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2. いじめ

 

 僕、桜庭類16歳の朝は規則正しく、簡潔なものだ。

 まずは6:30に起床。そして母親が朝食を作り終えるまでNTRもののエロゲーをプレイ。これが基本。

 「なぜ朝にエロゲーをプレイするの?」という疑問の声が上がるかもしれないが、それは僕にとって「なぜ人は瞬きをするの?」レベルの愚問なので答えないでおく。


 今日はあの超名作『君のおち◯ぽってなんらかしらの溝の掃除に使いやすそうだよね』をもう一度プレイし直すつもりだ。

 タイトルからわかるように主人公のおち◯ぽが小さく、ヒロインが満足できないという典型的なNTRゲーなのだが、これまたタイトルからわかるように、そのおち◯ぽの小ささに対するヒロインの例えが秀逸で、いちいち興奮させてくれる。

 僕はパソコンを起動し、しごく順調にプレイを続けた。あ、このしごくっていうのは「至極」であって「シゴく」じゃないからね。勘違いしないでね。まあシゴく時もあるんですが。


 そんなこんなで楽しくプレイしていたのだが、幸せな時間は続かないもので、隣の部屋からの壁ドンで俺の平穏なNTRゲープレイは妨げられた。やれやれ、どうやら妹が起きたらしい。無視してゲームの続きをプレイしたのだが、壁ドンは止むことなく、むしろ増し続けた。

 一体どうしたというの............あっ、イヤホンするの忘れてた。そりゃあ壁ドンしますよね。

 僕は慌ててイヤホンをパソコンのイヤホンジャックにさし、耳にはめようとしたが、その前に一階から「ご飯できたから降りてきなさ〜い」という母親の声が聞こえてきた。

 やれやれ、後もう少しであの名台詞、『君、中出ししようとしてもおち◯ぽ小さすぎて外出しになっちゃうよね。ある意味紳士的っ』が聞けたというのに、非常に残念だ。

 中出ししようとして外出しになっちゃうって。もうそれは男性器が小さいとかそういうレベルの問題ではない気がするのだが。


 一階へと降りリビングに向かうと、父親は既に仕事に出かけたようで、母親と妹がすでに席につき食事をしていた。

 妹は僕を見るなり、「私が食べ終わるまで上いろよ!あんたの顔見ながらご飯食べたらどんなに美味しいご飯でもどぶ飯だよっ!!今朝もあのキモチワリィゲームやりやがってこのくそ兄貴!!!」と俺を罵ってきた。

 やれやれ、確かに僕にも非はあるが流石に言い過ぎじゃないか?見てみろ、母さんの表情を。明らかに僕たちの兄妹仲を心配しているじゃないか。せめて両親の前だけでいいから仲のいいふりができないものか。


「悠人、まだあの気持ち悪いゲームしてるの?お母さん、心配だわ。いい加減やめないとちゃんとした大人になれないわよ?」


 やれやれ、どうやら僕が全て悪いということでかたがつきそうだ。こんな肩身のせまい食卓はさっさと済ませて学校へ向かうとしよう。



 僕の家から僕が通う聖ヶ丘高校までは徒歩で約十分といったところで、この高校を選んだのもその距離の近さが大きい理由だった。

 春には桜並木の桜が綺麗に咲く通学路なのだが、それも散ってしまった今特筆すべきところは何もない退屈な通学路だ。

 この退屈な通学路のために僕が用意したのは NTRもののボイスドラマ『ここまで堕ちたか!あけみちゃん』だ。

 普通のエロゲーやエロ漫画を登校しながら楽しむというのはかなり無茶があるのだが、ボイスドラマなら耳をふさぐだけでOKなので登校中も安心だ。時間も約十分と登校時間にぴったりだ。

 最近はもっぱらこれを聴きながら登校するのが僕の登校スタイルとなっていた。


 『ここまで堕ちたか!あけみちゃん』のおかげで退屈な通学路を乗り切った僕は、自分が所属するクラス、2年E組へと向かい、教室へ入った。

 途端、異変を感じた。

 やけにクラスの視線が集まる。

 決して目立つほうではない僕がこれだけ視線を集めるのはかなり異常だ。何かあったのかとこのクラスでは唯一の友人といえるであろう菊池礼二に視線を送ったのだが、なぜか目をそらされてしまった。

 どうしたんだろうか.......まあいい、とりあえず席に荷物を..........って、あれ?

