6.1 吐息
1年前。私が地元の友達の訃報を受けたのは、別の友達からの電話だった。
「時間に余裕のあるときに電話したいから教えて」
小学校の同級生からの個人メッセージはどこか切迫していて、
既に投げられていた1件の不在着信に、不吉な予感で心拍数が跳ね上がったのを覚えている。
たわいのない内容についてこんなことはしないだろうと思った。
それほど頻繁に会っていたわけではないにしても、私たちは長い間ずっと仲が良く、1つ前の季節に皆で集まったばかりだったし、
彼がもうこの世にいないなんて、報される瞬間まで私は全く思っていなかった。
一方で、連絡をしてきた同級生と私との間に、共有すべき最も悪いニュースがあるとしたら、
それは彼のことなのだろうという根拠のない確信だけが、思考の上にうっすらと膜を張っていた。
「・・・落ち着いて聞いて。伊吹が死んだ。おそらく、・・・こんなの信じたくないけど、ほぼ100%、自殺だろうって・・・。」
なんで、と聞き返した。
なんで、死んだの。ってまず聞きたかったのに。情報量が多いよ。
「理由は・・・わからない、ってさ・・・」
電話越しの声が、電波のせいか半泣きのせいか、酷く震えてがさがさとしていた。
そうか、わからないのか、と思った。
私たちは一生、理由のわからない死を抱えて生きていくことになったのか、と。
あの電話を折り返した夜から数日間の記憶は、混沌と溶け合っている。
覚えていても仕方ないというのに、今でもたまに、あの夜の夢を見る。