page1 兄妹と単車の行方
「やっと終わった〜」
「あんた、結局体育以外寝てたじゃん」
学校が終わり、帰宅部の僕らは帰路につく。
「今日、中期試験の範囲言ってたよ?」
「マジでか!?後で教えてくれー」
「聞いてもあんた、勉強しないでしょ」
「やってるよ!赤点取らない程度には」
「真面目にやりなよ、、、」
僕達の学校は各学期事に試験が1度ずつある。
前期、中期、後期、終期、それぞれの試験の後には長期休暇があるが、試験が赤点だと当然追試、補修が行われる。
前期試験の時は、試験数日前に美羽に泣きついてたらしいので、今回もそうなる事は予想できる。
「次は泣きついても教えないからね」
「その時は恵太に教えてもらう」
「僕は妹の面倒見たりとかあるから無理」
「そんなぁ」
肩を落とす流、こいつは甘やかすとすぐ調子に乗るからな。
明日から授業をちゃんと受けだしたら考えてやろう。
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「せんせーさよーなら」
ねねが僕の手を握りながら先生へお辞儀をする。僕も軽く会釈をして帰路につく。
途中で流はゲーセンに、美羽は買い物に行くとの事で、今は僕とねねの2人になっている。
「幼稚園は楽しかった?」
「あんまりー」
「嫌なことでもあったの?」
「なんかつまらない」
「そっかぁ」
僕はねねを抱き上げる、ねねは僕と目が合うとにこっと笑って肩に顔を乗せてくる。
僕が迎えに行くときは、いつもこうして家に着くまでに眠ってしまう。
「ニャー」
「ミャー」
鳴き声の方を見上げると塀の上に2匹の猫がいた。
片方は真っ白、もう片方は真っ黒。2匹とも僕と並ぶように塀の上を渡り歩く。
(首輪もないし、野良猫か?)
結局2匹とも家の前まで一緒についてきたが、家の車庫に単車があるか確認した時にはどこかに行っていた。ちなみに単車は無かった。
「ただいまー」
玄関からリビング、キッチンへと向かい、冷蔵庫の中を確認する。
そこには大小2つのオムライスが並べられていた、その後ろにはサラダも見える。
僕は扉側からお茶のペットボトルを取り出し、自分の部屋へ向かった。
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「よいしょっと」
起こさないようにねねをベッドに寝かせると、僕は着替えをすませ、椅子に腰掛ける。
外を見るとオレンジ色の空が続いていた。
単車に乗るほどの急用ってなんだろう、見間違いの可能性もあるけど、あんな真っ赤な単車、逆に見間違うほうが難しいか、、、車庫にもなかったしな。
「、、、ん、んん〜」
暫く考え事をしていると、ねねが目をこすりながら起き上がる。寝ぼけ眼で周りを見回し、椅子に座っている僕と目が合う。
「のどかーいた」
「はいはい」
僕はペットボトルのキャップを開けねねに手渡すと、ねねはそれを両手で受け取りコキュコキュと小さい喉を鳴らして飲みだす。
「ぷはぁ、、、あい!」
冷たい飲み物を飲んで目が覚めたのか、笑顔で飲みかけのペットボトルを渡してきた。
「ご飯にする?お風呂にする?それt」
「けーにーだっこー」
言い終わる前に結論を出されてしまった。差し出された両手を首に回させ、そのままねねを抱き上げると、リビングへ向かい食事の用意を始める。といっても、レンジで温めるだけなのだが。
温めている間、ねねの着替えをすませて食器を並べる。基本的にねねと僕の食器は同じ場所に置かれる、ねねは食事自体は自分でするのだが、座る場所は決まって僕の膝の上となっている。
食器を並べ終えた頃に温め終了の音が鳴ったので、2人分のオムライスを並べて僕が席に座る、すぐにねねも膝の上に乗ってきた。
「「いただきます」」
僕はねねの食べる様子を見守りつつ食べていく。久しぶりの2人の食事は静かに感じてなんとなくテレビを着ける、画面の向こうでは雨具に身を包んだナレーターが暴風雨に抗いながら中継をしてい、、、あ、飛んでった、、、。
「とりさんになった?」
「うーん、鳥さんにはなれないかなぁ」
中継が終わり、天気予報へと切り替わる。なんか台風が近づいてきてるらしい、このまま来ると明日は休みだなぁ。
「ごちそーさまでした!」
ねねが先に食べ終え、膝から降りるとリモコンを手に取りテレビ前のソファに座ってチャンネルを変え始めた。
その後、僕も食事を終え台所へ食器を持っていく。食器が洗い終わりねねのもとへ行くと、ねねは好きなアニメを見ながら携帯型ゲームをしていた。
その年齢で器用だなおい。
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アニメも終わり、ねねがゲームに飽きた頃にお風呂へ、風呂から上がると時計は10時を指していた。
僕はソファに座り、特に見たい番組もないのでテレビのチャンネルを適当に変えながら一息つく。
ねね?膝の上で寝てますが何か?
「ただいまー」
母さんが帰宅しリビングへと入ってくる、単車の音がしなかったな。
「おかえり、友達が単車でぶっ飛ばしてるところ見たらしいけど?」
「そんなわけないでしょ、ちゃんと制限速度守ってるわよ」
「国の?」
「自分の」
「ですよねー」
友達から単車と聞いて飛ばしてるだろうと思ったけどやっぱりか、いつか捕まるか事故るぞ。
「別に捕まりも事故りもしないわよ」
僕の心を読んだだとっ!?
「でも、単車で帰ってこなかったの?」
「ああ、必要な人がいたから一時的に預けたのよ、ちゃんと返ってくるから大丈夫」
単車がない時に緊急時がきたらどうするのだろうか?
「暫く緊急時なんて来ないから大丈夫よ」
やっぱり読んでんじゃねえか!?
「恵太もそろそろ寝なさい?明日は学校無さそうだけど」
「あー、うん」
今日も父さんは遅いんだろう、僕はねねを抱き上げて2階に向かう。
「おやすみなさい」
「おやすみ〜」
僕は自分の部屋に入ると、ねねを抱っこしたまま布団に座る。
ねねの部屋に行こうとしたが、僕のシャツを握ってるため、離すと起きそうなのでそのまま寝ることにした。
布団に入って電気を消すといい感じに眠気がきたのでそのまま目を瞑った。