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51.ドイツの誤算

1942年12月5日 ドイツ第三帝国 ヴォルフスシャンツェ 


西側連合軍によってパリ周辺を除くフランスのほぼ全土がナチスから解放されて、西側連合軍はとうとう国境を越えてドイツへと進軍を開始した。ドイツ軍のこれまでの損耗率約10%に対して、連合軍の損耗率は30%を超え、古参兵だけでは前線が戦線を維持できなくなり、本国から新兵が追加投入され続けている状況になっている。

東部方面はポーランド国内で小規模な戦闘が繰り返されているものの、ドイツ軍、日中ソ連合軍の両軍ともほぼ大きな動きはなく、日中ソ連合に至ってはポーランド侵攻開始からの損耗率は1%未満である。


ヴォルフスシャンツェの総統大本営では、アイザックが常に入ってくる各方面軍からの報告を参謀本部の幹部達と精査し、全軍の位置を把握しながら細かく指示を出していた。


「総統、ロンメル元帥よりフランス国境の防衛線からの後退承認要請がきております」


「ロンメル元帥に繋いで」


通信士がロンメル元帥との電話を司令室に回した。


『Xラインまで到達されたの?』


『はい。予定より3週間ほど引き伸ばしましたが、Xラインまで到達されました』

    

『じゃあ、後退していいよ。空軍に後退の支援に向かわせるから時間を教えて』


『はい。では、4時間後に全軍後退を開始します』


『うん、よろしく』


ロンメル元帥との通信を切ると、アイザックは大テーブルに広げられた地図に置いてある駒を後退予定ラインまで下げた。各方面軍に対して、どこまで突破されたらどこまで後退するかを細く設定しており、現在のところ西部方面は概ね想定通り動いていたが、東部方面は完全に当初の想定とは違った展開になっていた。


「日中ソ連合はまだ動きませんね」


参謀の一人がアイザックに話しかけた。


「うん。完全にこちらの動きが読まれてるようだね」


「三カ国連合軍の司令部に潜入していたSDからの最後の報告では、元副総統が園田の参謀として付いているのを確認したとのことなので、脱走したイリーネ・ゲッペルス元副総統の助言かと思われます」


「だろうね。でも困ったな~。だってさ~、相手が動かないからって東部方面軍を西部に回すわけにもいかないもんね。ワルシャワにレッシェンを落とすのが1番早いんだけど、製造の状況は?」


「日本海軍による海上封鎖で材料のウランの調達が困難になっており、製造ができておりません。現在残っているのはパリの2発とベルリンの1発だけですが、パリは連合軍に包囲されているため回収は困難です。あとは予備の1発がありますが、これをワルシャワに使用しますか?」


「う~ん。予備の1発は最後の切札だから流石に使えないか・・・。V3ロケットでのワルシャワへの空爆は?」


「V3ロケットは殆ど大日本帝国海軍に対して使用して、都市を攻撃できるほどの残弾がありません。また、V3ロケットについてもレッシェンと同様に物資が足りず、追加生産の見込みも立っておりません」


「はぁ~、日本海軍は本当に厄介だね、切札のV3ロケットも殆ど落とされてるし、航空機の性能はドイツより下なのに、練度が異常に高過ぎなんだよ!」


「えぇ、空軍を全力投入すれば互角以上には戦えると思いますが、本国の制空権を失うことになるので、不本意ではありますが、現状では日本海軍は放置するしかないと思います。彼らは陸への攻撃は一切してこないので、こちらから仕掛けなければ脅威ではありません」


「まぁ、贅沢言える状況じゃないし、仕方ないか。ベルリンのレッシェンについては三カ国連合を誘い込むのは諦めて、西側連合軍に使おうか。彼らもロンドンで懲りているだろうから、今回はベルリンで徹底抗戦する姿勢を見せないとね。フランスからの徴兵部隊をベルリン守備隊にしようか」


「どうせ士気も低く壁にしか使えない部隊ですから、最適な活用方法だと思います」


「よし、じゃあ、その方向で新しいプラン作ってくれない?」


「承知しました」


西側連合軍がドイツの国境を越えてからは、ドイツ軍は後退することなく、防衛ラインを死守するようになった。

ここまでは犠牲を出しながらも順調に進軍を続けてきた西側連合軍だったが、ドイツ軍の激しい抵抗を受け、進軍が止まり膠着状態が続いた。

ドイツ軍は国土防衛のために温存していた空軍も惜しみなく投入されると、西側連合軍はさらなる犠牲を強いられることになった。

この膠着状態を打破するために、アメリカは日中ソ連合に対して、東側からドイツへの圧力を強めるよう要請してきたので、誠司は要請に対して快諾をしたが、最前線を押し上げることはしなかった。アイザックが描く今後の展開としては、可能な限り国境付近で連合軍を足止めして、連合軍がやっとベルリンを占領したところで、ベルリンでレッシェンを使用して、連合軍の心が折れたところで講和に持ち込むのが唯一ドイツが生き残れる方法だと考えている。


アイザックは私室に戻るとベッドの上に倒れこみ、いつもの日課である優香とのボイスチャットを繋いだ。


『アイザック、そっちはどう?』


『ずっと優香の声が聞きたいと思ってたよ』


『なにかあったの?』


『だいたい予定通り進んでるよ。でも、少し疲れたから一日だけそっちに帰ろうかな。優香に会いたい』


『え?ほんと!?いつ帰れる!?』


『明日の夕方には着くように帰るよ』


『それじゃあ、明日はたくさんアイザックが好きなものを用意して待ってるわ!』

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