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ゆとりなのでハードモードはご遠慮したい。

何気に、書き始めて少々たったけれど、主人公のツバキの性別をまだ決めてなかったり。


眠い、頭が重い。顔の所に何か重い物が乗っかっている。


結構な重さだ20kgくらいあるかもしれない、ボクは寝ぼけた思考でその謎の物体へと手を伸ばす。


閉じた視界の中手探りで伸ばした指先にさわさわとした毛玉が触れる、暖かい。


キーッ、キキキー!!


甲高い声が耳元で響く、頭が一瞬強く押さえ込まれた後、重さが無くなる。


ボクは慌てて飛び起きた。


木に駆け登る影を見つける。


影は木のかなり高い所から出ている枝に飛び付くと、警戒するようにこちらを見つめている。


猿だ、なんと言う種類かは分からないがアイアイに似ている、大きな目と丸まった耳が可愛かった。


しばらく見つめ合った後、ここはどこだろうと辺りを見渡す。少なくとも猿は今まで居なかった。


木漏れ日が射し込んでくるぶし辺りまでの高さの草場を若草色に染め上げている。周囲は立ち並ぶ木々、遠くに行けば行くほど暗くなっているように錯覚する、見える範囲でここから抜けられそうな場所は見当たらない。


深い森の中にぽっかりとできた、小さな草原そんなところだろう。


確かにボクは街の中に入ろうとしたはずなのにどうしてこんな所に居るのだろうか?


ステータスウィンドウを開くように頭の中で命じると、いつもの様に、虚空に半透明な板が現れて、そこにボクのステータスが表示される。


その端にある『地図』を意識の中でタッチする。


すると、もうひとつ透明な板が現れる、それには、中央に[nodata]と表示され、下の部分に、現在地:????????、と記載されていた。


ここはどこかのダンジョンの中だろうと推理する。


通常、地図を開くと必ず、周辺の地形が表示されこの地の名前が書かれている。例外は、ダンジョンの中のみで、そのダンジョン専用の地図を買うか、『マッピング』のスキルを使うと表示される。


そのためボクはここがどこかのダンジョンの中だろうと推理した。


そこまで考えると、この事態も大体予想ができる。何かのイベントに巻き込まれたのだろう。


なぜ断言出来るかと言うと、以前にも似たような事が有ったからだ。


ギルドクエストと言う、ギルド限定ので受けられるクエストの一つに、ギルドメンバー10人が転移魔方陣に乗ると一人一人がダンジョン内の別々の場所に飛ばされてマップもチャットもフレンドリストも禁止され、しばらく目的地まで一人で行かないといけないという物があった。


それを思いだし、フレンドリストを開いて見ると、こちらも[nodata]と表示されている事から恐らく間違いない。


そうなると、大体今の状況が読めてくる、今はサービス開始三周年の為に沢山のイベントが開かれている、それに知らず知らずの内に巻き込まれたのだろう、たぶん、街に入ると同時にランダムでこのダンジョンに飛ばされる様になって居たのだろう。


となれば、イベントをクリアすれば良い、何だ簡単じゃないか。


・・・・・・


・・・・


どうしたら、クリアなんだろう。



普通、クリア条件とか、このイベントの目的とか説明あると思うんだけどなぁ。


もしかして、イベントを沢山の用意しすぎて、一つ一つに手が回らないまま時間がきて、イベント内容の作り込みが中途半端な状態とか?


アーククラフトオンラインでは珍しいけれど、他のオンラインゲームでも時々あるしな。


取り敢えず、動き出さない事には何も始まらない、まずは装備を変えよう。


今の装備は、手作りのシャツとズボンと靴、製造スキルの練習で作った物で店で売っている物と見た目も性能も変わらない。ゴツゴツとした鎧姿で釣りをしたく無いから、釣りをする時はいつもこの格好だ。


それと釣竿だ、転移後、気を失っているのにも関わらず握ったままでいたようだ。


頭の中で、[装備セット01、選択変更]と唱えた。


アイテム袋の中にある装備にあらかじめ設定をして置くと、頭の中で念じるだけでその装備に早着替えできるのだ。


そう、今、この瞬間、服と釣竿が霞のように消え入れ替わるように鎧と武器が・・・・


変わらない、装備が入れ替わらない。慌ててアイテム袋の中を確認すると、空っぽだった、口を下に向けて振っても埃一つ出てこない。


それどころか、アイテム袋自体も只の袋になってしまっているようだ。


アイテムの消失、高価なアイテムが入ってたわけでは無かったので、それほど悲しくは無いが、装備品が無くなったのは厳しい、いつモンスターが襲って来るか分からない状況だ、丸腰でモンスターに立ち向かうなんて無謀すぎる。もちろん釣竿に攻撃力何てものは無い。


