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健也の章——伝えたい思いは、ホワイトデーに

今日は、バレンタインデー。

でも、特に用事があるわけでもない。

そもそも今日は、高校一般入試の初日。推薦入試で合格した俺にとっては、ただの休みの日だ。

あーあ、つまんないな。

チョコをくれる人はいないだろうしなぁ……


——遥楓。

その人の顔がふと、浮かんだ。

首を振る。

だめだ、それは俺の願望だ。

遥楓からチョコがほしい——遥楓に、俺のことを好きになってもらいたい——という、願望。

そんな願いを持つ理由は単純。

——遥楓のことが、好きなのだ。


いつも素直で、ころころと変わる表情が好きだ。

人によっては子供っぽいとか思うかもしれないけど、子供っぽいのとは、また違うんだ。

少し高くて、綺麗な声も好きだ。

歌を歌う遥楓の声を聞くと、本当に綺麗で、そんな綺麗な声で声をかけられると、少しどきりとする。

それに、自分をしっかり持っているところも好きだ。

人によっては頑固なだけに見えるかもしれないけど、そうじゃない。他の人の意見を聞いて、取り入れても、自分をしっかり持ち続けられる人なのだ。


不意に、バイブレーションの音がした。

……誰だろう?

スマホを取り上げ、確認する。メールだ。

誰から?

——遥楓からだ。


『差出人:芹沢遥楓

宛先:山崎健也

件名:あいたいな


健也くんへ

突然ごめんね。今時間空いてたりする?

健也くんに会いたいんだ。

だから中学校の正門前に来てほしくて。

待ってます

芹沢遥楓より』


どきりとする。

——遥楓から、チョコをもらえるかも……

そう考えて、すぐ打ち消した。

まだ用件は分からない。中学校の校門前に来てほしいとしか書いていない。でも……

……要件なんてなんでもいい。いくか。

一応、最低限の服装と髪型を整えて、家を出た。


「おーい、待った?」

待たせてはいけない、と思って走ってきたが、遥楓は

「ううん、全然」

と言って笑った。

「どうしたの、急に」

「あ、あのね……これ、あげる」

遥楓は頰を少し赤くして、早口になって喋る。

渡されたのは……チョコと一枚のカード。

「え、いいの?ありがとう!」

正直、とっても嬉しかった。

俺はそう言って、カードを見る。


どくどく、と心臓の音が聞こえる。遥楓に聞かれたらどうしよう、と思ってしまうぐらいに。


『健也くんへ

健也くんのことが好きです。

付き合ってもらえませんか?

芹沢遥楓より』


「——ありがとう」

とっても嬉しかった。

遥楓も、俺のことが好きだったんだ。

とっても嬉しい。でも。

「でもごめん。今は、野球に専念したい」

申し訳ない思いでいっぱいだった。

遥楓はゆるりと首を振る。

「ううん、いいの……野球、頑張ってね」

少し悲しそうに、遥楓は言った。

「またね」

「これ、ありがとね、あとで食べるよ!」

こうして、俺たちはそれぞれ、家に帰った。


「はぁ……」

家に着いた途端、ため息をついてしまった。

遥楓の悲しそうな声と顔が、頭から離れない。


今は野球に専念したい。

それは本当のことだ。

でも、遥楓のことが好きなのも、事実だ。

将来、夢が叶ったら——メジャーリーガーになれたら、好きな人に告白しよう。それまでは恋はしない。

そう決めていたのも、自分だ。

あの時、俺がメジャーリーガーになれたら付き合ってほしい、とか言えればよかったのに、緊張して言えなかったのだ。


もらったチョコを口にする。

それは軽い口当たりのクッキーみたいなものだった。

甘いけど、焦げてしまったのか、ほんのり苦い。

「なんだか、俺の今の気持ちみたいじゃないか」

そう呟いて、決めた。


「ホワイトデーに、遥楓にお返しのチョコをあげよう。その時に、俺は、告白するんだ」

いかがでしたでしょうか?

これは続編を3月14日、ホワイトデーに投稿する予定です!もし興味があれば読んでみてください。

感想、評価等、頂けますと幸いです。

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