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誰もいない真っ暗な部屋の扉を開け、壁のスイッチを押した。
まぁ、独り暮らしの俺の部屋に誰か居たり、電気が点きっぱなしってのは、相当に問題があるんだが・・・。
台所と兼用の通路を進み、壁に立てかけるようにカバンを置き、テレビの前のテーブルにコンビニの袋を置く。
テレビとパソコンのスイッチを押して、丁度やっていたニュースに耳を傾けながら、スーツを脱ぎ、出来るだけ皺にならないようにハンガーに吊して壁のフックに掛けた。
そして、The俺の場所的な座椅子の前に陣取り、袋の中から弁当を取り出し広げる。
しかし、空腹感はあれど食指は今ひとつの状態で、買った事を少し後悔するが、とりあえず食わないと身が保たない。そう自分に言い聞かせてかき込んだ。
食後は向きを変えて、横のテーブルに据えたパソコンに向かう。
とりあえずメールを受信しながら発砲酒とサラミの袋を開けた。
まぁどうせDMばっかで、読めるものより削除するものの方が多い。
今日も大方はそんなもので・・・でも一件だけ差出人欄に並ぶローマ字が、懐かしい名前を表すように並んでいるものを見つけた。
「マサヒロ ツジモト・・・辻元昌祐・・・辻元がどしたんだ?」
長年使ってきたフリーメール宛てに届いたメールに驚き、かなり心が弾んだ。
高校卒業してからは、成人式に一度会って、確かその時アドレスを渡したんだっけ?
それも既に9年も前の話だ。
向こうもそう考えたらしく、
『このアドレスまだ有効か?』ってタイトルで、思わず笑った。
実はまったくの別人で、開いていきなりウイルスが展開・・・とか、そんな事も一瞬考えたが、添付ファイルも無く、ちゃんと懐かしい友人からの文章が画面に表示された。
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差出人:Touya Takamura
件 名:このアドレスまだ有効か?
宛 先:高村 透哉
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高村元気か?
成人式以来になるかな?
久しぶりに連絡を取ろうと思ったのは、
懐かしい物が出てきたからなんだが・・・
覚えてるか?
交換した比和さん宛ての出せなかったラブレター。
それが、つい最近片付けてて出てきてさ、
何か懐かしくてな。
お前のアドレス探して(悪いが相当探した)
こうして連絡してみたんだ。
もし、このメールが届いてたら、速攻連絡よこせよ。
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そういえばそんな事をした。
中学の時、お互いに同じ人が好きで、同時に手紙を書いてみたものの、どちらも渡せず仕舞いで・・・
とうとう卒業間際になって、自分で持っとくのも恥ずかしく、捨ててしまう決心もつかなくて・・・お互いに交換しよう、これも青春のメモリーだ!って、恥ずかしい事を言い出したのはあいつだ。