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第三十一話 エビルゴースト現る

 骸骨将軍(スケルトンジェネラル)は何とか倒し終えた。

 正直、私は最初に罠にはまってからほとんど何もしていなかったから協力した感じはない。

 そのことをみんなに謝ったけれど、コウヘイさんもアカリさんもそれほど気にしていない様子だった。


「モモカさんがリョウコちゃんのスキル使ってくれて作戦考えてくれてなかったら、コウヘイさん逃げ帰ってましたからね!」


 アカリさんがそう言っている。


「そうですよ。俺は完全にあの時諦めかけてましたから。今こうして骸骨将軍(スケルトンジェネラル)を倒せたのはモモカさんのおかげです」


 コウヘイさんもそう言ってくれる。

 私としては、ただ迷惑をかけた分、取り換えしたかっただけだから、感謝されるようなことではないのだけれど、二人の優しさは受け取っておきたい。

 それに、これからがまだまだ大変なんだ。


「実際、次の階層がどうなっているのかは全く分かりませんからね……」


 そう。カイルはエビルゴーストが10階層にはいると言っていたけれど、まだ真偽を確かめたわけではない。実際にエビルゴーストが存在しているのかどうかは行ってみて確かめるしかない。


骸骨将軍(スケルトンジェネラル)たちには知性があったからすぐに戦闘というわけにはなりませんでしたけど、次はうまくいくとは限りません。しっかりと準備は考えておいた方がいいと思います」


 私はそう提案する。

 正直、私もほとんど何の情報も持っていない相手だ。10階層にたどり着いた瞬間に奇襲を仕掛けられて全滅ということにならないとも限らない。


「そうですね……。実際、どうするのがモモカさんはいいと思いますか?」


「結局、本当にエビルゴーストが10階層にいた場合、リョウコちゃんのスキル頼りになるのは間違いありません。さっきのは攻撃するものではなかったから魔力の消費が抑えられてましたけど、攻撃魔法となると話は違うかもしれません。だから、10階層に言った瞬間に魔法を使うことを考慮に入れて進んだ方がいいと思うんです」


 そう言って私はリョウコちゃんの方を見る。

 彼女は今の状況が分かっているのか分かっていないのか判別できない。

 ずっと村から出ないで生活していたからだろう。年齢以上に幼い子だ。自分がこれから求められている役割を認識できているのかどうか不安がある。


「ボクはやれます。魔物がいたらボクの魔法で攻撃すればいいんですよね?」


 間違った認識というわけではない。簡単に言ったらそういうことだ。ただ、実際は威力の調整ができるのであれば自分でやる方法を考えてほしいとも思う。

 ただ、恐らくそれは難しいのだろう。

 そもそも私だって『守護者(ガーディアン)』の範囲を変えることはできない。

 スキルに関して彼女の意思でどうにかなるものではない可能性が高い。

 しかも、その場で思いついた魔法を使うということだから、こちらも事前に準備しておくわけにはいかない。


「じゃあ、とりあえず『平均化』を使いながら下に降りて、魔物を発見し次第リョウコに魔法を使ってもらうって感じですかね?」


 コウヘイさんが私にそう尋ねてくる。

 その言葉に私はうなずくしかない。準備を考えようと提案しておいて申し訳ない限りだけれど、本当に今回はそれぐらいしか思いつかない。

 そもそも敵がどこにいるのか、10階層がどんな様子なのかもわからない。そもそもダンジョン探索というのはそういうものだ。今、エビルゴーストがいるらしいということが分かっているだけでもありがたいんだ。


