プロローグ的なサムシング
「恵太!起きないと遅刻するわよ〜」
1階から母親の声がする。恵太は朝のまどろみの中、二度寝との戦いに負けようとしていた。
「もう少し、、、」
意識が次第に夢の中へ行こうとする中、勢い良くドアが開く。
「けーにー起きろー!」
「ぐぼぁ!」
突然横腹に衝撃を受け、体が「く」の字に曲がる。
「恵太!ほんとに起きないと遅刻、、、」
「ねねがおこした〜!」
「ねねちゃんありがとー、そのままお兄ちゃん引っ張ってきてね」
痛む脇腹を押さえていると、突然布団を剥ぎ取られ飛び乗られた。
「ぐはぁ」
「おっきろー」
「わははは!ちょっ、、、わかった、、、起きる、起きるから」
痛みと笑いの中、涙目になりながらベッドから起き上がる。
「あさごはんだよー!」
朝から元気な妹、ねねに手を引かれつつ恵太は部屋を出た。
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朝食は母さん、ねね、僕の3人で食べる。僕は母さんの向かいに座り、ねねが僕の膝の上に座る。
父さんは居ないわけではないが、この時間は既に仕事に出ており、帰る時間も遅い。
前に父さんの仕事について聞こうとしたことはあるが、話そうとはしなかった。
危ないことをしているという訳ではないみたいだけど、、、。
「恵太、今日お母さん用事で遅くなるから、ねねのお迎え頼める?」
「わかった」
ねねは現在6歳、幼稚園に通っている。通学路の途中にある事もあり、行きは僕が迎えは母さんがやっている。
「晩御飯は冷蔵庫に入れておくから、温めて食べてね」
「はーい」
母さんは専業主婦だが、たまに用事で夜に帰ってくる、父さんの仕事関係らしいけど、詳しくは知らない。
「ごちそーさまでしたっ」
ねねが膝から降り、袖を引っ張ってくる。
「けーにーはみがきー」
「ちょっと待って、僕まだ食べ終わってないよ」
「はーやーくー」
ねねに袖を引かれながらなんとか食べ終わり、そのまま袖を引かれて洗面所へ。
シャカシャカシャカシャカ、、、
鏡に映った寝ぼけ眼の顔を眺めながら歯磨き、ちょうど胸のあたりに台に立ったねねの顔がある。
シャカシャカシャカシャカ、、、
「んーん!」
「ん?」
「んーん!!」
突然ねねが僕を見上げ自分の歯ブラシをつき出す。僕がその歯ブラシを受け取ると、ねねは鏡に向き直り口を開けた。
僕は自分の歯磨きを終え、ねねの歯磨きの仕上げをする。
シャカシャカシャカシャカ、、、
「おーし、もういいぞー」
ねねが口をゆすぎ、真っ白い歯を僕に見せてくる。僕はねねを抱き上げてリビングへと向かう。
リビングでは既にねねの着替えがソファの上に用意されていた、時間は、、、7時30分?!
「やべっ、遅刻する!」
僕はねねを母さんに預けると、急いで自分の部屋へと向かった。