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2. 後輩ちゃん美少女で学ぶテントのサイズ

「すいません先輩、お待たせでーす!」


 ずっと憧れていた先輩が車を買ったと聞きつけて、早速キャンプに誘ってみたら、なんとなんと、すんなりオッケーのお返事。

 このチャンス、絶対ものにしなければ。


 しかもなんと、二人っきりでお泊まりキャンプということで、ちょっと準備を張り切りすぎて、待ち合わせに2分遅刻しちゃいました。


「ちょっと先輩! たった2分なんですから、許してくださいってば。先輩のために色々準備してたから遅くなったんすよ? ……厳しいなあもう。……はーい、今度からは気をつけまーす」


 先輩の買ったばかりの新車。ピカピカな新車のボディにうつるのは、栗色でショートカットの髪がきらめく、いかにも陽キャといった、はつらつとした表情の後輩キャラ美少女。


 そう、わたしです。


 なろう界隈では最近話題の美少女作家、くもくもと申します。まあ、よろしくね。


 

「いやあ、先輩が車買うなんて、びっくりしましたよ。どうせ、かわいい後輩を乗せてデートがしたかったんでしょ? 今回はわたしから誘ってあげたんですから、感謝して欲しいっすね!」


 車を走らせはじめた先輩の横顔を見ていると、胸が苦しくなるくらいドキドキしてしまうから、わたしはこんな軽口を叩くことしかできない。


 先輩はいつもわたしには優しいし、仲良しだという自負はあるけれど、わたしのことをちゃんと異性として見てくれているだろうか。


 いや、このキャンプを通じて必ず、恋愛対象としてわたしを意識させてみせる。

 そしてあわよくば、一気に勝負を決めてみせるぞ。


 気合い万全なわたしを乗せて、先輩の運転する車はどんどん進んでいく。

 助手席の窓から吹き込む風が心地いい。

 しかもこれがキャンプ場に向かうドライブなのだから、幸せ倍増ってもんです。


 今日は先輩も、わたしと同じようにキャンプを楽しんでくれたらいいな。


 ドライブデート中のわたしと先輩のとりとめもない会話は、だんだんこの後のキャンプの話に移ってきた。


「え? わたしが持ってきた道具っすか? そりゃ、キャンプ童貞の先輩のために、しっかり一式準備してきましたよ。二人用のテントでしょ、大きめのテーブルとかも。椅子も二つ持ってきましたし、食べ物飲み物もどっさりクーラーボックスに入れてます」



 さて……読者の諸君、このわたしの言葉に潜んでいる策略について、お分かりいただけただろうか?

 

 では、もう一度。



「…………先輩のために、しっかり一式準備してきましたよ。二人用のテントでしょ、



 では、もう一度。



「…………二人用のテントでしょ、



 二人用のテント。

 ここに、肉食系美少女でもあるわたしが仕掛けた罠があるんです。


 というわけで、キャンプ童貞の先輩はまだ気づいていない、販売元が公称しているテントのサイズ感について以下に説明するので、通販サイトなんかでテントを選ぶ際の参考にしてください。



① 一人用テント

 徒歩でキャンプに行く人が好みがちな、最も小型のテント。小さくて生地の量も少ないから、比較的安価。そして軽い。

 寝るときの平面スペースは、まさに棺桶そのもの。極端にふくよかな方にはオススメできないサイズ感。


② 二人用テント

 二人用とは名ばかりの、どう見ても一人用サイズのテント。ある意味詐欺だろう。

 カップルで抱きしめあえばギリギリ二人でも寝れそうだが、それでもかなり無理がある。男女ペアなら間違いなく一線を越えてしまう。

 一人でゆったり眠りつつ、雨に濡らしたくない荷物を少しは収容できる、という使い方をすべきサイズ。

 おじさん二人で使うと地獄絵図。


③ 三人用テント

 まだ二人で寝るには若干厳しいサイズ感。

 広々と一人で使うのが正解。スペースに余裕があるため、着替えなどもしやすい。

 お父さんがまだ小さい息子さんと親子で使うにはちょうどいいサイズ。実質は1.5人用。


④ 四人用テント

 無難に二人で使える。三人では厳しい。



 と、いうわけっす。

 公称の使用人数マイナス1か2が本当の適正人数、で考えるといいみたいっすね。

 わたしとしては公称の二分の一、くらいに考えるのが正解だと思ってます。

 もっと大きいサイズのテントでも、考え方は同じっすよ。


 テントの種類とか、生地の種類だとか、そういった色々な違いは、また今度、別の美少女が教えてくれると思うっす。

 ただその辺の違いは全部好みの問題なんで、とにもかくにも早くテントが欲しい! って人は、とりあえずこのサイズ感の話だけはしっかり把握しておけばいいんじゃないですかね。


 ちょっと脱線しましたけど、まあつまり先輩は今回、二人で使うには狭すぎる二人用テントで、この美少女すぎる後輩とぎゅうぎゅうに密着して夜を過ごすことになるってわけです。


 当然、何も起こらないはずがなく……へへ、最高じゃないっすか。


「え? 何ニヤニヤしてるんだって? ……ふふ、なんでもないっすよ。それは夜のお楽しみっす」


 運転を続ける先輩の表情は、わたしに軽口を叩かれながらも、どこか明るい。

 天気もいいし、今日は、人生最高のキャンプになるかもね。

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