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05.ボイスチャット

イヤホンから聞こえてくるように、女性の声でボイスチャットの音声が聞こえてきた。もちろんイヤホンなどしていない。

それにしても、今の「ピコーン」っていうの口で言わなかったか?サーバ管理者がシステムからアナウンスがあると言ってたから、恐らくこれがシステムからのアナウンスだろうと思う。しかし、想像していた無機質な人工音声とは違い、若い女の子が友達と話をするような声のトーンでアナウンスされたため、ちょっと拍子抜けしてしまった。こちらから話しかけたら応えてくれそうな気がしたので、システムに話しかけてみる。


「あの、システムさん。質問しても良いですか?」

『えっ!?』


えっ!?って、大丈夫かこのシステム。これシステムというより普通に人間っぽい気がするんだが・・・。


「あ、すみません。ボイスチャットの使い方を教えてもらえないでしょうか」


『あっ、はい。脳内で、全体チャットと念じてから話始めると全体、えっと、この世界に一緒に来た全員と会話することができます。グループチャットと念じた場合は自分の所属する国のメンバーと会話ができます。フレンドチャットの次に名前を念じてから話し始めると特定の方とだけ話せますよ。ボイスチャットを終わるときは通話オフと念じれば、終了できます。あとは、個人の名前のあとにユーザーブロックと念じると、その方からのボイスチャットをブロックできます。』


「ご丁寧にありがとうございます。他にも質問しても良いですか?」


『はい。どんな質問ですか?「ちょっと、話し過ぎ!音声切って!」あっ、ごめんなさい!』


なんかあっち側の会話みたいのが聞こえるんたんだけど、なにこれ?コールセンター?


『えっと、誠司さん。これ以上のはダメです。』


「あっ、わかりました。なんかすみません。上司の方に怒られちゃったみたいですけど、大丈夫そうですか。」


『大丈夫です!お気遣いありがとうございま「切って!」すみません!切ります!頑張ってください!』


新人さんなのかな?通話が切れたみたいだからこれ以上は話かけても無駄だろう。

悠斗にも聞こえてたのかな?一応聞いてみよう。


「今の聞こえてた?」


「あぁ、ボイスチャットが開放されたってアナウンスでしょ?」


「うん、そのあとの俺とシステムとの会話も聞いた?」


「ん?システムと話せるの?もしかしたら個別にアナウンスしているのかもしれないな。僕の方は一方的に使い方を説明して切れたけど。もし次アナウンスがあったら話しかけてみようかな。ちなみにどんな会話だったの?」


「ボイスチャットが開放されましたって言って終わったから、使い方を聞いてみた。」


「あ、そうなんだ。こっちは聞かなくても続けて説明してたよ」


「きっとそっちが正解なんだと思う。なんか俺のシステムやけに人間くさいし、ポンコツっぽかったから」


『全体チャットが繋がりました』


今度は無機質な女性の人工音声が聞こえた。恐らくこっちが本来のシステムな気がする。


『えーっと、藤井だけど、みんな聞こえてる?』


聞き慣れた藤井先輩の声が聞こえる。昨日も話したばかりと言われるかもしれないが、どこか懐かしく感じてしまう。


「おお!藤井先輩お疲れ様です!聞こえてますよ!元気そうで良かっです!」


『おっ、その声は誠司だな。じゃあ、聞こえてるみたいだから、とりあえず点呼取るわ。誰が話してるか分かるように話し始める前に念のため自分の名前言ってくれ』


画面がなく音声だけなので誰とボイスチャットで繋がっているか、声を聞いて確認するしかなさそうだ。

藤井先輩が全員の名前を一人ずつ呼んで、それに全員が短く応えた。


『名前呼ばれてないやついないか?とりあえずこんな状況だけどみんな無事で良かったわ。次は、みんな自分がどこにいてどういう立場なのか報告しよう。まず俺からな。俺は今ドイツにいて、どうやら空軍総司令官、元の世界のゲーリングのポジションみたいだわ。アイザックも一緒にいるから次アイザックね』


藤井先輩はゲーリングか・・・、ということはポーランド侵攻作戦中かな?


