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第二部 2 勝利への希望 その1

     2 勝利への希望


 世界中に悲鳴がわき起こった。

 仮面に支配されるのは、カオスたちがそうであるように、個人差がある。街や村では、襲う者と襲われる者に別れた。また、その中には、襲われる者が突然狂い出し、仲間を襲うということもたびたび起こった。もう誰を信じて、これからどうすればいいのか、誰にもわからなくなってしまった。

 世界を、絶望と失望と疑心が支配していた。そんな中、カオスたちはある小さな村に到着していた。現状を打破できるのはシャイアと、もうひとつ。

その最後の希望、マーの元へとカオスたちはやってきたのだった。

 彼の家に着くまで、村人の誰とも出会わなかった。村には誰も住んでいないのか、それとも家に閉じこもり隠れているのかは、わからない。

 マーの家へ着きドアをノックするが返事はない。ドアを開けようとするが施錠されている。そこでカオスは、エフノの能力を使い、カギを開けて中に入った。

 薄暗い室内には人の気配がない。

 マーは何処かへ非難でもしたのだろうか。それとも……。

 奥へ進む途中、キッチンに眼をやったメテアはカオスにそっと囁いた。

「どうやら、彼は中にいるみたいね。あれを見て」

 湯気の上がる料理が小さな皿に乗せられている。

 つい今しがた、マーは昼食を準備していたことを物語っている。そこで、新たな疑問。彼は何故、自分たちの前に姿を現さないのか。

 カオスとメテアに緊張感が走った。

 マーの書斎であろう部屋の前にやってきた。ここでもう一度、カオスはそっと声をかけた。

「マーさん、いますか? カオスとメテアです。実は仮面のことについて伺いたいことがありまして」

 しばらくのち、小さな声が返ってきた。

「知ってしまったんですね。どうぞ、お入り下さい」

 部屋には、サラノスに負けないくらいの書物が並べられていた。だがマーの場合は、趣味というよりも医学書が大半を占め、勉学のために収集されていた。カオスはひととおり部屋を眺めたあと、机に腰かけているマーに視線を向けた。

 灯りのついていない部屋に、亡霊のようにうずくまっているマーは、おびえるように顔を上げた。

「私たちはどうすればよいのでしょう。仮面をはずせば洗脳に抗う術を失い、仮面を被っていれば、いつ支配されるのか恐れながら生活しなければなりません。私は何とか仮面だけを死に追いやる薬や方法を模索しました。しかし、何がきっかけかわかりませんが……これを見てください」

 そう云って、マーは机にある小さな灯りをつけ、自分の顔に向けた。光の中に浮かび上がるマーの顔には、すでに見慣れている糸が無数に伸びていた。

 口をおさえるメテア。カオスはそんなメテアの肩を抱き寄せた。

「支配が始まったのですか?」

「私の研究に反応して、一時的に目覚めただけのようですが……。でも、この糸が体内に侵入したあと、私の精神が狂い始めているのです。他人の脳髄を食べたくて発狂しそうなほどです。それに肉体にも異変が現れました。頭痛が消えず、食欲もありません。眠気もおこりません。もう私は助からないでしょう。あなたたちだけは、無事にこの危機を脱してください」

「あきらめるにはまだ早いですよ」

「そうよ。きっと助かる方法はあるはずよ」

 マーはゆっくりと首を横にふった。

「私はもう無理です。ためしに仮面をはずそうと試みました。しかし、体内に侵入した糸をどうすることも出来ません。切ろうとしたら創造を絶する激痛に襲われました。もう、この糸は私の肉体の一部となっているのです。でも、あなたたちはまだ間に合います。二人っきりで誰にも会わず、仮面を取って暮らせばいいのです。他の者と出会えば、精神支配のえじきになるばかりか、のっとられた相手ならば、殺されるのが眼に見えています。だから、もう誰にも会わないでください。あなたたちには幸せになってもらいたいのです」

 何という思いやりだろうか。カオスとメテアは何とかして彼を助けたいと思った。そこで、カオスは思いついた。

「マーさん、もうひとつだけ助かる方法があります。それはシャイアです。彼の能力ならば……仮面の脅威を防げるかもしれません」

 マーの眼がきらめいた。

「そうか……仮面自体を支配し、自分から肉体を離れるように動かせば……何でそのことに気づかなかったのか……。こうしてはいられません。早く彼を見つけなければ」

 そう云って、マーは立ち上がった。

「あなたたちは誰もいないところに身を隠していてください。私がシャイアさんを見つけだします」

「何を云っているんですか。逆ですよ、マーさんはここに隠れていてください。シャイアはボクたちが探します。あなたは仮面の進行を抑える研究をして、ボクたちが戻るまで持ちこたえてください」

 マーは小さく肩をゆらしながら、再び腰をおろした。

「すみません。私は外の世界が怖いのです。この能力じゃ、食われてしまうのが眼に見えていますから。アア……あなたたちの言葉に甘える私を許してください」

「ボクたちは仲間じゃないですか」

「そうよ。気にしないで」

 ついにマーは声を出して泣き出した。


つづく

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