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5%の冷やした砂糖水  作者: 煙 うみ
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7.4 吐露

山本拓也は更に言い募る。



「だって、悠馬が俺のこと大切なんだったら、俺が情けない姿とか見たくないだろ!


不幸せにしてるの見てるぐらいだったら、いっそもう居ないって嘘ついてくれた方がいいだろ!


障害者の恋人支えるなんて綺麗事じゃねえか、結局現実問題として可哀想だろ?!


向こうにも向こうの人生あるんだからさ!」



「違いますよ。」



()の死をまた思い出す。痛く鮮明に。



葬式も何もかも知らないところで終わっていて、


親族の心の整理がつくまでと、まだ線香を手向けにも行けていない。



知れたことは後悔していない。


お別れを言えなかったことが悲しかった。



大切なひとって、死ぬ瞬間まで大切で、この目で死を見届けたいと思うから大切なんじゃないのか。


家族になりたいのって、究極には、そのひとの最期に手を握っているのが自分でありたいと心から願うからなんじゃないのか。


お前は家族じゃない、って拒絶されるときの悔しさが、あなたが悠馬さんに遺したかった最後の感情だというのか。



「人の精神ぶち壊しといて何ぐだぐだ言ってんですか?!


事故が大変だったのはわかりますけどそれとこれとは別なんで!


私、病室も寺も憂鬱なもんは全部大っっ嫌いで足も踏み入れたくないですけど、


大切なひとのだったら入院だって葬式だってなんだって飛んで行きますよ?!


最後の最後まで関わりたいもんなんですよ、それって変ですか?!?!可哀想って言われちゃうんですか?!」



私はいつのまにか地面に膝をつき、山本拓也のダウンジャケットの胸ぐらを掴んでいた。



「いい加減腹括ってください!別れるなら勝手に別れればいい!


でもこれだけは覚えといてください、恋愛でヒトは死ねるんだよ、


あとこれ以上ERに来るODアル(ちゅう)リスカ患者増やすんじゃねぇ、


私たちの仕事も増えるだろうが!!!!!」




浮かんだ涙で歪んだ視界に、山本拓也の驚いた顔だけが像を結んでいる。



冷えて凝り固まっていた感情がどろどろと融けて流れ出していく。



あぁ、このひとみたいに片足無い男の子に本気で惚れたこともあったっけな、と血が上った頭でぼんやりと思い出す。


だから私いま怒ってんのか。




ーーーどうして居なくなったのかもわからずに、大切なひとの人生からはじき出される辛さが、


お前にわかってたまるか。

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