Life7 交信男
宇宙人。この存在を信じている人はどれくらいいるだろうか。
もし、「宇宙人と交信できる」なんて言う人がいて、その言葉を信じる人はいるだろうか。
そのどちらにしても、ここに一人、「宇宙人と交信できる」という男がいるのだ。
その男は、別に変な人というわけでもなく、いつもは普通に友達と喋ったりスポーツなどをして遊ぶ男だ。
しかしその男は、余程重大な事が無いとき以外、授業中でも友達と遊んでいるときでも、突然どこかに行ってしまうことがある。
まぁ、大体の人は、「何かあるんだ変な奴」と流すところだが、人間にはたまに好奇心旺盛な奴がいて、後をつけるなんてよくよく考えれば危険な行動をとるやつがいる。
そしてここに、その行動を変だと思い、男の後をつける友達が一人。
男にばれないように後をつけると、空をジッと見て、周りに誰もいないのに男は誰かと話をしている。
それはとても可笑しな光景である。いつも一緒につるんでいる友達が、こんな人気のないところで空を見上げながら身振り手振りを使いながら楽しそうに会話をしているのだ。しかも、演技っぽいならただの変な奴で済ませることが出来るのだが、明らかに自然体なのである。友達にも、男が何か別の生物と会話している図が錯覚だとしても眼に見えた。
だが、驚いている場合ではない。友達は、男の会話が終わったのを見計らい、男に向かって叫んだ。
「さっき何してたんだ!?」
男はビクッとして声のする方向へ振り返った。
そして、その声の主が友達だと分かると、安心はしたのか、ホッと胸をなでおろし言葉を返す。
「なんでお前がここにいるんだよ!」
男は友達に向かって叫び返した。
友達は男に近寄り、さらに言葉を返す。
「好奇心以外の何物でもねえよ! まぁ、ここまで見られたんだ。白状しなさい」
友達がそう言うと、男も仕方ないと言った表情で話し始めた。
「どうせ信じないと思うけどさ。宇宙人と話してたんだよ」
男がそう言うと、友達は少しの間ポカーンとした後、潤んだ目で男の目を見ると、男の肩にポンと手を乗せた。
「なぁ。それはギャグか? それとも病んでんのか? いい病院紹介するぞ」
友達が本気でそう言ってくるので、男は、そっと友達が乗せている手を肩から降ろした後、一つため息をついた。
「やっぱこうなると思ったよ……無理も無いけどさ。よく考えてみろよ。俺達もまとめてみれば宇宙人なんだぜ? 俺達が住んでる地球以外に生物がいたっておかしい話ではないだろ?」
男が必死に説明する。しかし、友達に納得する様子は無い。
「じゃあ、宇宙人と喋ってるとこ見してくれよぉ」
「見てただろ今……」
「いやいや、宇宙人となんてまさか思わないからよ」
「はぁ……まぁ、今は無理なんだわ。宇宙人からの交信電波を受信しないとな。まぁ、いつか見せてやるよ」
このとき、友達は本当に男は病気なんじゃないかと思ったという。
しかし、男がひねもすの被害にあった日。あれは病気なんかじゃなかったということが分かったのだ……
男がひねもすの被害にあった日。家族や友達はもちろん、学校の先生や近所の人たちまで集まった。というより男が集めれるだけ集めてくれと家族や友達にお願いしたのだ。
当然。家族や友達は人を集めた。そのおかげで学校の先生や近所の人まで集まったのだ。
「皆さんに集まってもらったのは他でもありません。最後に宇宙人からの言葉を聞いてもらいたいのです。皆さんは、俺が宇宙人と話せるわけなんかないと思ってることだろうと思います。だけど俺の最後のわがままだと思って聞いてください」
突然の男の言葉。いきなり宇宙人からの言葉と言われても、その事実を知っているのは好奇心旺盛な友達一人のみ。全く意味のわからない話である。だが、集まった人々は文句1つ言わない。ひねもすの被害にあっているのにも関わらず、人を集めるだけ集めてふざけるはずはないと思ったからだ。
男は何も喋らず宇宙人からの交信電波を待った。
しばらくして男がスッと立ち上がると、バッと空を見上げた。
男が宇宙人との交信を始めたのだ。
男が宇宙人と交信をしている姿は誰が見ても驚くだろう。話している言葉が分からないのだ。しかし、ちゃんとした言葉のようで、何回か同じ言葉が聞こえてくる。
交信しているときの男は本当に誰かと話しているときのように表情豊かだ。自然な表情をしている。
そして男の交信が終わると、みんなの方を向き、真剣な顔つきで話しかけた。
その話の内容は驚くことばかりだった。町でひねもすを止めるため町で呼びかけを行っている女性のこと。機械から現れる天使で世界が救われること。天使が現れる条件は、人々の思いを念じること……
男が知るはずも無い話を男はみんなに話した。聞かされた話も現実味がないものではあるが、何か真実味がある。これにはみんなも宇宙人との交信を信じるしかない。
「皆さん! 今から町に向かって機械に思いを念じてきてください。宇宙人が言うことだ。これで間違いなく救われます」
男がそう言うと、みんなはザワザワし始める。これもまぁ仕方の無いことで、いくら男が宇宙人と話せるとしても、真実味があるとしても、機械から天使が現れるなんて普通に考えてありえない。真実味よりも現実味の無さが全面にでる。普通に考えてありえない事を信じる人はそういない。
しかし、こうして必死に言われると迷ってしまうものだ。
「機械の中から天使が現れるなんて馬鹿げた話だって思う人がほとんどだと思います。でも、馬鹿げた話は時々奇跡を生みます。俺だって始めは宇宙人と交信できるなんて馬鹿らしい話だと思ってました。でも、実際できているんです! これは俺の最後の願いです。町へ向かってください。これで国が救われるかもしれないんです。国を救おうと頑張っている人だっている。このまま何もしないで終わるより、少ない可能性に賭けてみることのほうが素敵なことだと思いませんか?」
男の言葉には真剣味があった。芯があるように感じた。現実味のない話を男の気持ちが真実味のある話に変える。実際、この言葉にみんなの心は動いた。みんなは町へ向かって動き始める。
男も一緒に行こうと誘われたが、最後は自分の家で終わりを迎えたいということで一緒には行かず、自分の家で一生を終えた。