『アイザックだよ。僕は藤井先輩と一緒にドイツにいるよ~。そして、なんと僕がナチスの総統!ヒトラーのポジションみたい!昨日から僕と会う人が全員、立ち止まってナチス式敬礼しながらマインヒューラー!って言ってくるから、テンション爆上がりしちゃったよ。』


ドイツ人と日本人を親に持つハーフのアイザックがヒトラーって、なんか安易な気がするな・・・。


『ええっ!おまえら二人なの?いいな!あっ、小川だけど、俺はソ連で共産党の書記長で元の世界だとスターリンだわ・・・。史実どおり大粛清の真っ最中でみんな俺見て震え上がってるんだけど、どうすればいいのよこれ・・・。あっ、小川ね。』


わぁ・・・。小川先輩めっちゃ外れでしょ、一人で大粛清中のソ連とかハード過ぎる。でも、この中だと唯一の戦勝国だから一概に外れとも言えないか。


『桐谷(悠斗)です。僕は誠司と一緒に今日本にいます。ちょっと言い難いんですけど、僕は天皇です・・・。じゃあ、誠司次たのむわ。』


こいつ天皇って肩書にめちゃくちゃ恐縮していてるな・・・。わかるけど・・・。


「園田(誠司)です。俺は陸軍次官で、元の世界だと恐らく東條英樹ですね。最後は翔か?」


『大槻(翔)です。お疲れ様です。俺も日本におって、役職は海軍次官です。たぶん山本五十六や思う。ブーゲンビルで戦死する気はおまへん。てか、悠斗と誠司も日本におったのかいな!なんで俺だけ一人なんや!』


翔もこっちだったのか、3人いると思ったらなんか少し心強くなったな。


『藤井です。はい、みんなお疲れ。じゃあ、このままみんな好き放題話したら全然話進まなくなるから、このまま俺が仕切るね。まぁ、みんなの居場所聞いて気付いたんだけどさ、これあれだな、こっち来る前にやってたマッチの勢力にそのまま組み込まれてるな。小川は何でソ連選んじゃったかね。』


なるほど、あのゲームで所属してた国に、こっちの世界ではそのまま所属している訳か。うわ~、そらならアメリカ選んでおけば良かったな。


『仕方ないだろ、適当にセッションの途中から入ったら自動的にソ連に振り分けられたんだから!くっそ!せめてアメリカだったら良かったのに!』


そうだよな、アメリカだと自分から参戦しなければ、そもそも第二次世界大戦に関わらないという選択肢もあるからな。


『藤井です。まぁ、選択した勢力のことは今更言っても仕方ないな。とりあえず、今後のことについて話し合おうぜ。ドイツとソ連と日本にそれぞれ分かれてるから逆にみんなで同じ勢力より協力体制が作れるってことは良かったと思う。特にソ連がいるのは大きいな。せだかくだから、日独伊ソの四国同盟でもやるか?』


確かにソ連が枢軸国側に加われば連合国とも対等以上に戦えるのは間違いなさそうだな。けど、アメリカとの対立は避けられなくなる。悠斗と翔の意見も聞きたいなと、思ったところで悠斗が話始めた。


『すみません。昨日誠司とは話してたんですけど、僕らはアメリカ開戦のきっかけになるのでドイツとは同盟結ばないことにしました。翔はいなかったからまだ確認してないんですけど。』


『あぁ、俺は悠斗と誠司が決めたならそれでええで。考えるのはこれからも二人に任せるわ。』


翔ならそういうと思って悠斗も翔に確認する前に断ったのだろう。


『ええええええっ!そしたら僕と藤井先輩孤立しちゃうよ!そして、僕ヒトラーだから5年後にはベルリンの地下司令部で自殺コースじゃん!勘弁してよおおおおおおおお!』


アイザックが叫んでいるが、マイクがあるわけじゃないから流石に音割れしないな。しかし、アイザックが叫ぶ気持ちも分かるな。確かにドイツはもうポーランド侵攻始めちゃってるから引くに引けない状況だよな。


『藤井です。まぁ、アイザックは一回落ち着けよ。日本がアメリカに攻撃しなければ、アメリカがヨーローッパ戦線に参戦する理由が一つ減るし、ナチス・ドイツ最大の敗因のイギリスとソ連の二方面作戦をやらなきゃ史実とは全く違う展開になると思うぞ。』


