閑話 :ちょっと未来のどこかの王都風景01
本編がうまく書けないからと
外伝を書いてしまった。
今回出てきた二人組みの正体が分かるまではがんばって書くぞ。
・・・・名前が出てるほうは即出てくる予定なのに、この執筆速度だといつになるか・・・・
お祭りの時期ってのは、何を勘違いしたのか場違いな格好で場違いな所に現れて、ひどい目に会う奴ってのが結構居やがる。
俺様の少し前で物珍しそうに周囲を眺めている少女が正にそういう奴らの一人だろう。
身長は160くらい、整った顔立ちで、茶色だが光の加減で金髪にも見える不思議な色の長い髪をサイドテールにして結んでいる、髪と同色の瞳は大きくクリクリとしていた、小顔で、幼いと言うほどではないが、綺麗と言うよりかわいいと言う言葉がよくにあってやがる、手足も細長く、筋肉もついてるようにも見えねえし、とても荒事に耐えられるとは思えねえ。
そして、特に注目すべきはやはりその格好だ、白く大きいぼろ布に三つ穴を開けて、そこへ両手と頭を通しただけっていう、若い娘がするには相応しくない姿をしてやがる。
一見、浮浪者にも見えなくもねえが、彼女の肌た髪には垢や汚れは一切なかったし臭もしなかった、着ている布に関しても同様で、浄化の魔術が使われている事がうかがい知れた。
純白のボロ切れを纏った清潔な少女なんていうちぐはぐな姿だ、どこへ行っても違和感のありそうな姿だが、特にここでの違和感はひでえ、なんといってもここは闘技場、観客の方ではなく闘う方の会場、しかも、年に一度の武術大会その第三ブロックの予選会場だ、鍛えた筋肉に豪胆な武器を携えてガッチガチに鎧を着込んだ奴らで溢れかえってやがるのだ、周囲にぶつかれば倒れそうな細身に布一枚、とても戦えるような姿じゃねえし、魔術師って言われても流石にそれだけの軽装はありえねえ。
そんな、この場に全く似合わねえ格好をしてる訳だから当然、目立つわけよ、悪い方に、ここからざっと見ただけでも10ほど、視界の外からはさらに多くの奴らが少女に目を付けてやがる。全員男だ。
迷い混んだ子ウサギを保護しようなんて優しい視線じゃねえ。
布を被っているだけだからぶかぶかのはずなのに、よほどデカイのかしっかりとその二つの存在を強調している胸と、長さが合っていないために膝上くらいまでの長さしかない布、それが、少女が動くたびに揺れ、中が見えそうになる。
これほど扇情的な姿を見せられて反応しない男もなかなか居ないだろう、なめ回すように、少女へ視線を送っては、この獣達の巣に迷い込んだ哀れな子ウサギをどうやって料理しょうかと頭の中はいっぱいだろう、気付いて無いのを良いことに下から覗き混もうとしている強者も居やがる。
「お待たせいたしました、これより第5回ヴァルミス王国武術大会第三ブロック予選を開催いたします。」
少女に注目していたせいか、時間を忘れち待ってたみたいだな、いつの間にか、大会のスタッフが声を張り上げていた。俺様は自前の武器を持ち直すと、少女を見ながら、説明に聞き入った。
「それでは、ルールを説明いたします。今みなさんが立っておられるリングより出られる、または、気絶、死亡された方は失格となります。むろん、棄権していただいても構いません、命の危険があることなので今すぐ棄権していただいても結構です。武器と魔法の使用制限はありません。本ブロックより勝ちあがれるのは、最後までリングに残って居られた一名のみです。なお、致命的な怪我や命についてはこちらでは保証いたしませんのでご了承ください。」
しかし、俺様はラッキーなブロックに当たったようだ、勝てばもちろん本線にあがり、1回戦で負けたとしてもある程度の名声は得られる、負けたら、負けたで、ご褒美が待っている。
どこにご褒美があるかって? 目の前に立っているじゃねえか。
「それでは、鐘の合図とと共に開始いたします。」
予選のどさくさにまぎれて少女を気絶させた後、人目の着かない所へ運んで、後は、ねっとりと良い事して楽しむって事よ、ここの闘技場は無駄に大きいからそういう所が探せばごろごろとある、大会のスタッフは俺様達を注目する余裕なんてないだろうし、正義の味方ヅラした奴らだって、今は大会に夢中だ、不幸な少女が一名行方不明になったとしても誰も気づかねえ。
