3
どうしたかな、あの手紙?
専門行くのに一人暮らしをするようになって、実家に置いておくのも抵抗があって・・・持って出たような記憶がある。
確か・・・大事な漫画と同じ箱に入れて・・・、日に焼けるのが嫌だから箱のまんまで、その箱はクローゼットで・・・、
記憶を順に辿ってクローゼットからダンボール箱を引っ張り出し、中身を漁った。
同時は人気の、でも今は懐かしいと感じる単行本が、ギッチリと詰まったその端っこに、記憶と違わない封筒を見つけて引っ張り出した。
「これだよな。」
自分以外誰も居ない部屋にいて、そんな必要も無いのに少し嬉しくて呟いた声は、テレビの中の一方的な笑い声に掻き消され・・・
いつの間にニュースが終わったものか、深夜枠のバラエティ番組が始まっていた事に今更気付いた。
一人の部屋に無意味に響く笑い声に、何となく虚しいものを感じてチャンネルを変え、無言で箱を閉じ、元の場所に押し込んだ。
パソコンの前に再び座して封筒を開けた。
別に糊付けされた訳でもない封筒から、中のルーズリーフをあっさりと取り出す。
そうか、ルーズリーフに書いてたのか。
俺は、家にあった便箋を貰って書いた記憶がある。
当時は人の心の中を覗くような気がして、読むのを遠慮していたが、さすがにもう時効だろう。
そう思い、14年間放置されていた辻元の手紙に今初めて目を通した。
辿々しいながらも一生懸命で、そして、比和さんを想う辻元の熱い気持ちが、面白いほど文面から伝わってきた。
完全に俺の負けだな。
清々しい程にそう思えた。
どちらも渡せずじまいの昔の手紙に、勝敗も何もあったものじゃないが・・・俺のリタイヤでいいやって、一人で笑った。
+-----------------------------------------------------------+
差出人:Touya Takamura
宛 先:Masahiro Tujimoto
件 名:ちゃんと届いたぞ。
+-----------------------------------------------------------+
久しぶりだな、元気か?
俺はまぁ、無事生きてる。
お前の手紙見つけた。ちゃんとある。
今まで、何となく遠慮があってそのままだったんだが、
さすがに時効だろうと思って、今日初めて読ませてもらったよ。
今更だが、あの手紙は俺の負けだな。
今度どっかで会わないか?
もう一度、手紙の交換をして、ちゃんとした持ち主の元に返そう。
俺が持ってるのは荷が重い(笑)
+-----------------------------------------------------------+
そう打ち込んで、送信ボタンを押した。
あれから何度かメールのやり取りをして、携帯の番号も交換した。
実は、お互いそう遠くない場所に居る事が分かり、じゃぁどうせならと、金曜の仕事終わりに飲む事になった。