする。

 空いている日は基本的に天国だが、行楽シーズンは大量のキャンパーでごったがえし、地獄の難民キャンプと化すのでオススメしない。


③ ソロ用サイト

 区画サイトの仲間だが、比較的狭い一人用のスペース。その分値段を下げてある。

 狭さゆえに、使えるテントなどのサイズがかなり制限される。

 隠れたメリットとして、周りもソロキャンパーしかいないので、マナー違反のうるさい集団に囲まれることがない。

 ちなみにこの種類のサイトを美少女が使用している確率は天文学的なレベルで低い。おじさん率が圧倒的に高い。

 

④ バイク用サイト

 バイクで入れるソロ用スペース。

 愛するバイクを横に置いてキャンプができるという、バイク好きにはたまらない環境。

 バイクを持たない人は基本的に使わせてもらえない。


⑤ オートサイト

 車を横付けして駐車しておけるキャンプスペースのこと。比較的お値段高め。

 荷物は車から下ろすだけなので、運搬が非常に楽で、重装備のおしゃれキャンパーさんが特に好む。

 例えば車の荷台を飾って道具を並べたり、車を活かしたキャンプもできる。

 車中泊キャンプをする方はそもそも、このオートサイトしか選択肢が無いに等しい。

 大抵は一台分の駐車スペース付き区画サイトになっているが、フリーサイトで車オッケーという場合も。

 この場合、自分のテントの正面にでかい車を停めらて景色が遮られると殺意がわいてしまう。


⑥ 電源サイト

 なんと屋外なのにコンセントがあり、電化製品が使えるキャンプスペース。

 携帯の充電、扇風機や暖房器具、照明まで、家庭用の電気製品を使って快適なキャンプが可能。

 ただし大抵は電力に制限があり、ホットプレートやドライヤー、電気ヒーターなどを使うとブレーカーが落ち、他のキャンパーに大迷惑。道具が不十分な初心者向きサイトではあるのだが、きちんと電化製品の消費電力などを調べておける、賢い人以外は使うべきではない。

 コンセントからの延長コードは自分で用意する必要がある。忘れたら悲惨。

 便利な分、非常にお値段が高い。ビジネスホテルに余裕で泊まれるような価格のキャンプ場も多い。



 以上。


 今回私は、一番自由なフリーサイトを使います。

 フリーサイトなら場所が選べますから、かわいい女の子を見つけたら、その近くでキャンプができる可能性もゼロではないですからね。


 で、うろちょろとエリアをひとまわりして周りの人たちをチェックし、いかにも女性らしい、かわいい感じの道具を並べている方の近くにテントを張ってみたのですが、なんと男連れのカップルだったようで。


 人のいちゃいちゃキャンプを見ていると、よけいに心が荒みますね。


 むなしい。

 神聖なキャンプ場で、穢れた欲望を抱えて出会いを求めた私が愚かだったのでしょう。


 こうなったらやけ食いですね。

 肉を贅沢にもりもり食べてやりますからね。



 ……しかしそんな愚かな私にも奇跡が起きました。


 キャンプ用の椅子に座ったまま、うなだれてため息をついていると、横から美しい声が聞こえたのです。


「あのー……こんにちは。すいません、混雑しててあんまりスペースが無くて。わたしソロなのでうるさくしませんから、すぐ近くにテント張らせてもらってもいいですか?」


 ……天使。


 一発で恋に落ちました。


 もちろん、どうぞどうぞ、なるべく近くにいらっしゃいませ。


 きちんと声かけしてくれる混雑時のマナーも100点。

 透き通った声も超タイプです。

 好き。この子めっちゃ好き。


 今回はフリーサイトにして良かった。大正解。


 実はキャンプ場のフリーサイトでは、女の子は女の子の近くにテントを張りたがる、という特性があります。

 家族キャンパーやカップルキャンパーの周りも狙い目です。

 女性だけでのキャンプの場合、とにかく周りのおじさんキャンパーからの好奇の視線を避けたいのです。

 美少女だと気づかれたら、変に声をかけてくる嫌なおじさんもいるんですよ。いや狙われたら本当に怖いし気持ち悪いんですから。



 さて、横目で見ているとその子は、とても手際よくテントを張り、よく使い込まれた道具を手早く広げていきます。

 かわいい顔しといて、何なら私より腕がいいかも。

 惚れた。惚れましたよこれは。


 私はすでに取り出しはじめていた、過剰な量のお肉をなに食わぬ顔でクーラーボックスに戻しました。

 大食い肉食女だと思われたら台無しですからね。


 私の頭の中ではすでに、将来その子とキャッキャウフフと二人キャンプをする自分の幸せな姿が広がっています。

 なんとか、なんとかお近づきになりたいものです。


 しかしキャンプ場では、周りの方に過剰に声をかけないのもマナーの一つ。

 さてどう攻めたものか。


 したなめずりをしながら見ていると、その子がふいにこちらを向いて、目が合ってしまいました。

 ふんわりした表情で、こちらにペコりと頭を下げてくれます。


 かわいい。

 控えめに言って天使。ペロペロしたい。



 チャンスは明日の朝まで。

 なんとか、なんとか連絡先の交換ができたらいいのですけど。


 とりあえず機会をうかがいつつ、よこしまな気持ちでぼんやりとコーヒーを淹れていたら、迂闊にもお湯を手にこぼしてしまいました。


 うわああああっっつうい!!


 最悪です。この私としたことが、あまりにもダサい。

 しかも座っていたアウトドア用の椅子が少し不安定だったので、そのまま横倒しに倒れてしまいました。


 ……ダサい。ダサすぎです。穴があったら入りたい。


 ちょっと半泣きになりながら体を起こすと、また透き通った天使の声が、私のすぐ近くから聞こえました。


「だ、大丈夫ですか? 火傷、痕にならないように、良かったらこれで冷やしてください」


 その子が差し出してくれた保冷剤を、ほとんど放心状態で受け取りつつ、私の口は勝手に言葉を発していました。


「あの、好きです。私、あなたに一目惚れしてしまいました」


 その時の、その子の驚いた表情ったら。


 その顔が次に、優しい笑顔になるか、困ったような曇り顔になるか、嫌悪をはっきり表情に出すのか、これが私の運命の別れ道になりそうです。

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