数人の奴らが下品な笑みを浮かべて、女との距離を少しずつ詰めて行ってやがる、周囲から見たら俺様もそいつらと全く同じ表情をしていることだろう。
「それでは、始め!!」
どわぁぁぁぁぁぁぁあぁん
大型の鐘の低く腹に響くような音が会場に広がる。
同時に俺様達は、女を目ざして動き出す。
そんな俺様達には目もくれず、女は、右足を振り上げた。
スラリと長くとても健康的な足だ、ここからじゃあ角度が悪くて見えねえが、運良く女の正面にいた奴らは、股を覗き込んで「うほっ」とか気持ち悪い声を出していやがった。
まあいい、直ぐに気絶させて、俺様も楽しまさせてもらうとするかな。
真っ直ぐに天に向かっていた足は、そのまま反転して地面へと叩き潰すように踏み込まれた。
揺れた。
地面に踏み込んだ衝撃で女の胸が揺れたわけじゃねえ。
大地が揺れた、世界が揺さぶられた。
体のバランスが崩れ、慌てて立て直そうとするが遅かった。
地面の感覚がない、空中に吹き飛ばされたのだ、俺様はなんとかそこまで理解して、そのまま気を失った。
次に気がついた時、俺様は闘技場にある医務室のベッドの上だった。
俺様は、体が動くまで回復したあとベッドから抜け出して、第三ブロック予選の会場にいたスタッフを見つけ出すと、あの時何が起きたか聞いた。
少女が右足を地面へ踏み込んだ瞬間、そこを中心に凄まじい量の魔力と衝撃波が会場全体へ放たれたのだそうだ、リングは粉々に砕け散り、その上にいた参加者達は全員、天高く吹き飛んだ。
スタッフ達は、吹き飛んだ者たちの命はないものだと思ったそうなのだが、全員、ケガ一つなく気絶しただけの状態で倒れていたそうだ。
そうして、ただ一箇所、破壊をまぬがれたリングの上に一人立っていたあの少女が問答無用で本ブロックへ上がったそうだ。
あの少女は一体何者だったのだろう、彼女にしでかそうとした事を思い出して、下手な事で手をださないでよかったと胸を撫で下ろすのであった。
◆◆◆◆◆◆
小刻みに震えている右手を左手で押さえ込む。
怯えて震えている訳ではない、武者震いって奴だ。
次の準決勝で対戦する相手が強い、強すぎるのだ。
落ち着け、俺は武術大会2連覇の強者、アイン・クライフトだろうが。
知り合いに言わせれば俺は戦闘狂らしいが、決してそんなことはない、ただ単に、強い相手にどうしたら勝てるか、相手にスキがないか、もっとうまく動けないかとかを考えながら、命を張ったギリギリのところで勝か負けるかの勝負をするのが好きなだけだ。全く失礼な話だと思わないか?
最初に奴の試合を見たのは単なる偶然だった。
事前に優勝候補の一角と言われていた相手、俺の三連覇の夢をはばむ可能性が高く、本来なら次の試合で対戦相手になるはずだった相手だ。
他人同士の戦いを観るのも好きな俺は、観戦のついでに相手の顔でも見ておこうと考え、第一回戦の試合を見に訪れた、ちなみに俺はシードで二回戦からの参加だ。
その試合が始まる前の感想をいえば軽い失望だった、優勝候補と言われている奴は、フルプレートに身を包み大斧を持った巨漢の男で身長は2m50以上、何食ったらそんなにでかくなるんだよと突っ込みたくなるでかさだ、それに対するは、少女、1m60も無いくらいの小柄で鍛えているようにも見えなかった、装備も武器もなし、とても話にならない、一方的な試合になって即終了だろう。無論、一方的に勝つのは、斧男の方だ。
しかし、少女はどうやって予選を突破したのだろうか、予選とはいえ並みいる猛者ととてもまともに戦えたとは思えないが、
そう思い少女を見ると、とても格好がおかしい事に気づいた、履いてないのだ下を、いや、ヤバい方でなくズボンだ、上はワンピースとでも言うのだろうか、一枚の布に穴を開けて腕と頭を通したものを着ている、色はオレンジで背中に白地に黒色で○の中に『亀』と書かれてある、文字ののようにも思えるが何かの絵だろうか?、丈の長さが異様に短く膝上少しまでしかない。
ワンピースを押し上げる胸と、きわどいラインの膝上、アレか、恥女か、変態なのか?
あれで、予選相手を悩殺でもして隙をついて全員倒したのか?
