表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/15

挙兵


1559年 宇都宮城にて


 広間には宇都宮家家臣のほとんどの家臣が集まり、主君の到来を待っていた。

 厳粛な空気に包まれているそこに、私語を挟む様な愚か者はいない。ただ、静寂が場を支配していた。

 と、そこに一人の男が入って来た。男の右目には大きな傷跡があり過去にくぐり抜けた戦の激しさを物語っている。この傷を見た際に、宇都宮家の家臣団の()()()()は自らの至らなさを悔み、力不足を呪った。

 それだけに、今回の出兵が決まった時奮い立たない者は()()()()()いなかった。そうした、沈黙の中にある確かな闘気、戦意をヒシヒシと感じながら隻眼の男、宇都宮尚綱は口を開いた。


「皆のもの!儂が那須修理(高資)との戦でこの右目を失い10年が経った!あの時儂は奴の利き腕を奪ってやったが、あれ程口惜しい思いをした事はなかった!あれから今日まで儂は奴の事を一度も忘れた事はない!今まで何度も奴の勢力をを策謀で分裂させ、弱め続けて来た!そして遂に、この日が来た!今日こそあの憎き修理大夫(高資)を討ち、奴の息の根を止める!お主ら、早急に支度せい!」



 ここにいる者のほとんどが永らく抱えていた怒り、その想いがこの一声で大きく膨れ上がり、そして爆発した。


「「「「うおおおおおおおおお!!!」」」」


 家臣団の多くが戦意に滾り、奮い立ちながら戦支度に広間を立ち去るなか、幾人かの家臣はそのまま広間に留まっていた。その筆頭に立ち、怒りを通り越して憎しみさえ感じさせる眼で主君を睨みつけるのは壬生綱房。宇都宮家で専横を極め、彼の一存で主君をすげ替える事さえ可能とするほどの権力を手にした人物である。


「……御屋形様、それが何を意味するかお分かりにならないほど愚かではありますまい。それでもまだ、お取り止めになりませんか。」


 綱房は絞り出すようにしてその一言を出す。しかし、尚綱は決意を込めた眼で綱房を見返し、反対に睨みつけながら綱房ら広間に残った家臣に語る。


「ああ。存分に承知している。だが、考えを変えるつもりは無い。既に腹はくくった。儂はこの闘いが終わるまで止まるつもりはない。例えどの様な結果になろうともな。……さあ、お主らも兵を集める必要があろう。早う本領に帰られ、戦に備えられよ。」


 そこまで言われては壬生らも返す言葉も無かった。ほとんどの家臣が呆然として広間を去るなか、ひとり綱房だけがしばらくその場に残り、憎々しげに尚綱を睨みつけていた。




 遂に、綱房(大野心家)との決別の日がやって来た。奴とその援軍としてやって来るであろう北条を迎え撃つために、今まで幾つもの対策をして来た。

 日光山の山伏のうち俗世を忘れられなかった幾人かの山に詳しい者を武士身分として取り立て、彼らと上杉から出張ってもらった忍の才助の指導で北条や綱房を後方から脅かす為のゲリラ戦部隊を創設した。


 また綱房側に加担している宇都宮家被官に内応工作を仕掛け、所領の安堵を条件にこちらに何人かを寝返らせた。

 更に宇都宮家の裏切らないと確信出来る重臣の数名を綱房側に送り、来る決戦の際に寝返らせた被官とともに綱房を攻撃させる事にした。


 後は一年前に上杉とも同盟を結んだ。これだけ色々仕掛けたのだ。きっと綱房にも、北条にも勝てる筈だ。ここまで来たのだから、とことん最後までやるしかない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