ただの箱と嫌い
大人なんて嫌いだ
国家の裏を知る時、少年は新たな一歩を踏み出す。
それがたとえ、奈落の底へと続く道であったとしてもー
弟は産まれた瞬間から命の長さが決まっていた。大人が勝手に起こした戦争は第3種にまで影響を及ぼしている。
だから、大人なんて嫌いなんだ。
白夜は国家安全保障機関と書かれた西洋かぶれの大門を開けた。大門を開けたその奥には、きらびやかな円形状のエントランスが広がっていた。そこにいる人々は難しい顔をして立っている人がほとんどだ。ある人は右手の人差し指を激しく動かしながら苛立たしげに辺りを見渡しているし、またある人は煙管をふかしながら天井を見つめている。
これらの人はあの顔を隠し分厚い防弾ガラスの後ろにいる『受け付け』に『しばらくお待ち下さい』と機械的に言われたに違いなかった。この場所は表むき、戦争を友好的に回避し国の安全を守るという名目で組織された。だが、ほとんどの者はこの機関を『国家安全保障機関』ではなく『裏機関』と呼ぶ。それだけ、この機関は歴史の闇をそのまま映した様な場所だということだ。そんな場所の中枢に行くには見た目だけの『受け付け』に待ちぼうけをくらわされる訳にはいかない。
白夜は受け付けに向かって大門から真っ直ぐに歩きだした。白い髪に灰色の瞳は人目をひき、14、5歳に見える容姿は待ちぼうけをくらわされた人々を不審にさせた。
白夜はこそこそとかげでたたかれる言葉を涼しい顔で聞きながして、ただ真っ直ぐに歩いた。
無駄の多いみてくれだけの『箱』を歩いた。
この箱には表には知られていない独自のルールがある。それを守らなければ俺もあの大人の様に人差し指を激しく動かすか、ひたすら天井を見つめなければならなくなる。この情報を手に入れるのに大分苦労をした。いろいろなものを犠牲にして自分の心も全て対価にしてこの国の裏から情報を得た。幼い頃から商人として世界を歩き、時には武器の密輸に手を貸しては国一つを潰す原因をつくった。その全ては弟の『枯死』の原因と治療法を探すため。
弟を苦しめる原因を作った大人なんて大嫌いだ。
そして、何もできずただ見ているしかできない自分なんてもっと嫌いだ。
だから、俺はこの国の闇に染まってやる。
ただの『箱』、『箱』
なんの意味も持ってはいない。
そこで俺は生きていくんだ。
登場人物紹介
慧
この話の主人公。
妖怪を倒すことに固執しているもよう。
かなりの使い手。武器を使用するたびに記憶を失う。
壮絶な過去をもつ。性格的には大分歪んでいる。意外な一面も今後見えてくる予定。