だとしたら、予選の奴らもバカばっかりだったんだな、しかし、少女よ、そんな搦手が通じるのは予選までだ、本ブロックに勝ち上がった奴らにはそんな色仕掛けなんぞ通用しないぞ。
などと、思っていたのも試合が開始されるまでの事だった。
最初に仕掛けたのは斧男の方だった、おそらく俺と同じような事を考えていたであろうやつは、少女に一気に近づくと手に持った大斧を振り下ろす、少女の数センチ隣にだ。
あまりの勢いにリングに斧が突き刺さり大量の破片が舞う、明らかに威嚇、少女がその見た目通りの存在だったなら、今ので戦意喪失、あるいは、気を失っていたであろうもの。
しかし現実は違った。少女は微動だにせず立っていた、急な事で全く反応できなかった訳ではない、相手の攻撃が自分に当たることがないと理解した上で動く必要がないと判断したのだと、長年戦いに身を置いてきた俺の感覚がそう確信させた。
膨大な量の土属性の魔力を感じ取った。魔法については専門ではないが、何度か魔法使いが上位の魔法を使ったところを見たことがある。それに似たような感じだ。
斧男も威嚇が意味をなさない事に気付いたか、魔力に気づいたかは知らないが、体制を立て直し距離を取ろうとする。だが、遅い、大斧を勢いよく叩きつけすぎだな、反撃に合う可能性を一つも考えていなかったんだろ、俺もそうだし。
少女が一歩踏み込み、大男の腹へ向かって拳を振り上げる。
先ほど感じた魔力が拳に集中していた事を、大男の腹に拳が突き刺さった瞬間に気づく。
「は?」
思わず声に出た。大男が天高く舞った。少女の拳撃で吹き飛んだのだ。
リングから観客席までの高さが約5M、その位置からでも首をほぼ真上に上げなければ大男の姿を捉える事ができない、一体どれだけの高さまで上がったのか。
小柄な少女、とても鍛えているように見えないその容姿から放たれた圧倒的な威力を持った一撃、常識が制御をかける、あまりの事に思考が追いつかない。
ようやく落ちてきた大男。その視界の端に、反対側の観客席の人間が見えた。限界まで目を見開き、口をあんぐりとあけたその様を、驚いた時ってのは本当にあんな顔になるものなのだな。などと、どさり、と落下音が響くまでぼんやりと考えていた。
静寂。全員の思考が停止している中、少女が審判に声をかける。
ようやく、我に返った審判が少女の勝利を告げているが。俺の頭の中は、あの少女と戦ってどうやったら勝てるだろうか、そんな事で頭が一杯だった。
ちなみに、大男だが、あれだけ吹き飛んだにも関わらず、気絶だけですんだそうだ、タフなやつめ。
武術大会2回戦、俺が注目したのは当然、あの少女の試合だった。
対戦相手は、いかにも魔法使いですといった姿の爺さんだった。
試合開始の合図と同時に爺さんの姿が消えた。瞬時に気づく、居た、リングの端、上位魔法『瞬間移動』を使用し移動したのであろう爺さんは、既に、初級魔法『火球』を20個ほど作り上げ空中に待機させていた。
俺は爺さんの実力に驚愕していた。魔法にはあまり詳しくないがそれでもわかる。魔法という奴は、発動するのに詠唱が必要で、爺さんのように、詠唱を省略して瞬時に発動させるには、かなりの技術が必要だという、ましてや、初級、中級、上級、最上級とある魔法のうちの上級を省略したのだ、途方もない実力だろう。ましてや、初級魔法とは言え瞬時に20個もの『火球』を作り出す奴なんて聞いたこともなかった。
とんでもない実力者だった、王国の宮廷魔術師であったとしてもあれほどの実力者はいないかもしれないと思える程だ。
爺さんは、『火球』40個ほど貯めると、その中の1個を少女へ向かって放った。
爺さんも、第一試合の噂は聞き及んでいるのであろう、油断なしにまずは相手の実力を測ろうという魂胆だろう。
飛来する火球を、少女は、量は少ないが一回戦と同じように魔力を纏わせた拳で弾く。
俺は確信した、悪手だ。
通常の矢などなら問題なかっただろう。だがこれは魔法だ。
ぼん
爆発。
腕が吹き飛ぶまでは無いにしても、とても無傷では済まないだろうと考えていた俺は、再三驚愕した、弾いたのだ、爆発ごと。
火球の爆風は、まるで自ら逃げるかのように、弾かれた方へ歪な形で広がってゆく、当然、少女には傷一つ、埃一つ届いていなかった。
爺さんも驚いていたようだ。普通は避けるか、魔法防御するかだからな。
次に爺さんは、待機させていた火球を連続で放ってきた、飛ばした分が直ぐに補充される事から、実質、魔力が続く限り無限に放てるのだろう。
