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本と夢と異世界と  作者: うめち
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page3 ゼナスペリアと隔離空間

 説明文に書いてある通りに色々と試してみた結果、これは魔道具である事がわかった。理由は説明文より中盤にそう書いていたからだ。

 しかし、魔道具なんてファンタジー小説やアニメでしか知らないし、何より目の前にあるものが魔道具だとも信じられない。まぁ、魔道具と言われて納得するしかない状況なのは違いないが···。

 色々試してみた結果、基本的な操作としては機能のON・OFFは本の開閉で行われ、本の中央にあるドーム状のものはスクリーンと呼ばれ、手で触れることで周りにコントローラーと呼ばれるボタンなどが出現する。

 スクリーンの中には映像が浮かんでおり、コントローラーのボタンと小さなドーム状のもので拡大縮小や映像の移動が可能となっている。ちなみにドーム状のものがゲームで言う《十字キー》の役割をしており、転がすことによって映像をスライドされる。

 拡大・縮小の限界値は地面に生えている草1本分から世界地図レベルまでだった。

 映像は1つの世界を映している様で、人々が生活していたり魔物と呼ぶであろう生物の存在も確認できた。映像自体は上から限定で建物の中まで見ることはできない。

 ちなみに最初にスクリーンに触ったときに使用者登録らしきことがされたらしく、今はスクリーンとは別にスクリーンより少し奥に左右1画面ずつ別の表示があり、左側に《権限レベル1》と上部に書かれていて、その下に《観察》《隔離空間》と書かれている。右側は何も書かれていないがその内出てくるのだろうか。

 あと、映し出されている世界は実在するらしく、言わば《異世界》となっている。詳しくは分からないがこの世界を観察したり管理したりするらしい。


「何時だ?」


 どれくらい集中していただろうか、本を閉じてふと時計を見ると18時を過ぎていた。


「マジでか!?」


 1日の殆どをこの本に費やしていたらしい、昼も食べてないので空腹を感じてリビングに行こうと部屋を出る。


「むぅ〜······」


 ドアを開けるとすねた顔のねねがそこに立っていた。


「いつからそこにいたの?」

「いっぱい前!」

「ドア叩いたら良かったのに」

「いっぱい叩いたもん!」


 ねねを抱き上げて手を見ると小指側が少し赤くなっていた、確かにいっぱい叩いたみたいだ。いくら集中しているとは言え、連続で叩かれるドアの音に気づかないはずは無い。ドアを叩く音が遮断でもされていれば別なんだが······。


(ああ、《隔離空間》ってもしかしてこれか?)


 次からは気をつけようと思いつつ部屋のドアを閉め、ねねの頭を撫でながら階段を降りていく。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 リビングに入ると母さんが晩御飯の準備真っ最中だった、ねねをおんぶに切り替え僕も準備を手伝う。

 父さんはソファで酒を片手にテレビを見ている、テーブルの上には空になった一升瓶が10本ほど······どんだけ飲んでんだ?しかも酔ってる気配はないし。


「恵太、あの本読んだか?」

「うん」

「どんなだあれ?」

「いまいちよくわからないけど、面白そうだよ」

「そうかそうか」


 父さんは本の中身は知らないみたいだ、下手に話してしまうと何かありそうで怖いし、なにより面白そうなのは事実だから取り上げられるのも避けたい。


「恵太は本が好きだから読み応えあるんじゃない?」

「まぁね」

「でも昼御飯くらいは食べなさいよ?」

「うっ······はい」

「ねねも部屋から出て来ないってむくれてたんだから」


 背中に視線を移すとねねはまだご機嫌斜めの様で、むくれながらおでこを背中に押し付けてきている。

 この家の中で2箇所鍵が付いている部屋がある、1つは父さんの書斎、もう1つは僕の部屋だ。中学に上がるとき思春しだしと鍵をつけてくれた。と言ってもカギを掛けることは殆どないが······。

 どんな時に鍵をかけるか?それはほら、僕も思春期だし?


「けーにぃ、ドア叩いても出て来ないし、鍵かかってたし······」


 背中から抗議の声が聞こえた、今回は鍵をかけた覚えはないんだが、これも《隔離空間》のせいなんだろうか。


「そう言えば学校からの連絡網が回って来たわよ」

「なんて?」

「台風の影響で教室が滅茶苦茶だから暫く休みになるって」

「どういう事?」

「飛来物で窓ガラスが割れたらしいわよ」

「そりゃまた···」

「試験どうなるのかしらね」

「無くなったらいいのになぁ」

「それはないわね」


 かすかな希望をバッサリと切られた、まぁあまり前なんだが。


「けーにぃお休みなの?」

「少しの間だけね」

「ねねも休み?」

「ねねは普通に幼稚園あるわよ」

「ぶー」

「残念だったな」


 カプッ


「イタタタタタ!」


 ねねに肩を噛まれた。

 ねねはご機嫌斜めの時我慢できなくなると僕を噛む癖があり、一度噛まれると落ち着くまで噛まれ続ける。痛いのは初めだけでその後は甘噛みになるが最初が思いっきりなので跡が残ることもある。

 前に僕がいないときどうしてるかと聞いたら『我慢してけーにぃと一緒のときに噛む!』とドヤ顔で言われた。


「ねね、あまり噛んでるとご飯入らなくなるわよ?」

「それなんかおかしくね?」

「らいひょうぶ、へふはらははら(大丈夫、別腹だから)」

「どこでそんな言葉覚えた?!あとデザートじゃねぇ!」


 結局晩御飯になるまで噛まれ続け、開放された頃には肩はねねの唾液でベトベトになっていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ご馳走様でした」


 夕食を食べ終え食器を台所へ持っていく、ねねは先に食べ終わりソファに座ってアニメを観ている。

 夕食の間に機嫌も直ったみたいだ。


「ねね、今日は久々にパパと一緒に風呂に入るか?」

「やだ」


 久々に僕達と同じ時間を過ごす父さんの提案を、バッサリと即答で返すねね。父さんが明らかにヘコんでる。

 そもそもそんだけ酒飲んでる時点で風呂に入ろうとするなよ···。


「じゃあ、一人寂しく入ってくるか」


 入んのかよ!


「ん?どうした、驚いた顔して」


 どうやら顔に出ていたらしい。


「酒飲んだまま風呂は危ないんじゃ?」

「こんなの日常茶飯事だぞ?」

「それでも飲み過ぎでしょ」

「まだ少ない方だが?」

「ウワバミか!」

「酒は好きだが目が眩む程じゃねぇよ」


 笑いながら風呂場へ向かう父さん、その内肝臓やられたりしないだろうな。


「この前の健康診断でも異状無かったらしいわよ」

「ハンパねぇ···」


 もう心を読まれた事には突っ込まない。

 先にニ階に上がり僕とねねの着替えを持ってリビングに戻る。

 僕がソファに座るとねねが膝の上に乗ってきた、ねねの頭を撫でながら一緒にアニメを見る。

 画面の向こうでは歌姫と呼ばれる二人の女性が一人の男性のために歌を歌っている、何だこのハーレム爆発しろ。

 そのアニメが終わると次のアニメが始まる、南国の島で少年と茶色のアザラシのようなキャラクターに巨大カタツムリ、鯛に足が生えたキャラと個性豊かすぎる登場人物(?)の織り成すギャグアニメ、実在するとカオスだ。


「上がったぞー」


 アニメのエンディングが流れ出したタイミングで父さんが風呂から出てきた、僕はよくわからないラブソングを聴きながらねねと風呂へ向かった。

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