 窓側の一番後ろにあるはずの僕の机がない。これは一体全体どういうことだろう。

 呆然と立ち尽くす俺の視界の端に、僕の方を見てクスクスと笑う集団があった。

 その集団の中には、僕が昨日告白を断った彼女、城ヶ崎さんもいて、彼女もこちらを見て笑っている。

 ........なるほど、そういうことか。

 参ったな。まさか高二にもなっていじめを受ける羽目になるとは。僕がM体質じゃなかったら泣いているところだ。

 とりあえず代わりの机を用意しなければ。確か、ここからクラス二つ分離れた空き教室に余った机が置いてあったな。早速取りに行くか。


「あら、悠人。どうしたの?机がないようだけれど。ついに自分の猿程度の脳みそじゃ、どれだけ学習しても無意味だということに気づき、机を放棄したのかしら?」


 うわ、こんな時にかなり面倒な相手が登校して来てしまった。

 このいかにもお嬢様丸出しの喋り方で実際お嬢様の神楽坂加恋は、ある出来事をきっかけに俺のことを随分嫌っている。いじめに加担するタイプではないが、この状況で話したい相手ではない。


「......まあ、そんなところだ」

「あら、随分粛々としているわね。いつもの憎たらしい態度はどうしたのかしら?」


 神楽坂は憎たらしい笑みを顔中に浮かべながら言った。ぐぬぬ、こいつ、僕の置かれている状況を理解しているな。まあ、机のないこの状況を見たら、誰だって僕がいじめにあってると判断できるか。


 それからもうっとおしい絡みをしてくる神楽坂をなんとかかわして、空き教室から机を運んで来た時にはすでに授業は始まっており、先生の追求をこれまたなんとかかわして、やっとこさ着席することができた。

 いやしかし、この状況は非常に困る。 

 僕は何としてもJKと付き合いたいのだ。もちろん絶対に寝取られないJKと、だ。

 あと約2年すれば僕は高校を卒業し、順調に行けば大学生となる。そうなってしまえばJKと付き合える確率はぐっと減ってしまう。

 万が一JKと付き合えたとしても、そのJKが『絶対に寝取られないJK』である確率は非常に低いと言えるだろう。

 これはあくまで俺の考えだが、同じ高校生でなくわざわざ大学生と付き合いたい、といったタイプのJKは大体見栄っ張りで、よってブランド物を持ちたがる。

 だが、普通のJKでは自分をブランド物で染め上げるだけの資金力はない。じゃあどうするか?


 そう、援交である。

 最初はただのお小遣い稼ぎだった。しかし、百選練磨のおっさんと何度も行為を重ねるうち、次第に彼氏との行為では快感を感じられなくなっていくのだ。最終的に心も体もおっさんに染め上げられてしまうのだ。最初はブランド物で自分を染め上げようとしていたのに。皮肉な話だ。

 

 ということで、できることなら僕がDKのうちにJKと付き合いたい。だが、それには今のこの状況からの脱却が不可欠だろう。

 城ヶ崎さん率いるあの集団が、この学校の中でかなりの力を持っているのは明白だ。リア充の中のリア充の彼らに敵視されるのは誰でも避けたいだろう。したがって僕の味方をしたい、なんていうお人好しはそうそういないし、ましてや恋人になりたいなんて思う人はほぼいないといってもいいだろう。


