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学園祭
喧騒のせいで君の声を忘れた。耳を澄ましたところで君の声は聞こえない。聞こえたとして、それは幻聴だ。
学年カラーの赤と学級カラーの青で作られたミサンガに目をやる。これを渡すことは告白と同じ意味を持つ。そして、渡さなかった、あるいは渡せなかった場合は、キャンプファイヤーの時に燃やす。ぼくの学校にはそういう風習がある。
燃え盛る炎へミサンガを入れる人たちと、その光景を遠くから眺める人たち。ぼくは前者だ。空に渡せなかったミサンガを手のひらに乗せてみる。しかし、ぼくはミサンガを燃やすことはできなかった。気持ちすらも灰になってしまいそうで怖かったからだ。
七夕の願い事は叶わなかったらしく、空は切ない表情でミサンガを火の中へ投げた。
でも、臆病なぼくは何かが起きそうな次のページを破れないようポケットにしまった。くだらない日常ですら変わって行くというのに、ぼくは何かに怯えて立ち竦んだ。




