The final eternal 1
1908年。雨のバッキンガム宮殿。
馬車溜まりで来客を迎える侍従長を、感嘆の表情で見守るガード達。
「...」
馬車のドアを開ける侍従長を労うジョージ。
「すまないね、ミック。」
「お久しぶりですジョージ。姫様がお待ちかねですよ。」
囁き合うガード達。
「侍従長が一介のナイトを出迎えるなんて...」
「さ、こちらです。」
宮殿内を侍従長の案内でヴィクトリア王女の私室へ向かうジョージ。
「憶えてるって。」
囁き合うガード達。
「姫様が直接、来客を私室に招くなんて...」
「やっぱり、スチュワート卿は特別なんだよ...」
「よろしいですか、ヴィクトリア様。スチュワート卿をお連れしました。」
ヴィクトリアの執務室のドアをノックする侍従長。
「どうぞ。」
ヴィクトリアの肩越し、ドアを押し開ける侍従長。
「失礼します。」
ヴィクトリアの肩越し、ドアを開けている侍従長。
「...」
「で、スチュワート卿は?」
慌てて周囲を見渡す侍従長。
「?」
ドアの影から顔を出すジョージ。
「な...」
「久しぶりだね、トリア。お招きいただき光栄です。」
ヴィクトリアの肩越し、執務机の前の椅子に腰を掛けるジョージ。
背後で不満げな表情の従事長。
「お元気そうで何よりです。」
「姫様こそ、変わらずお美しい。」
「...」
愛想笑いのヴィクトリア。
「ほほ、そうお思いなら、もらってくださいな。このおばさんを?」
愛想笑いで返すジョージ。
「今日はお見合いとかではないのでしょう?」
「ええ、あなたに、また、お願いしたいことがありますの。」
頭の後ろで手を組み、不満げにふんぞり返るジョージ。
「また、ですか?」
「毎度、貴女のご依頼はキツイので身が持たないのですが...」
執務机越しに身を乗り出し、甘えた表情で迫るヴィクトリアに呆れるジョージ。
「そう言わないで、あと、ちょっとだけ、ね?」
「はあ...」
ヴィクトリアの囁きに顔色を変えるジョージ。
「FSプラン...」
「...」
「もう耳にされてるでしょう?」
「ああ、チャーチル卿から、さわりだけは...」
面倒臭そうに返答するジョージ。
「そのためにあの方を英国で保護しなくてはなりません。」
「保護、ですか?」
4
複雑な表情で答えるジョージ。
「委細承知しました。しかし...」
「しかし?」
「お話の内容では私だけでは手に余るかと...」
「では...」
席を立つジョージ。
「はい。」
「行方はご存知か?」
「スコットランドヤードより報告は受けております。」
退室しようとするジョージに、陰を感じて呼び止めるヴィクトリア。
「え、あ、待って、ジョージ?」
立ち止まりヴィクトリアを気遣うジョージ。
「え、なにか?」
「え、い、いや...」
「心配しなさんな。また、次の...」
「あ、いや。また、会いましょう。」
何かを悟ったような表情でジョージを見送るヴィクトリア。
「...」
5
ダブリン。
プロテスタントの教会。
修道女姿で子供たちの相手をしているアン。
遠巻きに彼女を見つめるジョージに気付くアン。
歩み寄るジョージを睨みつけるアン。
「まさか『蛇』が主にお仕えしているとはな。」
「あんたの『楔』のおかげでね。」
ジョージの言葉に背を向けるアン。
「また、頼みたいことがあるんだが...」
「嫌。」
アンの肩に手をかけるジョージ。
「アン...」
観念した表情で振り返り、ジョージの手に手を添えるアン。
「...」