 .......いや、待てよ。だからこそ、この状況は有益なものではないだろうか。

 こんな状況の俺を救ってくれる人こそ、『絶対に寝取られない女性』その人ではないだろうか。

 権力にも周りの空気にも流されず、僕を救い出してくれた人が、そこから寝取られるとはどうしたって考えられない。


 .......いや、待て待て。よく考えたらそんな話いくらでもあるぞ。自分をいじめから救ってくれた彼女がいじめっ子の魔の手に堕ち無事寝取られる、みたいな話。

 まあ話って言っても同人誌での話ではあるんだけど、現実は小説より奇なり、なんていうし、実際に起こりうることだと考えた方がいいだろう。


 とすると、やはり不味いな、解決策を考えなければ。

 

「きりーつ、れい、ありがとーございましたぁー」


 なんてことを考えているうちに最後の授業が終わった。

 職員会議の都合上、今日の授業は午前中のみで、さらに数ⅡBの授業だったので、休憩が一回しか設けられなかったのは本当にラッキーだった。

 ただ、授業中なんどもこちらに嫌な視線を送ってきていたので、もし今日まとまった休憩時間があったなら、間違いなく嫌がらせを受けていただろう。

 

 さて、これからどう行動すべきか。

 一つ考えたのは、もうこの一年間はいじめを受け入れて、三年生でのクラス替えでいじめっ子たちと別のクラスになるのを願う、というものだ。


 だがこれはすぐに無理だとわかった。この2年E組は理系の特進クラスなのだ。理系の特進は、この学校は文系の生徒が多めということもあり、二年生でも三年生でもひとクラスしか設けられていない。僕の成績から考えると三年生でも特進クラスに入ることは間違い無いだろう。

 このいじめの首謀者であろう城ヶ崎さんの成績はというと、理数系では毎回一桁の順位を取り、掲示板に名前を貼り出されているレベルだったと思う。まあ間違いなく特進入りするだろう。リア充で見た目もよく、成績までいいのだから、いじめさえしなければ完璧な女性と言えるだろうに。勿体無い。

 とすると三年生でも間違いなく同じクラスになるだろう。僕が意図的に悪い成績を取れば話は別だが、いじめられたという理由で成績をあえて下げるなどという行為は僕のプライドが許さない。


 ということで城ヶ崎さんとは長い付き合いになることは間違いない。さすがに二年間いじめ続けるということはないだろうが、先ほど説明したように、理系の特進クラスが一つしかないことを加味すると、この二年生でのクラスメイトがそのまま三年生でのクラスメイトになると考えてもいいだろう。となると今このクラスでいじめられっ子キャラがついてしまえば、クラスの陣容は基本的に変わらないのだから、三年生になってもそのキャラから脱却することは難しい、と考えるべきだろう。そしてその分、彼女を作るのが難しくなると考えるべきだろう。


 とすればやはりいじめを受けるのを甘んじるのは駄目だ。なんとかして僕に対するいじめをやめさせなければ。

 ただ、情けない話、一人で解決するというのは無理そうだ。僕一人の力ではあのリア充集団に敵うわけがない。

 なので、協力者が必要なのだが、残念ながら友達が多くない僕に選択肢は限られてくる。


 まず最初に考えたのは、このクラスの担任だ。

 一番無難な選択に思えるが、残念ながらこれは無理そうだ。

 一つ目の理由は、城ヶ崎さんとその取り巻きたちは非常に担任からの受けが良い。

 適度に真面目に、適度にふざける彼女たちのような存在は、先生にとってとても都合のいいものなのだろう。

 二つ目の理由は、担任は僕のことをあまり好きではない、ということだ。

 僕のようなただただ静かな生徒はあまり先生受けしないということと、僕自身あまり生活態度がいいとは言えないことが理由に挙げられるだろう。遅刻することもあるし(NTRゲーがやめられなかった)学校にゲーム機を持ち込み没収されたこともある(もちろんNTRゲーをやるためだ)。僕と彼女達、どちらが担任からの信頼を得ているかというと、間違いなく彼女達であろう。

