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void  作者: 薄桜
1/5

何となく「void」ってタイトルで書いてみたかったんです。

タイトル先行型です。


俺の人生はこんなものなんじゃないかと思う。


void Touya(){


    int i, j;


    j = 0;


    for (i = 0; i < 10 ; i++ ){

        j++;

    }

}


引き渡す変数も無く、戻り値も無い。

関数の中でもたいした事はしてなくて、何のためにあるのかよく分からない。

プログラム言語の基礎にあるような、説明のためだけの意味の無い関数。


『void』

無。中身が無い。空っぽ。

プログラムの中で関数を宣言する際に、戻す値が無い事を意味する。


俺も、きっとそんなものだ。


日々同じ様な事を繰り返して、そこに意味があるのか、いまいち分からない。

9年目になる仕事は、仕様書通りのプログラムを組む側から、設計する側になったが、営業が良い顔した尻拭いを・・・クライアントの無茶な要望と実現可能な技術との間に挟まれ、頭を抱えるようになった。


ただ生きて行くために働き、その対価を得る。

それにも違和感と、疑問を感じる。

専門卒の俺の方が、大卒の役に立たないヤツらより、よっぽどマシだという自負はあるものの・・・それでも、初任給の時の差はどうにも埋まりはしない。

今のご時世、定期昇給は瓦解して、結局残業代で嵩ましという事になる。

上の取り決めた期限のおかげで、毎度仕事量はハンパない。残業代が基本給を抜く事はざらで、見事な嵩ましが出来ているが・・・その分心身共にボロボロだ。


最近、主任という肩書きを頂戴し、多少給料に色が付いたものの、責任という重しの方が遥かに増えた。

ただでさえ忙しいのに、そこに加えて、後任の育成だ?

ふざけんな、はっきり言って容量オーバーだ。

この忙しいのに、優しく後ろを見守ってやる余裕なんかあるわけ無いだろ? 自分でやった方が遥かに早いっての。

・・・そう思う気持ちを、抑えるのがかなりのストレスだ。


今はさすがに居場所くらいはあると思いたいが、もし嫌気の差した俺が居なくなった所で、いずれ替わりは補充されるだろう。そう思うと、自分の存在は何なのだろうと時々考えてしまう。

いずれにせよ、放り出して辞めてしまえば、生活に破綻をきたすのは目に見えている。

転職といった所で、俺に出来るのはシステム屋くらいのもので、どうせどこに行っても境遇に大差はない。

下手をすれば悪くなるだけだ。

・・・俺にそんな博打は打てない。


だから今日も鬱々とした気持ちを抱えたまま、深夜のコンビニに立ち寄り、食べ飽きた弁当の中から、それでもましな物を選ぶ。

酒代は痛いが、飲まないとやってられない日だってある。

発泡酒と、あてのサラミを弁当の上に乗せ、レジに控えたバイトの若造に委ねる。

ピアスに長髪のその彼は、相当にデカイ夢をその胸に抱えているんだろう。夢も希望もどこかでこぼれ落ちてしまっている自分には、とても遠い・・・別の世界の生き物に見える。

その彼に金を払い、釣りと商品を受け取る時には、心のどこかがチクリとして、とても苦々しい思いがした。


最初のプログラムは、C言語で書いた、ただのループ文です。

ただ10カウントしてるだけの、本当に意味の無いプログラムです(^^;

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