次々に飛んでくる、一般人なら一つで致命傷になるであろうそれを、少女は、的確に弾いてゆく、ひどく自動的に、まるでそういう機能を持ったゴーレムの様だ。
少女が歩き出す、爺さんに向かって歩き出す、一歩一歩確実に。その間もこなされてゆく作業、弾かれた爆煙が広がってゆく、しかし、少女の姿を覆い隠すことは決してない。
少女との距離が、あと三歩ほどとなった時、爺さんは空中にとどまらせていた火球を一気に放った。
爆炎に包まれる少女。爺さんは『瞬間移動』でリングの反対側に移動し、初めて詠唱を始めた、今の攻撃で倒せたと楽観できるような相手ではないのは確実だ、ここで一気に倒す気なのだろう。
早い、ほかの魔法使いよりも圧倒的に早い詠唱で、魔法が放たれる、最上級魔法『豪炎砕流』
あの爺さんとんでもないもの使いやがった、『豪炎砕流』の魔法は通常3人以上の複数で唱えるそれを一人でやったこともそうだが、問題はその威力だ、個人に使う呪文じゃ決してない。
以前、戦争に使われて一度で1000人もの人間を焼き殺したと言われる呪文だ、あんなもん少女に対してに使うのもそうだが、観客だってただでは済まない確実に巻き込まれるはずだ。
どごぉぉぉぉぉ
ものすごい熱気がここまで届く、紅蓮の塔が立ち上り、横へ広がって巨大な城壁となる、そのまますべてを押しつぶさんと、一気に広がってゆく。
リングの中が爺さんの周辺以外炎に包まれる。完璧な制御、リングの外へは、全く漏れていない。
死んだのだろうか、俺なら間違いないが、あの少女は生きているような気がする、それも何事もなかったかのように平然と立っていそうだ。
炎が引いた時、その予感が現実になったと知る。
無傷で立つ少女へと何か悟ったような表情の爺さんが更に魔法を放つ、あれだけの大呪文を使った後、まだ、魔法が使える事に驚くが、流石にこれが限界なのだろうとなんとなく察する。
対する少女は、体を腰だめに構える。
「は」
両手を合わせ、少し間をあけそれを腰の横へと持ってくる。
「め」
手と手のあいだに魔力が注がれて行き球体なる。
「か」
球体にどんどんと魔力が集まってゆき、光を放ちはじめる。あまりの輝きに中心がよく見えない。
「め」
詠唱なのだろうか、先程から少女が何かを叫んでいる、いや、これは魔法じゃない、それとは決定的に違う何かだと俺は直感した。
「波ーーーー!!」
少女の両手が前へと突き出される。それと同時に放たれる、魔力を纏った球体は、一直線に爺さんへと飛んでゆく、射線上にあった魔法なんぞ、跡形もなく消し飛んだ。
球体は爺さんにぶつかると、そのまま、リングの外へと飛んでゆき、爺さんをリング外へ弾き落とすと闘技場の外へと飛んでいった。
あの球体が、火球のように爆発したら一体どれほどの威力になっていたのだろう、ふと、そんな事が頭によぎった。
負けた爺さんの怪我は腰を打った程度だったが、なんだかひどく落ち込んでいたそうだ。爺さんあんたは悪くない、あんたはすげぇよ、相手が悪かっただけだ。
そして、準決勝
俺の目の前にその少女がいる。
腰に挿した剣の柄を持つ手が震える、いったん収まったと思ったが、相手を見たら武者震いが再発しやがった。
確かに相手は強大だが、対策がないではない、いや、通じる可能性がある方法があると言ったほうが言いな。
試合開始と共に、全力で最速の斬撃を叩き込む、ただそれだけだ。
俺の速度に相手が対応できるかどうか、それだけの勝負。
俺は無意識に剣の柄を握りこむ。俺の倒してきた数々の魔獣の牙を一つに纏めて、この国で最高と呼ばれた鍛冶師に鍛え上げられた剣、層獣牙グラインズ、これを無心で叩き込む。
まあ、ダメだったら、さっさと降参するがな、勝ち目のない戦いをだらだらやるつもりは無い。
「よう、一つ気になっている事があるんだが、聞いていいか?」
俺は、興奮する内心を落ち着かせるために、軽く言葉を紡ぐ。
「なに?」
少女が答える、声の抑揚はないが、見た目の印象通り、年相応の声に少し安心する。
「あんた、なんたってそんな服着てるんだ。」
俺の問いに、少女は少し不思議そうに答える。
「武術大会、出る時、この服装が正装、アーシェ言った。服色、オレンジ染めた、背中マーク書た。」
円の中に『亀』という形の謎のマークを書かれた背中を見せる。
つまり、大会に出る時にはその格好が正装だとアーシェとか言う奴が言った。と?、んな正装ねえよ、と心の中で突っ込んだ、なにやってんの、なんにも知らない奴に適当なこと吹き込むな。