 三つ目の理由は、単純に証拠がない。彼女たちがやったという証拠がないのだ。僕が彼女たちからいじめを受けていると判断した理由は、彼女の告白を断ったということと、彼女たちが僕に嫌な視線を送っている、ということだけだ。証拠としてはあまりに弱い。

 実際に彼女たちが僕の机を隠すところをしっかりと見た人がいるかどうかも怪しい。彼女は決してバカではない。そこのリスクマネージメントはしっかりとしているはずだ。それに、それを見た人がいたとして、証人になってくれる確率は高くないだろう。証拠がなければ学校の先生はいじめがあると認めないだろう。

 以上の理由より担任は却下、というより頼るとしても先の話になる。決定的ないじめの証拠を得て初めて頼ることになるだろう。失敗した時の、「先公にチクりやがって〜」的なやつで、さらにいじめが酷くなる可能性もあるし、担任は却下。


 次に考えたのは、このクラスでの唯一の友人”だった”菊池礼二だ。

 どうやら彼はもう僕の友達ではないらしく、目があうたび高速で目をそらし、一度話しかけようとしたときなんか、まるで往年の盗塁王に話しかけられたかのようなキョドリようで、最終的に「膀胱が炸裂したっ!!!」などというわけのわからない言い訳とともにどこかへ消えて行った。あいつはもう駄目だ。完全に僕を見捨てて安寧を選ぶつもりだ。間違いなく協力なんてするわけない。


 次に考えたのは、このクラスでかなり特殊な存在である、俺の幼馴染、神楽坂花連だ。

 彼女ならクラス内での自分の立場なんて全く気にしていないし、僕と関わっていじめられる心配もないだろう。というのも、一年生の時、彼女のことをよく思っていなかった彼女のクラスメイトが、彼女にちょっかいをかけたらしいのだが、それから一週間後、そのクラスメイトは転校してしまったそうだ。

 それ以来彼女は、元々の高飛車な態度や冷たい印象を受ける見た目などの影響もあり、腫れ物のような扱いを受けているのだ。

 彼女だったら、城ヶ崎さんに対する切り札的存在になると思うのだが、残念ながら彼女も無理だ。


 なぜなら、これは単純な話で、彼女は僕のことが大嫌いだからだ。

 現に先ほどの授業中もずっとこちらの方をニヤニヤ笑いながら見ていたし、僕がいじめられているという現状に満足しかないだろう。加恋も駄目だ。


 次に考えのは、このクラスの良心、緒方くんだ。

 緒方、という名前に聞き覚えがある人もいるだろう。 

 そう、城ヶ崎さんの恋人候補No.1であったあの緒方くんだ。

 彼に頼るというのが一番現実的な選択肢だと思う。

 彼は高めのスクールカーストを持ちながら、僕や菊池みたいな、どちらかといえば隅っこの人間にも分け隔てなく接してくれる、まさしくこのクラスの良心だ。彼に頼ることができたらかなり心強い。

 事実、今朝僕の机が無くなっていたときにも、彼は僕の方に心配そうな視線を送っていたし、今現在も僕の方をチラチラとみて、今にも話しかけんばかりだ。僕の絶対に話しかけんなオーラがなかったらとっくの前に話しかけられているだろう。


 一体なぜ、僕がそのようなオーラを出しているのかというと、帰ろうともせず未だにこちらをみながらヒソヒソ話している城ヶ崎一派の存在が理由だ。

 ここで彼が僕に話しかけてしまうと、彼女たちからしたらかなり面白く無いのは当然として、多分彼、緒方くんは、城ヶ崎さんからの告白を断っているのだ。つまり、一応緒方くんにも、城ヶ崎さんからいじめられる理由は存在するのだ。

