私の心に残った一言① 「トシじゃないのに…」
※【魔法の天使クリィミーマミ】・・・1980年代の少女向け人気アニメ。主人公の優(=マミ)は俊夫(トシ)が好き
二十年ほど前の出来事。
私が勤めていた店の有線放送で魔法の天使クリィミーマミの主題歌「デリケートに好きして」が流れてきた。
商品の陳列をしている私の背後に、二人の女性客がいた。
背中越しに聞こえてくるフランクな話し方からすると、二人は仲の良い友達のようだった。
一人が曲に気付き、鼻歌まじりに友人に話しかける。
「懐かしー。ほら、クリィーミーマミの曲だよ。わたし好きだったな」
「あー、あったね。どんなだったかあんまり憶えてないけど」
友人にはあまり思い入れがないようだ。
「クリーミィーマミすごいよく観てたなぁ…。俊夫がかっこよくて。俊夫がわたしの初恋かも」
それは本当にただの友人同士の何気ない会話だった。そんな会話をしたことすら翌日には忘れてしまうくらいの。
しかしクリィミーマミ好きの女性の発した一言は、私の心に今も残っている。
トシが好きだったからさぁ、わざとたまに旦那に甘えた声で『トシ~』とか言っちゃうの。
トシじゃないのに…。
その諦めたような言い方が妙に面白かった。
しかし、もしかしたらこれは深い一言なのかもしれない。
彼女は今でも旦那さんを「トシ~」と呼んでいるのだろうか。
私は顔も名も知らぬ女性をときどき思い出し想像してしまう。