「とりあえず行ってみましょうよ。立ち位置は……リョウコが前ですかね?」


「そうするしかないでしょうね……。リョウコちゃんの話を聞く限りではかなりの威力の範囲攻撃が使われるみたいですし、私たちがいることで被害を被ったら意味がない」


「10階層では私はお休みですか?つまんないなぁ」


 アカリさんは相変わらずみたいだ。この段階でつまらないという言葉が出てくるのは私のなかでは想像がつかない。

 冒険が本当に好きなんだろうな。

 私は流れでこうしているけれど、実際、このダンジョン踏破が終わってからこの三人とパーティーとしてうまくやっていけるのだろうか。不安がないと言えばうそになる。


「モモカさん、大丈夫ですか?」


「あ、はい。大丈夫です。行きましょう」


 こんなところで考えこむ内容じゃなかった。私も緊張感がなくなってきてるな。

 私は気合を入れ直して10階層に向かうことにした。



 ……今までとは明らかに様子が違うということだけは10階層の階段の前でよく分かった。

 瘴気とでも言うんだろうか、何か暗い雰囲気が出ている。

 骸骨(スケルトン)たちだって明るい雰囲気があるわけじゃなかった。だけど、この場で伝わってくる雰囲気はそんなものじゃない。


「これは……間違いなく強い敵がいますね……」


 コウヘイさんも同じことを感じ取っているようだ。

 いや、コウヘイさんだけじゃない。アカリさんも顔色が変わっているし、更に様子がおかしいのはリョウコちゃんだ。

 さっきからずっと私の腕をつかんだまま動こうとしてくれない。


「モモカさん……」


 リョウコちゃんが不安そうに私の顔を見つめてくる。明らかに怯えた顔だ。


「大丈夫。私がいれば怪我することはないから。行きましょう」


 私はそう言ってリョウコちゃんに前に行くように促す。

 もしかしたら、ここは退いた方が得策なのかもしれない。

 だけど、ここで退いてしまったらこの怪しい雰囲気を漂わせている10階層の主がもっと邸階層にまでやってくるかもしれない。

 カイルは自分たちがいるからエビルゴーストは10階層に留まっているというようなことを言っていた。ここは前に進むしかない。この場には私たちしかいないんだから。

 リョウコちゃんは私の言葉に一度うなずくと、ゆっくりと足を進めていく。


 10階層にたどり着くと、正面に一本の道があった。この先がこのダンジョンの最奥部のはずだ。そこにエビルゴーストはいるんだろう。さっき以上に瘴気が強くなっているのが分かる。

 私たちは何も言葉をかわさずにゆっくりと歩みを進める。

 そして、次の部屋にたどり着いた瞬間。


「ぎゃあぁぁぁ」


 奇妙な声と共に、黒い塊が私たちの方に向かってくる。

 これがエビルゴーストだろう。

 私はすぐにスキルを発動させる。どういった攻撃を仕掛けてくるのかは分からないけれど、私のスキルであれば問題はないだろう。

 そう思っていると突然、目の前が暗くなった。ど、どういうことだろう。


「え?なんで?前が見えない!」


 アカリさんの声だけが聞こえる。アカリさんも同じ状態のようだ。

 これが敵の攻撃ということだろう。前を見えなくする特技。こうなると、仲間を攻撃してしまう危険性も上がるのは間違いない。

 これでは、リョウコちゃんが魔法を使うっていうのも……。


「え?みんな前が見えないんですか?ボクは大丈夫です」


「俺も前は見えない。大丈夫なのはリョウコだけみたいだな」


 リョウコちゃんは大丈夫なようだ。これもスキルの効果なのかも知れない。

 本当にリョウコちゃんのスキルはまだ未解明なことだらけだ。

 ただ、リョウコちゃんが大丈夫ならよかった。

 これで魔法を使ってもらうことができる。


「じゃあ、リョウコ、敵に向かって魔法を使ってくれ!」


 コウヘイさんがそうリョウコちゃんに声をかける。


「わ、分かりました。敵ってあの黒いのですよね?」


 あのって言われても私たちには今見えていないから分からないのだけれど、さっき一瞬見えたのをふまえるとそれで間違いないだろう。


「おそらく大丈夫です。リョウコちゃん、お願いします」


「は、はい!」


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