(2)
数分の沈黙のあと、僕は自分の携帯でかけてみることにした。
着信している。あまり出て欲しくはない。しかも遠くで鳴っている音がする。そう病院の中から響いて微かに聞こえるのだ。10回ぐらい鳴らしたろうか。
そして、突然友達の携帯が出た。自分で言うのもなんだが、出るとは思わずに「うわっ!」
と、思わず声を出して、すぐに息を呑む。
「お土産もってこい!」
その一言で切れる。僕は怖くて声が震える。
「どうした?」
友達は怪訝そうに言う。
「おみやげもってこい!だと」
「幽霊が出たのか?電話に、どうしよう?」
「諦めようぜ」
「嫌だって」
「おれはやだって」
「おれだってひとりじゃいけないよ」
辺りはすっかり暗くなり、僕らの会話だけがその敷地で響いている。そこにいるだけでも怖かった。
僕は妥協案として、明日の昼間とりに行くことを提案した。すると
「おみやげ持って行ったほうがいいのかな」
友達は殊勝に言う。妙な話だ。幽霊は確かに「おみやげをもってこい」と言った。
ゆうれいに言われておみやげを持っていく。そんな話聞いたことはない。
僕は思案に暮れていると携帯が鳴った。
着信を見ると友達の携帯だ。僕は怖くなって、電源を切ってしまった。
「今日はとにかく帰ろう」
「うん。そうだな」
僕らは怖気づいていた。そして、帰途に着いた。
その間、僕はまた行かなければならないのか。お土産なんて持っていかなければならないのか。まるで合理的理由もない考えをひたすら巡らせていた。