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void  作者: 薄桜
3/5

どうしたかな、あの手紙?

専門行くのに一人暮らしをするようになって、実家に置いておくのも抵抗があって・・・持って出たような記憶がある。

確か・・・大事な漫画と同じ箱に入れて・・・、日に焼けるのが嫌だから箱のまんまで、その箱はクローゼットで・・・、

記憶を順に辿ってクローゼットからダンボール箱を引っ張り出し、中身を漁った。

同時は人気の、でも今は懐かしいと感じる単行本が、ギッチリと詰まったその端っこに、記憶と(たが)わない封筒を見つけて引っ張り出した。

「これだよな。」

自分以外誰も居ない部屋にいて、そんな必要も無いのに少し嬉しくて呟いた声は、テレビの中の一方的な笑い声に掻き消され・・・

いつの間にニュースが終わったものか、深夜枠のバラエティ番組が始まっていた事に今更気付いた。

一人の部屋に無意味に響く笑い声に、何となく虚しいものを感じてチャンネルを変え、無言で箱を閉じ、元の場所に押し込んだ。


パソコンの前に再び座して封筒を開けた。

別に糊付けされた訳でもない封筒から、中のルーズリーフをあっさりと取り出す。

そうか、ルーズリーフに書いてたのか。

俺は、家にあった便箋を貰って書いた記憶がある。

当時は人の心の中を覗くような気がして、読むのを遠慮していたが、さすがにもう時効だろう。

そう思い、14年間放置されていた辻元の手紙に今初めて目を通した。


辿々しいながらも一生懸命で、そして、比和さんを想う辻元の熱い気持ちが、面白いほど文面から伝わってきた。

完全に俺の負けだな。

清々しい程にそう思えた。

どちらも渡せずじまいの昔の手紙に、勝敗も何もあったものじゃないが・・・俺のリタイヤでいいやって、一人で笑った。


+-----------------------------------------------------------+

 差出人:Touya Takamura

 宛 先:Masahiro Tujimoto

 件 名:ちゃんと届いたぞ。

+-----------------------------------------------------------+

 久しぶりだな、元気か?

 俺はまぁ、無事生きてる。


 お前の手紙見つけた。ちゃんとある。

 今まで、何となく遠慮があってそのままだったんだが、

 さすがに時効だろうと思って、今日初めて読ませてもらったよ。


 今更だが、あの手紙は俺の負けだな。


 今度どっかで会わないか?

 もう一度、手紙の交換をして、ちゃんとした持ち主の元に返そう。

 俺が持ってるのは荷が重い(笑)

+-----------------------------------------------------------+


そう打ち込んで、送信ボタンを押した。


あれから何度かメールのやり取りをして、携帯の番号も交換した。

実は、お互いそう遠くない場所に居る事が分かり、じゃぁどうせならと、金曜の仕事終わりに飲む事になった。

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