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唐突な死と告白

 それは唐突な話であった。


 彼ーー北城武ほうじょう たけしはいつもの様に仕事を終えて、家に帰る途中、車の轢き逃げにあって死亡する。


 何処にでもいる真面目な青年はこの世を旅立つ事となった。


"……ああ。俺、死んだのか"


"そりゃ、そうだよな。あんな猛スピードで来られちゃな"


 真っ暗な世界で魂だけの存在になった武は自分の死を受け入れると浮遊感に身を任せる。


 暗闇に覆われた無の世界で漂いながら武は考える。


"小説やアニメだと女神や天使が現れて、異世界で勇者になったりするんだよな"


"まあ、最近じゃあ、勇者じゃなくてもチートな奴だったり、人間じゃなかったり、色々あるけど……"


"ああ。俺も異世界転生してみてえな"


『武さんは異世界転生に興味があるんですか?』


 そんな事を考えている武の頭上から一人の少女がフワリと現れて、彼に訊ねる。


 赤毛にあどけなさの残る顔に白いドレスを身に纏った美少女である。


"えっと、もしかして女神?それとも天使?"


『あ、はい。部類的には神に当たります』


"え?じゃあ、俺、異世界に転生すんの?マジで?"


 武は嬉しそうに美少女女神に問うと彼女は首を左右に振る。


"あ、違うんだ。じゃあ、この世界で転生すんの?"


 それに対しても彼女は首を左右に振った。


"え?え?じゃあ、もしかして……"


『はい。人間の言葉で言えば、武さんの向かう先はあの世です』


 美少女女神のその言葉に武は愕然とする。


"そんな……二度目の生って言うのを体験したかったのに……"


"そう言えば、君は神だって言ったよね?何の神なの?"


『こんな身なりですが、死神です。冥府より貴方を迎えに来ました』


 その言葉を聞いて、武はまたも愕然とする。


"そんな……死神だなんて……"


『気を落とさないで下さい、武さん。あの世も悪いところじゃないですよ?』


 美少女女神ーーもとい、死神はそう言うと武の魂を引き寄せ、優しく抱き締める。


『……私、ずっと、こうしていたかったんです』


 死神はそう言うと頬を赤らめながら武の顔を見詰めた。


『武さん!好きです!私と付き合って下さい!』


"はい!?"


 突然の申し出に武は困惑する。


 それは当然であろう。それは死んでからすぐのーーあまりにも突然の出来事だったのだから。


『こんな事言われて困られるかも知れませんが私、本気なんです!』


 そう言われて武は頭を掻く。


 生前は女性に恵まれず、仕事三昧だった自分に死してーーしかも死を司る女神に告白されるとは誰も思わないだろう。


 武は返答に困る。


『死後の面倒もちゃんと見ますから!

 武さんが望むのなら私に出来る範囲でなんでもします!お願いです!』


"そうは言われてもなあ……なら、せめて何かに転生させてくれよ?"


『それは私の管轄外なので、どうにも出来ません』


 淡い期待を抱いていた武は死神にきっぱりと言われてへこむ。


『ああ!そんなに落ち込まないで下さい!

 先程も言いましたが、あの世は悪い所じゃありませんから!』


 死神は慌てて武を励ます。武は溜め息を吐くと死神を見詰めた。


"もう良いよ。好きにしてくれ"


『え?じゃ、じゃあ……』


"もうどうにでもしてくれ。彼氏にでもなんでもなってやるから"


『本当ですか!やった!』


 半ば投げやりな言葉だったが、死神は嬉しそうに武に抱き着くと彼を冥府へと誘う。


『それじゃあ、行きましょう。武さんが向かうべき死後の世界へ』


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