とあえず、モンスターに見つからないようにして武器になりそうなものを探しながら、何処かに移動しよう。


先ほど居た、猿はもうどこかへ居なくなっていた。


ボクは身を屈めながら、モンスターに見つからないよう周囲に気を配りながら森の中へと移動を開始する。


こう言う時って小説とかだと、思いっきりモンスターと鉢合わせしたりするんだよな。何て考えつつ移動する。


幸い小説のセオリー通りの展開にならずにほっとしていると、顔に粘着性のある何かが引っ付いた、ボクは慌ててそれを手で取ろうとするがなかなか取れない。


何だろうこれ、髪や手に引っ付いて、細い糸のような物が網の目の様に広がっていて、まるで、蜘蛛の巣の・よ・・うだ・・・。


思考の停止、固まった視界の中にボクの手が見えた、手の甲に百円玉くらいの大きさの蜘蛛が居た。


「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

モンスターに見つかる可能性など吹き飛んで悲鳴を上げる、ボクは虫が大の苦手なのだ、必死になって、両手で蜘蛛を払い落とす、当然、釣竿を落として、バランスを崩し尻餅を付いた。


そのままの姿勢で転がった釣竿を取ろうと手を伸ばす。


カサカサカサカサ


腐葉土の上をムカデのような足のたくさん付いた虫が歩いているのを見付けた。


「イャァァァァァァ!!」


二度目の絶叫。


竿を掴むと全力でその場から逃げだす。


あの足のうぞうぞっとした動きとか、寒気が走る。


森は嫌だ、虫の宝庫じゃないか、カブトムシだって怖い、ボクの虫嫌いを舐めるなよ。あいつらの足は触れると無茶苦茶痛いんだからな。


脇目もふらず木々の中をすり抜けていく。途中に狼っぽいのとか居たけど気にしない、向こうも突然現れた存在に呆気にとられたようで、そのまま何もせずに見送ってくれた。


武器も防具も道具も無い、おまけに、虫がうじゃうじゃ、何だよこのハードモード。


しばらく走ると森の奥の方に光が見えた、出口だ。


熊っぽいのとか、とても大きな蜂とか居たけど、全部振り切ってその先を目指す。


今までなら半径100m内のモンスターの位置なら意識を向けただけで分かる機能が備わっていたのに、それが働いていない事に気づく余裕は無かった。


森の最後、二本の木の間を勢いよく飛び出す。薄暗かった世界へ一気に明かりが灯される。


眩しい、目がまだ慣れてない。


二、三度のまばたき、そして広がる視界一杯に広がる蒼。


海だ。


その雄大な光景に状況を忘れて感動する。


が、長くは続かなかった、何だか視線が自動的に低くなっていくのだ。


足元に何かを踏むような感覚がない、下を見ると地面が無かった。


状況確認。


「落ちてるううぅぅ・・。」


幸運にも足から着々するも、勢いを殺し切れずに本日二度目の尻餅をつく、お尻が痛いです。


涙目になりながら周囲を見渡す、ここは波打ち際の岩場のようだ。振り向くと10mくらいの崖がそびえ立っていた。


よく無事だったなと、体の調子を確かめる、ケガも骨折も無いようだ、あるのはお尻の痛みくらいだ。


一息ついて、さてどうしょうかと考える。視線の先には海があった。


突然、森の中に移動して、虫とかいろいろで出てきて、ストレスが溜まりまくってるんだよね。


ここは少し、リフレッシュとか、癒しが欲しいよね。


冷静になって今の状況を考えると、いい答えが出てくるかもしれないし。


ちょっとだけなら、いいよね。


ボクは、あれだけ走ったり、落っこちたりしたのに、奇跡的に折れていなかった釣竿を片手に、うきうきと適当な岩場へと歩いて行った。


この光景を誰かが見ていたらきっとこう言っていただろう、現実逃避だと。

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