「あんまり、丈が短いのは問題だと思うがな。激しく動くとパンツが見えてしまうだろうし」
・・・・・・
・・・・・・
「パンツ?」
いや、いや、いや
「し、下着だと思うが・・・」
「・・・見た、こと、ある」
見たことはあるって、履いてないのかよ、アーシェとか言う奴ちゃんと教えておけよ、てか、保護者じゃないのかそいつは、ダメダメだろう。
俺は体の力がいい具合に抜けるのを感じた、若干抜けすぎのような気もするが。
「そ、そうか、まあ、この試合全力で行かせてもらうからよろしくな。」
俺の言葉に、少女は答えず。
審判がそろそろかと雰囲気を察したのか、俺たちの間にゆっくり立ち、口を開く。
「それでは、ヴァルミス王国武術大会準決勝を始めます。」
俺は表情を消し、心を沈め、剣を構える。試合開始の合図とともに飛び出せるようゆっくりと力を溜め込んでゆく。
「始め!!」
パリン
今までの人生でこれほど早く技を放った事があっただろうか、いやない、正真正銘、俺の最高速度、最高の斬撃。しかし、少女はそれさえも対応してみせた。
俺の剣が彼女の首へ届く前に、間に差し入れられた裏拳。
それは俺の愛剣を粉々に打ち砕いた。
ただの一撃、されど一撃、俺の全て叩き込んだそれを、いなされたのだ、俺は自らの敗北を感じた、まあ、どちらにしろ剣を砕かれたのだからどうしょうもないが。
「降参。」
俺が剣に気を取られたのが悪かったのだろう、一瞬動きを止めた俺が負けを宣言する前に、少女の方が負けを宣言していた。
「は?」
この大会が始まって彼女に驚かされたのは何回目になるだろうか。
「な、なんでだ?」
辛うじてそれだけ声が出せた。
「3位の賞品、欲しくて、大会出た。」
「元々準決勝で負けるつもりだったと?」
「そう」
あまりの自体に力が抜けた、おいおい、それでも普通その3位で辞めるか?、優勝、いや2位、だったとしても、三位より良い賞品に多い賞金と名声や国への士官話。三位の賞品が欲しいのなら、勝った後から交換を持ちかけもいいだろうに。
まあいい、あんまり考えると体に毒だ、とりあえず、勝ち上がった事だし、俺の大会三連覇の夢が戻ってきたって訳だな。
あ。
「剣」
思わず声が出た、剣がなくては戦えないからな、仕方がない性能は数段劣るが普通の剣を買いに行くか。
「ごめん」
俺のつぶやきが聞こえたのか少女が謝ってきた。
「前、マスター、使った、技、真似た、上手く、手加減出来なかった。前試合、波も失敗」
つまり、前にマスターとか言う奴が使った技を真似ただけなので上手く手加減ができなかったと?、前の試合の球体も真似ただけで、しかも失敗したと?
しかも、ものすごく申し訳なさそうに顔をうつむけている。
もういい、もう驚かない、普通、見ただけであれだけ真似できるような類の技じゃない事はたしかだしな。
なんだか、すっきりした気持ちにもなってきた。
俺はそのまま立ち上がると、控え室へ戻ろうと歩き出した。
「待って。」
少女に止められる。
「今、アーシェ、連絡。」
こんな所で連絡?ああ、念話か。
そんな事を考えていると、突然、少女の隣に魔法陣が現れた。そして、一本の鞘に包まれた剣がその場に現れた。
「あげる」
少女が剣を拾い、俺に手渡してくる。
「もらっても良いのか?」
少女はこくこくと頷いている、もう色々と突っ込む気も起こらずに、剣を受け取る、そのまま何にも考えずに鞘から刀身を出してみる。
聖剣だ。
第一印象がそれだった。俺の持っていた、層獣牙グラインズなど軽くかすむほどの名剣、国に収めれば間違いなく宝剣として代々受け継がれるレベルの剣だった。
「虹鱗剣セフィール、言う」
いや、剣の名前なんてこのさいどうでもいいよ、これは貰えない、おそらく少女の家に代々伝わる家宝だろう、そんな物をほいほいと頂く訳にはいかない、渡そうとする方も渡そうとする方だが。
「この剣は、君の家の家宝か何かだろう?、そんな物を軽々しく受け取る訳にはいかないな。」
俺の言葉に彼女は不思議そうにな顔をして答える。
「大丈夫、その剣、最高級武器、だけど、同列、たくさんある。マスター、作る、使わない、だから、溜まる、一つ、なくなる、問題ない。」
つまり、その剣は、確かに最高級の武器だけど、同じような武器ならたくさんあるし、マスターが作っても使わないから、溜まる一方なので、一つぐらいなくなっても問題ない。と?
こんな武器ほいほい作れる奴って、一体どんなんだよ。
「アーシェ、問題ない、言った。」
また、あんたか、アーシェ!!
