その恋はいつも儚い
武と別れた死神は閻魔のいる部屋へと向かい、その扉をノックをする。
「閻魔様。今、大丈夫ですか?」
「裁判の準備中だが、まあ良いだろう。入りなさい」
「失礼します」
死神は扉を開けて中へと入ると閻魔に一礼する。
「武さんとキスしました」
「……ふむ」
「両思いになったんです。辞表の件、考えて頂けますか?」
「その事だがなーー」
閻魔は言いづらそうに目を伏せると死神にある事を告げる。
「北城武の転生先が決まった」
「え?」
「北城武は転生して新しく産まれ変わる」
「そんな!だって、武さんは永久天国行きだってーー」
「"半"永久的だ。つまり、理論上は終わりがある」
「嫌です!武さんと別れるなんて!」
「気持ちは解るが、これは決定事項だ」
「そんな……せっかく……せっかく、解り会えたのに……」
死神はへたり込むと涙を流す。
「命ある者は終わりを迎え、そして、また新しい命を育む。それが世の理だ」
「でも……でも……」
「何も今すぐ、転生する訳ではない。君に北城武が転生するまでの有休を与える。
今から70年後に遣いの者を出す。それまでは北城武の傍にいてやるが良い」
「……はい」
死神は涙を拭いて鼻を啜ると閻魔に一礼して部屋を後にする。
それを見送って閻魔は溜め息を漏らす。
「やはり、死者と死神の恋は儚いものだ。
どんなに死神が望んでも、あの世に送られた死者はいずれ、新たな生を授かる。勿論、天国の事も地獄の事も全て忘れてな」
閻魔は独り呟くと死神の去っていった扉に視線を移す。
そして、次の死者の裁判に取り掛かる。