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第129話 新しい住処 ― 守られる絆

満開からちょうど一週間後。白百合家の広大な敷地の一角に、特別に用意された離れが完成していた。

白を基調とした落ち着いた佇まいの家は、桜良と紡のためだけに作られた新しい住処だった。

朝の陽光が木漏れ日となって庭に降り注ぐ中、紡は小さな荷物を抱えて立っていた。

「桜良さん……本当に、ここに移り住んでいいんですか?」

桜良は紡の隣に立ち、長い黒髪を風に揺らしながら静かに答えた。

「ええ。これは慣例であり、決まり事よ。

大守り人候補となった私たちは、一般社会から隔離され、セキュリティーを大幅に強化することになっているの。

……二人に何かあった場合、レイライン全体に大きな影響を与えてしまうから」

紡は小さく頷いた。

琥珀色の瞳に、わずかな緊張と、それでも前向きな光が浮かんでいる。

「わかりました……

桜良さんの傍にいられるなら、私はどこでもいいです」

二人が離れの中に入ると、広々としたリビング、明るいベッドルーム、勉強スペース、そして温室に繋がるテラスが迎えてくれた。

窓には特殊な防護ガラスがはめられ、敷地全体に厳重な警備システムが張り巡らされているのが感じられた。

紡はベッドにそっと腰を下ろし、シーツの感触を確かめながら微笑んだ。

「ふわふわ……桜良さんと一緒に暮らせるなんて……夢みたいです」

桜良は紡の後ろから優しく抱きつき、耳元で囁いた。

「これからは毎日、あなたの顔が最初に見られるのね……

少し、楽しみだわ」

紡はくすぐったそうに体をよじりながら、桜良の腕の中で甘えた。

「私も……桜良さんの寝顔を、毎朝見られるんですよね……

嬉しい……」

二人は自然とベッドに倒れ込み、軽くイチャイチャし始めた。

桜良が紡の頰にキスを落とし、紡が桜良の胸に顔を埋めて甘える。

指と指が絡み合い、笑い声が部屋に響く。

「桜良さん……くすぐったい……あはっ」

「ふふ……紡ったら、こんなに敏感?

もっと触れていたいのに……」

その時、ドアがノックされ、カンナが入ってきた。

銀髪を綺麗にまとめ、教師らしい落ち着いた表情で二人を見下ろす。

「……おやおや。

新生活初日から、ずいぶんと楽しそうね」

桜良と紡は慌てて体を離し、ぴょんと起き上がった。紡が真っ赤な顔で敬語を崩さずに言った。

「カ、カンナ先生……! 

あの、これは……その……」

カンナは腕を組み、ため息をつきながらも、口元に笑みを浮かべた。

「一応、あなたたちはまだ高校生ですから。

忙しくなることを覚悟しておくように」

彼女は指を一本立てて、コミカルに釘を刺した。

「大守り人の訓練は朝六時から始まります。

夜は十時まで勉強と実技。

休日は……まあ、月一回くらいは許してあげましょうか。

でも、イチャイチャしすぎて訓練に遅れるようなことがあったら……

私が直接、指導してあげますよ?」

桜良は少し頰を赤らめながらも、気高く微笑んだ。

「了解しました、カンナ先生。

……少しだけ、甘えさせていただければ幸いです」

紡も小さく頭を下げ、恥ずかしそうに付け加えた。

「私も……がんばります。

桜良さんと一緒に……ちゃんと訓練を受けますから……」

カンナは二人の様子を見て、くすっと笑った。

「まあ、いいでしょう。

ただ、セキュリティーの強化は本気で考えておいて。

あなたたち二人がここにいる限り、外部からの接触は厳しく制限されるわ。

……ただし、紡のお母様・遥さんに関しては特例よ。

完全なセキュリティーの下、病院で自由に面会できるように手配してあるから」

紡の顔がぱっと明るくなった。

「本当ですか……?

お母さんに会えるんですね……」

カンナは優しく頷いた。

「ええ。遥様は今も治療を受けているけれど、娘の幸せを一番に願っているわ。

ちゃんと会いに行って、報告してあげなさい」

カンナが出ていくと、紡はほっと息を吐き、桜良に寄りかかった。

「カンナ先生……少し怖かったけど、優しかったですね……

お母さんに会えるのも嬉しい……」

桜良は紡の頭を優しく撫で、穏やかに言った。

「これからは忙しくなるけど……あなたと一緒なら、きっと大丈夫。

新しい生活……楽しみましょう」

二人は再び軽く抱き合い、額を寄せ合った。

セキュリティーで守られた離れの中で、

二人の希望に満ちた新しい生活が、静かに始まろうとしていた。


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