アーシェってなんか聞いたことのある名前だがどこでだったか思い出せんな。
「そうか、問題ないのなら、ありがたく頂いておこう。」
少女に礼を言いその場を後にする。問題ないって言ったら、問題ないのだろう、その言葉を信じる事にして。
その後、俺は決勝で勝利し、見事に武術大会大会三連覇を成し遂げる。
少女も三位の賞品を貰っていたようだ。
大会後、以前使っていた俺の剣を打った鍛冶屋の所に行き、貰った剣、虹鱗剣セフィールを見せる。どれほどの剣か正確に鑑定してもらうためだ。
剣を見せた瞬間、鍛冶屋のオヤジが、この剣を譲ってくれと懇願してきた。いったい何の素材を使って、どうやって作り上げたのかまるで解らないから、詳しく研究したいので手もとに置いておきたいのだと、熱く語っていた。
剣を譲る気は全く無かったが、すごい性能を持っているって言うのはオヤジの反応からも分かった。
そのついでとばかりに聞いてみる。
「なあ、アーシェって名前のやつ知ってるか?」
俺の問いに、オヤジの顔が興奮した様子から一気に馬鹿にしたようなものになった。
「アイン、お前は馬鹿だ、馬鹿だと思ってたけどここまでだったとはな、アーシェ様って言ったら、この国の人間が誰でも知ってる・・・・・・・・だろうが」
俺は、オヤジの答えに質問したことを激しく後悔するのであった。
◆◆◆◆◆◆
「ねぇねぇ、お姉さん、今日は屋台やらないの?」
今日は久しぶりに体調が良く、せっかくのお祭りなのだからと家から出て、数週間ぶりに王都を散策している時に声をかけられた。
声の方へと振り向くと、青空を写し取ったよな、何処までもつ抜けていきそうな蒼く美しい長い髪と瞳をもった美女が私を見つめていた。
私は、彼女のあまりの美しさに一瞬思考を停止させていたが、直ぐに最初の問を思い出す。
「すみません、実は体調を崩してしまって、もうやってないんですよ。」
私は以前、串焼きの屋台を引いて生活していた。家の近くの一番人通りの多いがメインストリートではないような通りで良く店を出していたのだが、自分で考え研究して作り上げた秘伝のタレが大好評で、そんな所だったというのに連日お客さんが列を程の人気があった。
このままの人気が続けば、あと少しで自分の店が持てそうだと思っていた頃、私を病魔が襲った。
高い高熱とそれに伴うように襲ってくる、猛烈な吐き気と倦怠感、とても屋台が続けられる状況ではなかった。
それが6年前の話だ、それ以来、私はほとんど家で寝て過ごしてる、治療院に行く時以外、本当に体調がいい時に、数時間ほど王都の街を散策することもあったが、最近はその回数も減ってきている。そんな私に会えた彼女は運がとても良かったのだろう。
「そうなの、ちょっと前に来た時、とっても美味しそうな匂いがしていたけど、もの凄い行列ができていて、時間が無くてとても並べそうになかったから、今度来た時に、食べようと楽しみにしてたらしのよ、この子が。」
「残念」
私は、蒼い髪の美女の後ろにいる少女の存在に気がついた。
茶色い髪、光の角度によって金色にも見える不思議な色合いを持った髪と瞳の少女。私は彼女の姿を見てとても困惑した、白のワンピース、ただし丈が合っていない膝上くらいしかなくとても短い、しかも、生地もボロボロだ、汚れていないのがせめてもの救いだろう。
一瞬、彼女の奴隷かと思ったが、二人の間に流れる雰囲気はとてもそう言った間柄では無いように思えた、第一この国では奴隷は禁止されている。
「アーシェ、治療」
少女が片言でアーシェと呼ばれた美女に声をかける。
「無理よ、魔法では、下手をすると悪化する可能性もあるわ。」
彼女は治癒魔法の使い手なのだろう。
治癒魔法は、基本的に対象の生命力を活性化させて、ケガや骨折などを治療する、だが、他人の体に干渉するために制御が非常に難しいのだ、病気の場合、病巣とそうでない所を分けて治療することが難しく、病巣まで活性化させてしまうのだ。その為、病気の治療に魔法が使われることは少ない。
アーシェは少し考えていた後、何かを思い出したように少女に話しかける。
「さっき、話してた武術大会、三位の賞品になってた薬、あれなら効果があるかもしれないわ。」
アイランドタートル、それが10年前に現れた時に作り上げたと言われる巨大な窪地、その跡地に、闘技場が作られ、毎年武術大会が行われるようになったのは5年ほど前のことだろうか。
「武術大会、出る。」
即答する少女。
「そう、それじゃあ、武術大会の受付に行きましょうか、それじゃあお姉さん待っててね、あと、ほいっと、これで数日は体調がいいはずだから。またね」
無茶だ、荒事一つしたことの無い様な少女が武術大会に出るなんて、それに、賞品の薬だって・・・、アーシェと少女は私が止める間もなく人混みに紛れ、私の静止の声は虚しく虚空に響くのだった。
それから数日間、私の体はアーシェの言った通りとても調子がよかった、毎日寝込んでいたのが嘘のようだった。
私は久々の健康な体を楽しんだ、そして、武術大会の終わった翌日、私はあの二人と再開した。
「お久しぶり、体調大丈夫だった?」
蒼い髪の美女が、初めて会った時と同じように唐突に声をかけてきた。
「お久しぶりです、アーシェさん、おかげでここ数日大変体調がいいんですよ。」
アーシェとその隣に茶髪の少女、彼女は何かの瓶を大事そうに両手で持っていた。
