18. エピローグ
あれから1年が過ぎた。
僕はヴェリーニ領の屋敷でディアンドラと義父母と一緒に暮らしている。
義両親との関係も良好だ。
ヴェリーニ子爵は過去のトラウマからいまだにきゅうりが食べられない。
王都ともマメに行き来しているが鉄道が開通したらもっと楽になるだろう。
ヴェリーニ領は今空前の建設ラッシュだ。
鉄道と港が出来るのはまだ何年も先だが、商店や飲食店が続々とオープンしている。
新鮮な海鮮を使ったレストランは早くも話題を呼んでいる。
来月にはカルマン百貨店の2号店も出来る予定だ。
番頭はこちらに来る気満々だ。
前職が盗賊……だったかどうかはわからないが、職を求める人が続々とヴェリーニ領に入って来ている。
そう言う人たちの住宅や商店なども今急ピッチで建設されている。
畑も、土壌が健康になったせいか収穫量が激増し、みんな一安心だ。
人を雇って畑を任せ、自分はビジネスを始める領民も現れた。
以前から思ってたけど、やはりディアンドラは仕事に向いている。
領主としての業務の他に、いくつも新しいビジネスを立ち上げ、精力的に働いている。
1年後にはこの国初の共学の教育機関が設立されるはずだ。
外ではバリバリ働いているが、家では前にも増して甘えん坊になった。
このギャップがいいんだ。最高にそそられる。
僕の五箇条は健在だが、ディアンドラの五箇条は完全に過去のものとなった。
よく笑い、よく泣き、よく甘える今の彼女が愛しい。
可愛さと色気、両方がパワーアップしたディアンドラはもはや無敵だ。
酔っ払った時なんかもう……あまりの可愛さに息が止まりかけた。
絶対に他の男性には見せないけどね、あの姿。
恥ずかしながら、生まれて初めて完全に理性を失うという体験をしたよ。
最低だな僕は。
そんな僕を見たランバルド伯爵夫人が
「ロバートを骨抜きにするなんて、一体ディアンドラはどんな手練手管を使ったのかしら」
などと言ったものだから、王都ではディアンドラが床上手だと言う噂が立っている。
王都を離れて正解だった。あんなところに可愛いディアンドラを置いておけない。
僕とディアンドラの間の『タイム』は今でも健在だ。
使い方はだいぶ変わったけど。
今は……その…夫婦の営みの中で‥ね。
ディアンドラがヘトヘトになって「もう無理。タイム!」ってコールされてしまうんだ。
ごめんね、愛してるよディアンドラ。
徐々に持久力つけて行こうね。
そんなわけで僕たちは毎日最高に幸せだ。
もし君が
海鮮(特に貝類)が大好物で
新しい物好きで
ビジネスで一攫千金狙いたかったり、
仕事で正しく評価されていなかったり、
古い因習やしきたりに息苦しさを感じていたりしたらーー
是非ヴェリーニ領に
ーーおいで。
……きゅうりは売ってないけど…ね。
完