藤井先輩は冷静だ。これアイザック一人だったらヤバかったな、藤井先輩がいて良かったなアイザック。


『小川です。みんなも聞いてると思うんだけど、俺達ってもう元の世界には帰れないんだよな?ってことはさ、俺はもう日本人には戻れなくて死ぬまでロシア人な訳だよな。藤井とアイザックも一生ドイツ人ってことだ。そして、俺達の今の立場ってそれぞれの国のトップってことだからさ、何千万、何億人って国民のために嫌でも動かなきゃいけない責任があると思うんだ。だから、確かに俺らは仲間だし、今後も協力していくことは変わらないけど、みんな自分の国の利益を最優先に行動を決めていかないか?俺なんかさ、今こうして日本語を話してるけど、鏡で自分の姿見たら歳は日本にいた頃と同じ20歳くらいなんだけど、あきらかに白人になってて、自然にロシア語で話してるし、なんかもう意味わからないかもしれんけどロシア人なんだわ。だから、最低限俺らの間では戦争しない、足の引っ張り合いはしないってことだけ決めて、あとはガチな外交交渉ということにしたいけど、どうだろ?』


小川先輩の言うことは確かに正論で同意できるのだけど、なんだろう若干考え方とか雰囲気が元の世界にいた頃と変わっている気がする。見た目がロシア人になったというのが性格にも影響を与えているのだろうか。


『藤井です。そうだな、確かに小川の言うとおりだな、俺も鏡見たら白人になってるし、自然とドイツ語で話してたわ。俺は小川の意見に賛成だけど、総統もそれでいい?』


『あっ、総統って僕?僕は死ななきゃOKだからそういうのは藤井先輩に任せるよ。マインヒューラーっていうのはカッコイイから続けてね』


ずいぶん軽いヒトラーだなおい。


『桐谷(悠斗)です。わかりました。誠司と翔もそれでいい?』


『大槻(翔)です。二人に任せるわ』


『園田(誠司)です。うん、俺も大丈夫』


俺と翔はノータイムで殆ど同時に承諾した。このメンバーの中でも俺達3人は特に気が合って、3人だけで遊ぶことも多かったし、もちろん信頼関係はまったく問題ない。


『桐谷です。それじゃあ、小川先輩、後ほど日本とソ連で直接交渉したいことがあるので、よろしくお願いします。』


『了解』


『藤井です。じゃあ、ドイツと日本は直接的な同盟とかのやりとりはなさそうだけど、友好国ってことでこれからよろしく。俺はとりあえず、うちのヒトラー君が死なないように頑張るわ。ということで、みんなこれからめちゃくちゃ忙しいと思うから、ボイスチャットは月1回情報共有の場を設けるということで、次回から毎月1日のグリニッジ標準時で午前0時でいいか?』


 全員が藤井先輩の提案に同意して、第一回目の月例ミーティングは解散となった。

 確かに海外組はこれから一生そこの国で生きていかなきゃいけない訳だから、俺ら日本組よりも精神的に厳しい状況にあるのは間違いないだろう。日本組は子供の頃から日本の歴史に常に触れ続けてきていて、祖父母の話なんかも聞いているから昔の日本に対してある程度予備知識があるが、海外組はよっぽど興味があって調べる以外はその国の歴史も文化も世界史の授業やテレビ番組等で見たことがある程度だろう。ましてや文化や歴史が違うだけではなく時代が違うとなれば慣れるのにかなり苦労するだろうな。

 ソ連はいくら戦勝国とは言っても、今は大粛清の時期で誰が敵か味方かも分からず、現時点では国内に信頼できる仲間もいない小川先輩もゲームの難易度で言えばハードモードだと思う。だが、既にポーランドに侵攻した状態からスタートして、このまま行けば間違いなく敗戦国となるドイツはベリーハードというところだろうか。そう考えたらこのまま歴史のとおりに歴史が進めば敗戦国になるとはいえ、俺達日本組は移動してきた仲間が3人いて、慣れ親しんだ日本で元々の姿のまま生きていけるのはノーマルモードくらいなのかもしれない。とはいえ、我々も中国との戦争真っ最中で、経済的にも逼迫した現状は可及的速やかになんとかしないといけない。ひとまず翔と合流して3人で話をする必要がありそうだ。

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