その瓶は確かに、武術大会大会の賞品として出ていた薬と同じものだった、どこかで買ってきたのだろう、一瓶でこの国の人間の半年分の給料とほぼ同額とも言われる高価な薬だ、武術大会で勝ち上がり手に入れたなどとは欠片も思わない。
私は、彼女が薬を持っている事を確認した時、とても申し訳ない気持ちに襲われた。
駄目なのだ、病気というものは、薬を毎日、毎日、少しづつ適切な量を飲んで、ゆっくり治してゆく物だ。
その薬は、確かに万能薬とばれ、毒を立ちどころに中和し、軽い不調って程度なら、一気に一飲みするだけで治ってしまうだろう。
だが、私では駄目なのだ、病魔に蝕まれた、私がそれを一気に飲んだとしても、持って一日体調の不調が改善されたとしても、次の日から病状がぶり返すだろう。
小分けにして飲み続けても、持って一ヶ月、完治には程遠い。完治させようと思うのなら、これを最低でも一年は続けなければならないと医者から言われている、とても私には払える金額ではなかった。
少女に対しても同様だ、見ず知らずの相手、それもただ美味しい串焼きを作れるだけの町娘だ、そんな者のために、一本では治らないから、これを毎月買ってきてなんてとても言える訳がない。
少女の努力は無駄だなのだ、数日前のあの時ちゃんと私が止めていれば、こんなことにはならなかったのにと後悔に襲われた。
「飲んで」
少女は私へと薬を差し出す。だが、私はとてもそれを受け取る気にはなれなかった。
「ちょっとまって、そのまま渡しても意味は無いわ、私に貸して頂戴。」
そう言って、アーシェは少女から薬を受け取ると、精神を集中するためた目を閉じた。すると、薬の瓶の周囲に魔法陣が数十個現れた。
驚愕している私をしりめに、魔法陣はそのまま、薬の中へと溶けるように消えていった。
「はい、これで大丈夫、後はこれを一気に飲むだけでいいから。」
薬をただ一度飲むだけで、病気が完治してしまうなんて、伝説の霊薬でもあるまいしありえない。困惑する私に構わずアーシェは飲むように進める。
「大丈夫よ、その薬は液体でしょう、水関係の魔法で私に敵う奴なんてそうそういないのだから」
水、アーシェ、二つの単語が私の心に引っかかる。
「飲んで」
少女が期待を込めた表情で私を覗き込んでいる、私は、意を決して薬を飲み干した。
瞬間、体が熱くなったかと思うと、体のだるさが完全に消え、それどころか、力が溢れてくるような不思議な感覚に襲われた。本当に完治したのだろうか、きっと明日になったら高熱と頭痛が襲って来るような気がする。
「よかったわ、これで串焼きが食べられるわね、お酒にあうかしら?」
彼女は私が完治したと信じて疑っていないようだ。
正直、私は半信半疑だったのだが、彼女たちが信じているのなら私もそう信じた方が良いのだろうと思った。
「でも、直ぐには食べられませんよ、タレを仕込むだけで3日かかりますし、屋台だって引っ張り出してこないといけませんから。」
「それもそうね」
感知したと信じ出したら、一気に心が軽くなった気がする。私はこの間から気になっていた事を聞いてみることにした。
「アーシェさん、彼女はなんでこんな服着ているんですか?」
「彼女の服装何かおかしいの?」
以前、あった時の服から着替えたのかワンピースの色が白から、オレンジに変わってはいたがあいかわらず丈の短い少女の服装について聞いたら、予想外の回答が帰ってきた。
「いえ、彼女みたいな服装はこの辺りでは珍しいので、アーシェさんは普通の格好をしておられますしどうしてかなと、疑問に思いまして。」
少女に失礼にならないように言葉を紡ぐ。
「アーシェ、何時も、服、同じ」
「そうね、ちょっと前に、人前ではこの姿で居るように言われてから一度も変えたことはないわね。」
つまり、ずっと同じ服を着たままってことですか、この人も服のセンスが壊滅的にダメな様だ、オシャレに全く興味がなく、ただ、指示されたからと同じ服を着続けるとか信じられない。
「彼女この格好だとすごく目立つと思いますよ。」
現に、目立ってます、道行く人がものすごい勢いで見てます。
「そうなの?じゃあ、あの子みたいな服装にしましょうか。」
アーシェは少し困ったような顔をみせ、周囲を見回す、少女と同じような背格好の女の子を見つけると、その子を見ながらそう言った。
この時、私は、アーシェがこれから買いに行く服の参考にでもするのかと思ったのだが、その予想はあっさりと裏切られる。
アーシェは少女のワンピースに手のひらを向ける。すると薬の時と同じように魔法陣が現れそのまま吸収されていく、ワンピースが眩い光に包まれ、それが収まると、先ほどアーシェが見ていた服装と全く同じ姿の少女が現れた。
「この格好で問題ないわよね?」
「は、はい。」
私は、あまりの出来事に驚き、半ば無意識で肯定する、一瞬で服を変化させる魔法なんて聞いたことがない、もしかして彼女はとても高位の魔法使いなんじゃないだろうか?、そう思うと、先ほど貰った薬で本当に完治してしまったのかもしれないとぼんやりと考える。
「よかった、これ以上複雑にしないといけなかったらどうしようかと思ったわ、元々、街の外で拾ったボロ布だし、これ以上の加工は私の技術じゃ厳しかったのよね。」
ボロ布を普通の服の上下にまでできるのなら十分な技術です。
ん?、街の外で拾った?、ならそれまでは?
