第一部 第ニ章 大会崩壊と少年 その4-1
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第三試合は雨天のため一時中断となった。三時間後に再開することになり、出場者たちはそれぞれ自由時間を与えられた。
シャイアは、その時間を利用し、会議室にナトを招き入れた。
そこにはカオスとメテアの姿もあった。
シャイアがコトの成り行きを、ナトに話して訊かせた。
「ナトさん、どうか、ちからを貸してください」
眼を閉じ、腕を組んだまま、じっと動かないナト。
反乱軍を組織する計画は、慎重に行わなければならない。いつ、誰が、三叉の矛に密告するかわからないからだ。
世界のすべての街や村は、三叉の矛の幹部が統治を行っている。
統治力は人によって違い、治安を重んじるモノや暴政を行うモノもいる。
世界が支配されたとはいえ、みんながみんな、不満を持っているわけではないのだ。
しかし、ナトは家族を殺され、仲間を犠牲にした。そして、この人格。シャイアは彼を信頼して、話しを持ちかけたのだった。
「お前たちは、三叉の矛総帥、ラデスの恐ろしさを知っているか?」
それにシャイアが口を開く。
「噂には訊いています。なんでも姿を自在に消すことが出来るそうで……」
ナトが眼を開けた。
「姿を消すのではない、存在を消すのだ。これがどういう意味かわかるか。おそらく、ヤツに勝てるモノはいないだろう。存在を消し、電撃と暗黒球を繰り出す。正直に云って、ヤツは無敵だ。そんな男に闘いを挑むというのか?」
シャイアは力強くうなずいた。
「闘いを挑みます。私の能力もある意味、無敵だと云えるでしょう。強力催眠。仮面を被っていても、無意味です」
ナトはホウといった感じでシャイアの顔を見た。
「ただし、弱点があるのです」
「それは?」
「精神集中の詠唱時間が長いのです。仮面にかなりチカラをためないと発動しない能力。だから、精鋭ぞろいの組織をつくることにしました」
ナトはう~んと唸った。そして、云った。
「わかった、力を貸そう。自分の能力、そして、弱点を惜しげもなくさらしたお前の心意気、しかと受け取った。ふがいないこの身だが、お前に預けよう」
シャイアは深々と頭を下げた。
カオスとメテアはヤッタといった感じに、お互いに顔を見合わせた。
「そのかわり条件がある。カオスをしばらくの間、俺の元に預けてくれ」
☆
スイトの町の中央に、それほど大きくはない城が建てられている。
急ピッチで建てられたため、防壁はなく、ふきっさらしの景観。しかし、それは城主ミナスの、来るなら来いといった、強さと自信の現れだったのかもしれない。
スイト城に全身を黒で覆った男がやってきたのは、大雨が降って十分後のことだった。
黒い鎧に黒マント、仮面もまた黒く、中世ヨーロッパの兜のような形状をしていた。
その両眼からは赤い光を発し邪悪さをかもし出している。
鎧の男はミナスに謁見を求めた。
王室に招かれた鎧の男はミナスに頭を下げ、謁見の理由を述べた。
「どうか私を三叉の矛に入れてください」
それを訊いて、ミナスは大声で笑った。
顔の中央に黒い円が描かれた仮面。あまりにも質素な仮面だった。とても強そうには見えない。しかし見た目でだまされてはいけない。まかりなりにも、一国を治める実力者なのだ。
「何を云うのかと思えばそんなことか。おこぼれにあずかろうというお前のようなヤカラは後をたたない。ひとつ云っておく。我々、三叉の矛はちからこそがすべて。弱者に用はない」
鎧の男は小さく笑った。
「私は今、かの武闘大会に出場しています。本当は優勝してからお願いする予定でしたが、急遽時間が空きまして。まあ、見ていてください。この大会で、私の強さを証明してみせます」
それを訊いて、ミナスは再び大声で笑った。
つづく






