表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/40

第二部 4 苦しみ怒り悶え、そして別れ

     4 苦しみ怒り悶え


 カオスたちはニョッカ最大の都市ラウティに足を踏み入れた。ここならば、仮面人間に対抗できる人材がそろっているはずだからだ。中には彼らの仲間入りしたものもいるだろう。だが、支配されていないものも多く残っているはずだ。カオスたちにとって最後の賭けだった。

 以前、エラを倒すために訪れたときとは景観がガラリと変わっていた。

 建物からは煙が上がり、人々の賑わいは消え、ざらついた風が吹き荒れている。

 人の気配はない。

 ゆっくりと歩を進める三人。

 それをふさぐように、立ちはだかる人物たちがいた。信じられない人物たち……それは、ナト、サラノス、アトロスの三人であった。支配されていない……糸のない仮面をつけている……が、感情のない眼が違和感を放っている。

「死んだはずよ。誰かの幻影の能力なの?」

 つぶやくメテアに、

「あの存在感、質感、幻影ではないようだ」

 とシャイアが憎々しげに答える。

「どちらにしろ、ボクたちの気持ちを踏みにじる行為だ」

 カオスは二人の前に出て、

「ここは……ボクが……」

 静止しようとするメテアをカオスはさえぎる。

「この現象を操る人物がいるはずだ。シャイアとメテアはそいつを探して」

 シャイアたちの姿が見えなくなると、ナトたち三人は無表情のまま少し広がり、ナトは腕を剣に、アトロスは大気の渦を(まと)い、サラノスは自慢のヒゲをさする。

「何故、こんなことをするんだ。許されるべきではない行為だぞ」

 カオスの言葉に答えず、ナトが前に出た。後退するカオス。さらに追うナト。カオスは体勢を崩した。この隙をつき、大きく剣を振り上げる……が、足元が突然爆発し、ナトは大きく飛ばされた。

「隙をついのです。以前、あなたが教えてくれた戦略」

 続いてアトロスが走り出した。

 腰の入った重い回し蹴りが繰り出される。カオスはそれを大きくかわす。渦をもかわさなくてはならないからだ。アトロスの攻撃は休まることを知らない。拳、肩、ひざ、五体すべてが殺傷力を備えている。ほれぼれする流れ。

 カオスは熱い涙があふれてきた。

 尊敬する仲間、偉大なる男と拳を交えなければならない哀しみ……怒り……。

「あなたはただ攻撃をするだけではなかった。教えてくれましたね、相手の能力を観察し、何を得意とし何を苦手とするかを見極めろ……と」

 カオスは母親の能力を発動した。まばゆい閃光がほとばしる。アトロスがひるんだ瞬間、銃声が響き渡る。

「大気の渦をずっと張っているわけにはいかない。かならず、呼吸のための空気穴が必要になるのです。この人形が――」

 そこでカオスは足元にいる、マーの人形をさし、

「肉眼では見えない空気穴を発見し、そこを攻撃したというわけです」

 右肩に銃弾を受けたアトロスは一歩退いた。

 最後にサラノスが前に出た。すでに粒子を散布しているのだろう……が、カオスには効かない。

「あなたは戦いのむなしさ、生きる喜び、仲間の大切さを教えてくれましたね。テシュパくんを見て、ボクたちも子供が欲しいと思うようになりました。豊富な知識、過去の歴史をもっといろいろとあなたから訊きたかった」

 毒の効かないカオス……そこでサラノスは周りにある家々や植物を生物に変化させた。

「あなたの能力はコピー能力のボクには効かないのです。ボクは解毒剤を自分でつくりだせますからね」

 そこでカオスは上空にまなざしを向けた。頬を大粒の涙が流れている。

「今までありがとうございます。出会ったことに感謝しています」

 太陽の光が……三人を一掃した。


     ☆


 シャイアとメテアの前に、数人の仮面人間たちが立ちふさがった。彼らの雰囲気も何処かしら感情がなく、ナトたちと似ていた。それを見てシャイアが云った。

「彼らも操られているような気がする」

「そうね。もしかしたら、相手は死者を蘇らせる能力?」

「かもしれない」

 仮面人間の間をすりぬけ、ひとりの男が前に出てきた。こちらは他と違い、眼をぎらぎらとさせている。

「ご名答。正解だよ。俺の名はバガドルン。人の記憶に残る死人を蘇らせることが出来る。以前この肉体の男は俺の能力をもてあましていたが――」バガルドンは自分の頭を指さす。「使い方次第だよ。うまく使えば、この世界を支配することも容易にできる」

「死者の軍団というわけですか……でも、人道に反する行いですね」

「何を云っている? 俺の世界では簡単に頂点に立つことはできない。だから持てる力のすべてを使う。奇麗事ばかり並べるから人間は弱いのだ」

「その優しさや思いやりが、この宇宙でもっとも偉大なチカラなんですよ。ラナヘイム」

 シャイアは死者の支配を試みた……が、反応がない。彼らには魂がないことを意味する。そこで、バガドルンを操ろうとするが、彼の姿は何処かへ消えていた。

「肉体、精神、魂の三つで成り立つ人類だが、こいつらは肉体のみしかない。お前の能力はスルトアールハイムが教えてくれた。俺の能力の前では無力だ。さあ、絶望に震えるがいい」

 何処からかバガドルンの声が響く。

「シャイア、ここはワタシが……」

「ダメだ。君は能力を使ってはならない。カオスと約束したんだ」

「そんなこと云ったって……」

 シャイアが駆け出した。彼の能力からすると無謀と云えよう。死者の軍団は生前の能力を失わずそのまま持っている。降り注ぐ岩の塊、飛び交う刃をシャイアは何とかよけている。だが、徐々にではあるが傷を負っていく。

「メテアはカオスの元へ行け」

「え……」

「早く!」

 メテアは早く戻ってくることを約束して駆け出した。

 シャイアはそれを見届けると大声で叫んだ。

「私たち人類は何者にも屈しない。世界を守ってみせる」

 次の瞬間、シャイアの身体の上に、わらわらと死者たちがのしかかってきた……。


     ☆


 メテアがカオスの元へ戻ると、彼は絶望と哀しみに打ちひしがれていた。

 何度も何度も蘇ってくるナトたちに、何度も殺さなくてはならない苦しみ……哀しみ。カオスの精神は磨り減っていた……磨耗(まもう)しきっていた……。

「カオス…………」

 メテアはそんなカオスを見て、自分も心を痛めた。背中から強く抱きしめる。

「もういいよ……カオスだけがこんなに苦しんで……ワタシ……絶えられないよ」

 憔悴しきっているカオスは、それでもなお笑顔を浮かべ、

「ボクは支配なんかされない。ヤツラになんて屈しない」

 無情にも、ナトたちは迫ってくる。

「あなたを失うくらいなら、ワタシが生きている意味がない。死ぬときはいっしょに……」

 メテアはナトたちに向き直った。

「世界とワタシたちに害をなす存在に終止符を……スルトラ」

「メテア!」

周りに水気はない、にもかかわらずメテアの眼前に水蒸気があらわれ、それが巨大な水の塊となる。

 新たな能力の開花……空気に含まれる水蒸気を凝縮し、自在に操ることができる。

 ナトたちを、厚い氷の塊の中に閉じ込めた。

「殺すことが出来なければ、動きを封じればいいのよね」

 メテアの策が、勝利をものにした。

 シャイアのいるあたりから、悲痛な叫び声がとどいてきたのは、ちょうどそのときだった。


つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