Prologue4:「――State secret――」
その日は、透き通るような星空が見える夜だった。
大きな満月と無数の星々のみを灯りとし、アナテマ大陸の大地と人々を照らしていた。
そして自然の灯りの下、1組の旅人がゆっくりと移動していた。
整備されていないのだろうか、小石が所々に落ちており、背の高い雑草が道の両側を覆っていた。
ざしっ、と雑草を踏みしめながら歩くのは、まず男だ。
黒い外套で身を覆っていて、金髪紫瞳の男だ。
その背には小さな女の子を背負っており、こちらはすやすやと寝息を立てていた。
「…………そうか」
その時、両側の雑草が揺れた。
男はまるでそれを予測していたかのように立ち止まり、静かに頷いた。
ずり落ちかけた女の子を背負い直す余裕すらある、周囲を取り囲まれても男は自然体だった。
もう一つ、男の周囲えお取り囲んだのは……茶色の髪に、菫色の瞳をした人々だった。
その全員が、軍服とローブを一体化させたような制服を身に纏っている。
「キミが来たのか」
正面を塞いでいた人々が、さっと左右に割れる。
その向こうから姿を現したのは1人の少女だった、鉄面皮のように固い表情を浮かべている。
17か18か、年齢としてはそれくらいだろうか、その場にいる誰よりも若い。
もちろん、男が背負う女の子は例外だ。
男は少女の足元に目をやった、そこには少女が履く靴がある。
だがそれは靴と言うより、金属製のブーツと言った方が正しいだろう。
少女が一歩歩む度に金属質な足音を響かせるそれは、何かの鉱物を加工した特別な物だとわかる。
薄く赤い、奇妙な鉱物の。
「…………」
少女は男の目の前で立ち止まり、彼をじっと見上げた。
男はそれを静かに受け止める、数秒の間、2人の間で何かが燻ったように感じた。
「……!」
そして次の瞬間、赤の一閃が空間を裂いた。
正体は少女が放った蹴りであり、その蹴りは男の首を狙ったものだった。
だが少女の足先は、男に触れる直前で停止していた。
薄く赤い障壁のような何かに弾かれた足を引き、ぐるりと回った後に着地する。
「…………」
目を細めて見つめる先は、男の胸元に揺れる首飾りだった。
赤い宝石のそれを見つめながら、少女は蹴りの体勢から元の姿勢に戻った。
その時には、逆に男が歩みを再開していた。
「追いたければ、追ってくれば良い」
肩を掠めるように擦れ違う一瞬、凍ったように動かなかった少女の表情が僅かに動いた。
「けど、僕はもう……戻らない」
「…………」
目を伏せ、拳を握り。
周囲の仲間達の戸惑いを一身に受けて、しかし。
「…………さま」
しかし、少女は追わなかった。
満月の大きな、そんな夜のことだった。
――――そして、時は流れる。
最後までお読み頂きありがとうございます、竜華零です。
今回は皆様にお知らせがあります。
5月5日掲載の活動報告と重複する内容です、ご注意下さい。
内容については、竜華零おなじみ、キャラクター募集です。
「アナテマ・サーガ」のキャラクターを募集します。
詳細は以下の通りです。
<レジスタンス・メンバー募集>
アナテマ・サーガ内に出てくる「クルジュ旧市街及びフィリアリーン聖王国」の自治・独立を支える人材を募集します。
平たく言えば、主人公組を支える初期メンバーを募集しています。
イメージ的には、剣と魔法の中世ヨーロッパ風ストーリーに出てきそうなキャラクターの募集です。
条件:
・投稿はメッセージのみでお願い致します、それ以外は受け付けませんのでご了承ください。
・締切は2014年5月12日の18時までです、それ以降は受け付けませんのでご了承ください。
・ユーザーお1人につき、キャラクター1名まで。
・名前、年齢、性別、容姿は最低限記載してください。さらに性格・背景・職業などあれば完璧です。
※原則は「フィリア人」の募集です。「ソフィア人」である場合は相応の理由を記載して下さい。
注意:
・投稿キャラクターは必ず採用されるとは限りません、また不採用のお知らせも致しません。
・戦争という題材を扱う以上、投稿キャラクターが死亡する可能性が相当数ございます。それを織り込んで投稿して頂けると幸いです。
*死亡状況に対する希望があれば、投稿時に記載をお願いします。ただし、こちらも採用されるとは限りませんのでご了承ください。
・投稿・相談は全てメッセージにて受け付け致します、それ以外は受け付けませんのでご了承くださいませ。
それでは、宜しくお願い致します。