 彼は僕なんかと比にならない地位をクラス内で誇っているし、そもそも僕のような断り方はしないだろうから、そうはならなかったのだろうが、告白を断ったことに加え僕の味方なんてしたら、彼女たちが彼に対して嫌がらせをすることを決心しかねない。クラス内での地位なんて案外簡単なことでひっくり返ってしまうものだし、それがきっかけで緒方くんがリア充からいじめられっ子へとクラスチェンジし、暗黒の学校生活を送ることになってしまいかもしれない。それはあまりにも心苦しい。

 

 僕が最終的に出した結論は、一人でなんとかする、ということだ。

 一人でなんとか証拠を集めて、それを彼女たちに見せ、「いじめをやめなきゃ学校にバラす」と言ってしまうのが一番いいだろう。問題は、どうやって証拠を手に入れるか、というところだが.........

 一旦帰るふりをして、彼女たちが僕の机に何か嫌がらせをしているところを激写、なんていうことができればいいが、ただのNTR好きの男子高校生にそんなことができるだろうか。彼女たちが無類の机いじめ好きでも無い限り、下駄箱に何かするかもしれないわけだし。僕は一人なのだから、教室と下駄箱を同時に見張ることはできない。

 彼女たちの後をこっそりつけることも考えたが、先ほども言ったように僕はただのNTR好きの男子高校生。そんな芸当ができるとは思えない。むしろバレて、「こいつストーカーだ」といじめの理由を与えてしまうだけだ。


 ...............はぁ。参ったな。

 今日は、もう、普通に帰ろう。 

 いい案が思いつかないというのもあるし、何より、強がって見せるのも限界だ。

 早く家に帰って、ベットに突っ伏したい。休みたい。

 そうだ、もしかしたら嫌がらせは今日までで、明日からは普通の学校生活に戻っている可能性だってあるんだ。彼女たちだって鬼じゃないんだし。

 うん、今日は帰ろう。


 僕は今すぐ帰ることを決心し、机の中に入っているものを全てカバンに詰めた(ちなみにどこかに行った僕の机の中身は行方不明だ)

 そのとき、机の中から一欠片の紙がひらひらと落ちた。

 それを拾い上げて見てみると、こう書いてあった。



『放課後、校舎裏に来て』



 差出人の名前は書いていない。

 僕は城ヶ崎さんを盗み見した。

 今は友人と楽しそうに談笑している。

 この手紙は、彼女からのものだろうか。

 いやいや、放課後に校舎裏に来いと言っているのだから、今ここにいるのはおかしく無いか。

 いや、僕がしっかりと校舎裏に行くのを見届けるためにいるのかもしれない。

 だとして、校舎裏で何をするんだ。

 わざわざ僕を直接いじめて、いじめの証拠を残すような真似を城ヶ崎さんがするだろうか?

 ........迷ってても仕方ない。とりあえず行こう。

 そして待ち人が城ヶ崎さんだったら、謝ればいいだけの話だ。


 僕は急いで教科書をカバンに詰め、立ち上がり教室を出た。


 

 この東武学校はかなり巨大な学校で、校舎と呼べるものは複数あったが、生徒がいう校舎裏はたった一つの場所に限定できた。

 本来は告白の名スポットとして屋上と双璧をなす場所なのだが、少なくとも今日の僕に告白するというのはあり得ない話であろう。

 僕は、できることなら一生着かないでくれ、という切実な思いを込めて、ゆっくり、ゆっくりと歩を進めたが、当然その願いが叶えられることはなく、しっかり校舎裏へと着いてしまった。


 まだ差出人は来ていないらしい。まあ、差出人が城ヶ崎さんだったら当たり前の話だが。告白以外で基本的に使われないこの場所、というより基本的に使われないから告白に使われるようになったのだろうが、には人っ子一人いなく、いじめをするには好都合な場所と言えるだろう。

 ...........はぁ。覚悟を決めよう。




「桜庭くん」




 覚悟を決めたはずの僕の双肩はみっともなく上下し、僕は慌てて声の主を知るために振り返った。




 そこにいたのは、我が2年E組のお姫様、綾小路結奈だった。



 


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