話す事
魔王城の城下町にある隠れた名店『bar堕天使』。カウンターの席に座り酒に飲まれた女がいた。店主は言う。
「お客さん飲み過ぎですよ」
コップを拭きながら女の方をみた。しかし女は子供の様に駄々をこねる。
「いいの!今日は飲みたいの!マスターおかわり!!」
女は飲むのを止めない。というか止められない理由があった。
魔王城でアルバイトしてから2日たったけど今にも辞めたい気分、そもそも2日たったのにまだ1回も悪魔の姿を見ていないし、そんな事どうでもいいけど理不尽過ぎる。私は悪魔じゃ無いのになんで悪魔扱いされなきゃいけないの…
心の叫びである。
軽く一升瓶を飲んだであろう。それでもまだ足りない。そんな事思ってる時1人の男が声をかけてきた。
「そんなに飲んだら死ぬぞ」
女は男を見た。けしてイケメンでは無いが酷いブスでもなく普通の顔をした男だ。男は女の隣の席に座り
「マスターこの隣の女と同じのをくれ」
「畏まりました」
マスターは軽く頭を下げ酒を作る。
「酒飲んだってなーんにも解決しねーぞ。話してみろよ楽になんぞ」
「なんで名前も知らない人に話さなきゃいけないの」
「名前も知らないからこそだよ」
男はマスターが作った酒を飲んだ。
「焼酎か…ロック?」
「水割りです」
男は満足そうに酒を飲む。女は警戒した。名も知らない男と飲むことは身の危険を感じろっと知り合いが言ってたなっと女は思った。
「まぁ、話せば楽になると思うぞ。酒ガバガハ飲むよりは」
男はニッコリ笑う。
女も酒の勢いに任せて不満を男にぶつけた。
「成る程…マニュアル通りにやっても処理出来な」か…」
「それだけじゃ無いわよ、意味わかんないクレームばっかつけてくるし、そもそもなんで魔王がテレアポやってんのよ!」
女はグラスに入った酒を一気に飲んだ。更に愚痴は続く。
「大体ね、時給三千円ってのもおかしいのよ!あんな内容ならもっと時給あげろってんだ!」
「なら君は時給を上げてもらえる仕事はしたかい?」
唐突に言ってくる男
「色々話しを聞く限り、君の愚痴は全部わがままだ。本当に君はクレームを処理する気は有るのか?」
「お説教ですか」
「んいやクレーム」
少しイラっときている女。そんな事も考えずに男は言う。
「確かにマニュアル通りにはいかない。でもそれを処理するのが君たちの仕事だ。例え入社2日でもこの世界に入ったからにはプロ意識をもってやるべきだろ」
「それは…」
言葉が詰まる。確かに自分はこの2日で一件もクレーム処理出来ていない。マニュアル通りにやれば何とかなると思ったけどそうでもなかった。
「君の常識は捨てろ。この世界の常識を知れ。そうすれば一件位は解決出来るんじゃない」
気付けばおつまみは無くなってた。
「だったらどうすればいいの?どうすれば上手くいくの?」
「それは…わからん。自分の勘で動け!」
全く解決にもならなかった。