表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/21

10「魔王の下部 魔人幹部ザリチェ登場」


 

 5匹の魔獣をあっという間倒してしまった小野先輩は強い。

 彼女は強すぎる僕は思い、唖然としてしまった。



「おう、遅かったな。だが感謝しろ、最後のはマサキのために取っておいたからな」

「え―っと、……はい?」


 予期せぬ先輩の発言に、僕は一瞬戸惑ってしまった。


「残りの一匹だ。複数相手にするよりはマシだろう?」

「いやいや。とてもじゃ無いけど、僕には荷が重すぎます。残り一匹って言ったって……出来れば遠慮したいですけど……」

「フフッ。このアタシが冗談を言うはずなかろう。本気で言っているのだぞ!」


 この時、間違いなく僕の顔は引きつっていたはずだ。


「多分アタシの相手は、こいつじゃないと思うからな」


 どうゆこと?


 集落の男達は、先程まで氷塊攻撃を続けていたらしいのだが、今は止めていた。

 彼女の邪魔をしない様にしているのと、すでに全員の魔力が尽きてしまったようだった。


 今は、先輩と魔獣が睨み合い膠着状態。


 先の戦いを見て、魔獣が警戒していると言ったところだ。


 だがそれも長くは続かなかった。


 先輩は何かに気付いたのだろう、視線を魔獣の後方に移し、表情を強張らせた。



「フッ! こんな魔獣ごときに、あの爺がやられるとは思っていなかったよ。どうやら貴様の仕業だったか」

「…………」

「そんな所に隠れていないで、出てきてもらおうか!」



 僕は先輩が睨んでいる方向を目で追った。奥から小さく笑い声が聞こえる。


 魔獣の後方の茂みから、ゆっくりと人の影が現れた。

 先輩の発言はそういう事だったのか。


「いやいや、これはこれは、女性なのに大変お強い方のようですね」


 黒い衣装に身を包み、ひょろりとやせ細った男。その表情は狂気に満ちていた。


「私は、この土地を支配する神の下部『ザリチェ』です。以後お見知りおきを」


 口の端を釣り上げ、ザリチェは紳士的にお辞儀をした。



「アタシは小野イズミ、今年から生徒会長を仰せつかった。困ったことがあったら何でも相談してくれ」

「いや先輩! 相談とか今それ必要無いでしょ。あ、俺は北澤マサキです。この人の後輩です」


 ザリチェの挨拶を受けて、僕たちも律儀に自己紹介した。


「クククク、いいですねぇ。お二人ともちゃんと躾られているご様子ですね。関心関心」


 ザリチェは魔獣の横に立ち、その首元をなで始めた。


「実は私、あなた方に用があってこちらに参りました。あなた方を探し出そうと、少々手荒なまねをしてしまいましたが、結果お会いできて良かった」

「ほう、やはりこのアタシに相談をしにきたのだな!」

「先輩! そんなわけないでしょ」


 何故この場面で天然かます?


「やいザリチェ! 集落を襲っておいて、どういうつもりなんだ!」


 気が付けば僕がザリチェと会話をしていた。


「私としても、出来れば無駄な折衝をしたくはありません。ただ残念な事に、先程ウチの飼い犬が5匹も亡くなってしまいました。けれど、そちらの余命幾許も無いご老人があの怪我でいらっしゃいます。おとなしくして頂ければ、双方お相子という形で今回は目をつぶりましょう」

「な! それはどういう意味だ」

「あなた方二人、私に捕まって頂ければこの場は納めようと思いまして。いかがです?」


 ザリチェはどう見積もっても悪党にしか見えない。場の収束のため彼に従った所で、どうせ殺されるのがオチだろう。


 先輩は僕に耳打ちをしてきた。


「マサキはあの犬コロを頼む、アタシはガリ男をヤル」

「ちょ、待って下さい! あんな気持ち悪い大きな犬と戦った事ないですよ」

「大丈夫だ、今の自分の力を信じろ」


 いや、だから実戦経験ないんですけど。


「おやおや、作戦会議ですか? 実を申し上げると、あまり時間の猶予はありません。しかしながら、ここは大事な決断をする場面です。お決まりになるまでどうぞ」


 ザリチェさん、待っててくれるのね。


「いや、大丈夫だ。先程の貴様の話は、お断りしよう!」


 先輩はきっぱりと断言した。ここは僕のために、もうちょっと時間掛けましょうよ。

 彼女の答えを聞いたザリチェの表情に再び狂気が走っていた。


「では仕方ありません。その決断、後悔させてあげましょう!」



 ザリチェの合図と同時に、魔獣が僕に向かって突進してきた。


 僕はその場で戦槌を構えるが、武器使用での戦いは初めて。全く様になっていなかった。


「折角、魔法の世界に来たんだから、せめて初戦はスライム辺りから戦いたかったでスッ!」

「泣き言を言うな! アタシという最強人物とのパーティーを組んでいるのだぞ。その位我慢しろ!!」


 クッ、そうだ! 僕は憧れの先輩と一緒だった!

 しかもその人からパーティー組んでるって言われた。超嬉しい―。


 まあ、明らかに乗せられた感じだったけど。


 よし、ここは腹をくくってカッコいいとこ見せよう!

 先輩の期待に応えられなければ、親衛隊員の名が廃る。

 

 男、北澤マサキとことんやってやりますよ。

 犬コロめ、目に物見せてくれる!



「ええい――!」


 僕の掛け声と同時に、魔獣が襲いかかってきた。



 こうして僕の初陣が始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