そこまで考えたところで、
カラーン、カラーン、カラーン
魔導師協会の建物の屋上に備え付けられている大鐘が鳴った。
毎日の朝と夕方、そして特別な催しがある時になる大鐘だ。
今の鐘の音はその催し、水霊大祭が始まる合図だ。
水霊大祭とは、年に一回、王城近くに設けられている神殿に水の大精霊様が訪れて、王都の水路に流れている水に、浄化の祝福を下さる行事だ。
今現在、王都は水霊大祭のおかげで人があふれかえっている、先日まで行われた武術大会はその前座にすぎない。
「アーシェ、時間」
「そうね、私達これから用事があるのよ、屋台が出るのも時間がかかるみたいだし、また、ちょっとしてから来るわ。じゃあね。」
アーシェがそう言うと、彼女達の足元に魔方陣が現れて次の瞬間煙のように姿が搔き消えた、転移呪文を使ってどこかへ転移したのだろう。
私はもう、転移呪文ごときでは驚かなかった。
それから、私の体調は一日どころか、何日、何年経っても悪化することはなかった、むしろ病気になる前より体力が付いていた。
彼女達がどこかへ消えて一週間後、私は屋台を再開した。
再開した私の屋台は、以前の常連さん達、その人達からうわさを聞いた人などで、一日目から長蛇の列ができた。営業できなかった6年間を取り戻すように連日沢山のお客さんが訪れた。
しかし、一週間、一ヶ月、一年、経っても連日の賑いの中に、私を救ってくれた二人が現れることは無かった。
順調な経営で、ついに7年目には夢だった自分の店舗を持つことができた。
けれど、私は、せっかく持つ事のできた自分のお店を家族や従業員にまかせて今日も屋台を出す。
屋台は従業員に任せて、店舗の方で仕事をしないかと、周囲からは言われているが、私は頑なに断っている、待っているのだ二人が串焼きを買いに来るのを。二人が串焼きを買いに来た時に、この場所に屋台がなかったら、販売しているのが私ではなかったら、きっと困るだろう。
その事を家族や知り合いに話すと、きっとその二人組みは私の事を忘れているのだと、もうその人達が訪れることは無いと、言ってくる、でも私には必ず来ると確信があった。
それはそう、彼女達と最初に会った時の会話、6年も前に閉めたはず私の屋台を、ちょっと前に来た時、開いていたと言っていたのだ。
きっと彼女達と私たちでは時間の感覚が、流れ自体が違うのだ。
水、アーシェ、水霊大祭、いくつかのヒント、きっと彼女達が私の考えたとおりの存在なのなら6年なんて年月は、本当に、ちょっとの時間なのだろう。
そうやって屋台を出し続けて10年ほど経った頃だろうか。
「串焼き下さいな。」
彼女達は、初めて会った時と同じように私に声をかけてきたのだった。
NG集。
武術大会第三ブロック予選にて。
大型の鐘の低く腹に響くような音が会場に広がる。
同時に俺様達は、女を目ざして動き出す。
そんな俺様達には目もくれず、女は、右足を振り上げた。
俺様は運良く女の正面にいたために、彼女の大事な部分が丸み・・・・・・
っく、前に立っている男の後頭部が邪魔でまったく見えねえ
なんてマンガ的展開!!!
◆◆◆◆◆◆
屋台娘となぞの二人
「そうなの?じゃあ、あの子みたいな服装にしましょうか。」
アーシェは少し困ったような顔をみせ、周囲を見回す、少女と同じような背格好の女の子を見つけると、その子を見ながらそう言った。
この時、私は、アーシェがこれから買いに行く服の参考にでもするのかと思ったのだが、その予想はあっさりと裏切られる。
アーシェは少女のワンピースに手のひらを向ける。すると薬の時と同じように魔法陣が現れそのまま吸収されていく、ワンピースが眩い光に包まれ、それが収まると、先ほどアーシェが見ていた服装と全く同じ姿の少女が現れた。
ただし、全部の布地がシースルーで。スケスケです。大事なところも丸見えです。
「あの布で、参考にしている服を作ろうと思ったら面積が足らなくって、ちょっと全体的に薄くしてみたのよ。」
「だめです、大失敗ですから、即戻して下さい」
私は大慌てで彼女に告げるのだった。