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死神とキス


 武は母親を乗せたタクシーが見えなくなって、しばらくすると死神の顔を見る。


 幼さが残るあどけない顔をした赤い髪の少女を……。


 その顔が此方を向くと死神と目が合う。


「……良かったら、部屋に入る?」

「え?武さんの部屋へですか!?」

「うん。この世界についてはまだ解らないし、良かったらだけど」

「は、はい!是非、お願いしまひゅっ!」


 何処か緊張した死神がコクコクと頷くと二人は武の部屋に入る。


「此処が武さんの部屋ですか?」

「うん」


 武は肯定すると二人してベッドに腰掛ける。


「死神の仕事って大変なの?」

「そうですね。生前の行動も記録しなくてはいけないので楽な仕事ではないのは確かです。

 大変と言えば、大変です」

「そう」


 二人はそこで口をつぐむと再度、お互いのを見詰めた。


 死神の瞳は潤み、頬を赤らめている。


 武はそんな死神を見て、いとおしく感じる。


 それは三大欲求から来るものではない。


 故に何処か理論的な思想に基づいた愛し方だったが、死神を好きになって行く事には変わらない。


 そして、二人はキスをした。


 お互いを求める貪る様なディープなものではなく、唇と唇が触れる程度の軽いキスだったが、それでも武の心の何かを満たした。


 それは死神も同じだったのだろうか?


 死神はキスをされて真っ赤になって俯くと手をキスをした唇に触れる。


「……」

「……」


 二人はお互いに黙るとバツが悪そうにそっぽを向く。


「……ありがとうございます」

「え?」

「武さんの思いが伝わりました。私の事、好きになってくれたんですよね?」

「……うん」

「……嬉しい、です」


 死神はそう言うと再び向き直り、再び、その唇にキスをした。


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