第一部 第二章 大会崩壊と少年 その7
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今まで蠢いていた林立する鞭が、いっせいに直立姿勢をとった。血液の脈動がとまったような感じだった。
不安になるメテアとナト。と、そのとき、土煙に影が浮かんだ。呆然とする二人の前で、その影がピタリと歩を止めて云う。
「あなたがメテアさんね」
女性だった。流れるような黒髪。大きな瞳は裸眼で、素顔が美人だと物語っている。
「始めまして、私はディーテというの。カオスくんに助けられて、こうやって生き延びられた。あなたがカオスくんの恋人のメテアでしょ?」
「こ、恋人! いえいえ、ワタシは義姉です」
「あら、そう。な~んだ、よかったよかった」
「そんなことより、カオスたちはどうなったんですか?」
「うむ、俺もそれが気になって仕方がない」
メテアとナトの質問に、ディーテは振り返った。
「そろそろ――」
そう云った刹那、煙の中に複数の影が浮かんだ。
カオス、シャイア、アトロスの姿がそこにはあった。
「カオス!」
駆け出すメテア。
「いったいどうなったの?」
陰々滅々《いんいんめつめつ》といった様子のカオスが、振り絞るように云った。
「久しぶりに見たよ……シャイアの能力」
カオスの状態を見て、アトロスが続きを引き継いだ。
「カオス殿がディーテを助けたときだった。シャイア殿の能力が発動した瞬間、パイスの動きが止まった」
その続きはカオスがついだ。
「パイスはあの後、妄想の世界に入ったんだ。それがいったいどんな世界だったのか……。想像したくない……けどね」
「シャイア殿、気に入った。おぬしならば、あのラデスに勝てるかもしれん」
アトロスはシャイアの肩を豪快に叩きながら云った。
「あの……この人も仲間にはいったの?」
「よろしく頼む、伝説の闘士アトロスよ」
「よろしく頼む、伝説の剣士ナトよ」
ナトとアトロス、ゴツい男二人が、がっちりと握手した。
「なんか……暑苦しいわ……」
手を広げながら先に歩き出したメテア。
「さ、行きましょ、カオス――って、あんたたちさっきから何やってんのよ!」
ディーテがカオスに力強く抱きついていた。
「だって~、あなたは恋人じゃなくてお姉ちゃんなんでしょ。だから、カオスくんは私のモノよ」
「殺す」
メテアは肩をワナワナと震わせた。
「道中、武勇伝を訊かせてくれ、伝説の闘士アトロスよ」
「うむ。おぬしのもな。伝説の剣士ナトよ」
「うざい!」
キイイイイイっと発狂するメテア。
「それはそうとシャイア――」
カオスがディーテを引き剥がしながら云った。
「これからの予定はどうなっているの?」
「それなんだけど――」
全員がシャイアへと顔を向ける。
場が静まり返ったことを確認したシャイアは、指導者らしいどうどうとした声で云った。
「ひとり、どうしても仲間にしたい人物がいるんです。仙人サラノス、彼を探しに行きましょう」
☆
パイスは舞台中央でひざまずいていた。
その眼は狂気に光り、口からは意味不明な言葉が発せられていた。
「やった、ついにラデスを倒した。これで世界はボクのものだ。見てたかい、母さん? 見てたよね。これでついに、あなたに胸をはって――」
第二章 完
つづく




